6月18日、Midjourneyが「A New Era of Midjourney」と題した記事を公開した。
画像生成AIで急成長を遂げたMidjourneyが次に挑むのは、人間の体内を丸ごとスキャンするハードウェアだ。開発中の「Midjourneyスキャナー」は水中で超音波を使って全身を60秒以内にスキャンし、ミリメートル以下の解像度で3次元マップを生成するという。外部投資家を持たず、画像生成サービスの収益だけで黒字化を実現してきた同社が、医療ハードウェアという全く異なる領域に自己資金で踏み込む点は異例だ。
「60秒で全身スキャン」の仕組み
発表の核心にあるのは「Midjourneyスキャナー」と呼ぶ装置だ。ユーザーは浅いプールに入り、プラットフォームに乗って水中へ約5cm/秒のペースでゆっくりと降下する。水中に設置されたリング状のセンサーを通過する際に、全身へ超音波を照射して内部構造を3次元マップとして再構成する仕組みで、スキャン時間は60秒以内を目標としている。
リングには50万個の微細な素子が並ぶ。1辺が砂粒程度のサイズで、それぞれが超音波の送受信機として機能する。超音波が水・皮膚・脂肪・筋肉・骨といった密度の異なる組織を通過するたびに波形が変化し、その変化を逆算することで立体像を得る——仕組みとしてはイルカのエコーロケーションに近い。病院で使われる一般的な超音波エコーが探触子を手で当てて局所を確認するのに対し、このスキャナーは全身をリング状センサーで一気に走査する点が根本的に異なる。
生成されるデータ量は毎秒テラバイト級で、スキャン1秒分の処理にHD動画500時間分に相当する計算資源が必要だという。解像度はミリメートル以下を実現するとしており、通常30〜60分かかるMRI全身スキャンと近い画質を、60秒以内で提供することを目指している。
超音波を使った全身スキャナーがこれまで実用化されなかった理由として、記事では素子数の多さ・膨大なデータ量・それを処理する計算能力の三つが長年の障壁だったと説明している。Midjourneyは画像生成AIの開発を通じて大規模データ処理と計算基盤の知見を積んでおり、それがこの分野への参入を可能にした背景の一つだとしている。
病院ではなく「ウェルネス施設」に置く理由
このスキャナーを診療所や病院ではなくスパ的なウェルネス施設に組み込むという発想が、今回の発表でもう一つの軸をなす。
「Midjourneyスパ」の第1号店は2027年にサンフランシスコでのオープンを予定。ホットタブ、サウナ、コールドプランジ(冷水浴)を備え、24時間営業を想定している。スキャンはスパ体験の「副産物」として位置付けており、ユーザーが健康診断のためではなく純粋にリラックスしに来る場所にしたいという考えだ。医療機関へのアクセスに心理的ハードルを感じる層にも日常的な健康モニタリングを届ける狙いがある。
ただし、FDA(米食品医薬品局)の診断医療機器承認は取得に時間と費用がかかる。当初は「詳細な体組成マップ」の提供にとどめ、診断能力を拡張するたびに定期的な審査結果を提出する段階的な方針を取るとしている。FDA未承認の段階でスキャン結果をどこまで健康上の判断に使えるかは現時点では不明であり、規制面での不確実性は残る。
ロードマップ
発表に示されたロードマップは以下の通りだ。
| 時期 | マイルストーン |
|---|---|
| 今後12ヶ月 | アルゴリズム・ハードウェアの日次改善、研究トライアル、第2世代設計へ移行 |
| 2027年末 | 第1号スパのオープン、FDA申請の継続 |
| 2028年〜 | 複数都市への展開、第3世代スキャナー投入(カスタムシリコン採用) |
| 2031年 | 世界5万台以上の展開、月10億スキャンの処理能力 |
2031年に掲げる「月10億スキャン」という目標は、現在世界で行われているMRI検査が年間約4〜5億件とされることを踏まえると、きわめて野心的な数字だ。
記事では「早期発見によって将来的に全死因の30%を回避し、医療費の50%を削減できる可能性がある」とも述べているが、これはあくまで同社が示す展望であり、現時点で臨床的に検証された数値ではない。
外部投資家なしで進める理由
Midjourneyは今回の開発についても外部投資家を持たないと明言している。画像生成サービスの収益で研究開発を自己資金で賄う構造は変わらず、発表にあわせてコミュニティからのフィードバックも募っている。スキャナーやスパの設計にユーザーの声を反映させる姿勢は、同社がDiscordを軸にコミュニティと共に開発を進めてきたスタイルと一致する。外部資本を入れないことで、医療規制への対応ペースや設計方針を自社でコントロールし続ける狙いもあるとみられる。
詳細はA New Era of Midjourneyを参照していただきたい。




