6月18日、SoftBankが「The SoftBank Group and OpenAI Team Up to Safeguard Japan's Critical Infrastructure」と題した記事を公開した。SoftBankが自社の700システム・10,500件の脆弱性を実証環境として使い、AIによる脆弱性評価から修正支援までを一貫して提供する新サービス「Patching as a Service」を発表した内容だ。単なる診断ツールにとどまらず、「修正の実施支援まで踏み込む」点が、既存の脆弱性管理サービスとは異なる打ち出し方となっている。
AIによるサイバー攻撃の激化が背景に
攻撃者がAIを使って自動化・大規模化したサイバー攻撃を仕掛けるケースが増加しており、重要インフラを支えるシステムへの脅威は深刻さを増している。ここでいう「重要インフラ」とは、電力・通信・金融・交通など、社会基盤を支える分野を指す。システム障害、データ漏洩、サービス停止といったリスクが社会全体に波及しうるため、防御側の対応が急務となっている。
SoftBankは日本最大級の通信事業者であり、自社が重要インフラそのものを運営している立場にある。通信網の安定稼働を担う事業者として、サイバーセキュリティへの取り組みは自社防衛の観点でも不可欠であり、今回のサービス発表はその延長線上に位置する。
こうした状況を踏まえ、2026年6月16日、SoftBank Group Corp.、SoftBank Corp.、SB OAI Japan GK、OpenAI Group PBCの4社は、東京で企業顧客向けの特別イベントを開催。日本の主要企業150社から約200名のクライアントを前に、新サービスを発表した。
なお、SB OAI Japan GKはSoftBankとOpenAIが設立した合弁会社(GKは「合同会社」の略)であり、OpenAIの技術を日本市場に展開するための事業体だ。OpenAI Group PBCのPBCは「Public Benefit Corporation(公益法人)」を意味し、OpenAIが社会的使命を定款に明記した法人形態を採用していることを示している。
「Patching as a Service」とは何か
今回発表された「Patching as a Service」は、OpenAIの技術(SB OAI Japan経由で提供)とSoftBank Corp.の運用ノウハウを組み合わせたサービスだ。脆弱性の評価から、修正計画の策定・実装アドバイザリーまでを一貫して支援する。
SoftBank Group Corp.の孫正義会長兼CEOは「日本の重要インフラを守ることが我々の責務だ」と述べ、サービスの意義を強調した。
具体性があるのはSoftBank Corp.の宮川潤一社長兼CEOのコメントだ。同氏は、OpenAIのサイバーセキュリティ技術を使って自社の内部システムに対して大規模な脆弱性評価を実施した経緯を説明した。
- SoftBankが運用するシステムは約1,800
- そのうち、ソースコードを社内管理している約700システムを対象に評価を実施
- 発見された脆弱性は10,500件
- うち約4,000件は優先的・早期対応が必要なレベルと判定された
700システムで1万超の脆弱性が検出されたという数字は、インフラ規模と脆弱性管理の難しさを端的に示している。宮川氏はこの実運用経験を「Patching as a Service」の展開に活かすとしており、自社を実証環境として使った点がサービスの信頼性の根拠となっている。
Sam AltmanはビデオメッセージでAI×セキュリティの将来を語る
OpenAI CEOのSam Altmanはビデオメッセージで連携への支持を表明した。
「ソフトウェアはますます複雑化しており、AIは深刻な脆弱性を発見し、どのリスクが最も重要かを理解し、被害が生じる前に修正するのに役立つ。私たちは、モデルのサイバー能力を脆弱性の特定にとどまらず、組織がシステムをパッチし、最も困難なセキュリティ問題を解決するために使ってほしい。」
Altman氏はさらに、「日本の重要インフラ、金融機関、企業、テクノロジーエコシステムは、日本だけでなく世界にとっても重要だ」と述べ、この取り組みが日本にとどまらないスコープを持つことを示唆した。
「脆弱性の検出」から「修正の実施支援」へ
今回のサービスで注目すべき方向性は、単なる脆弱性スキャンにとどまらない点だ。Altman氏も「脆弱性の特定だけでなく、実際にパッチを当て、困難なセキュリティ問題を解決すること」を目指すと明言している。
脆弱性管理の領域では、CrowdStrikeやTenable、Qualysといったグローバルベンダーが検出・スコアリング・優先順位付けの機能を提供しているが、エンタープライズ側の課題として「検出はできても修正リソースが追いつかない」という現実がある。「Patching as a Service」はその gap、すなわち検出後の修正計画・実装支援に踏み込む点を強調している。
※編集部の考察:上記の競合サービスとの比較は元記事には記載されていないが、サービスの位置づけを理解するための文脈として付記した。
SoftBankが自社の700システム・10,500件の脆弱性という実績をもって企業に提案できる構造は、純粋なソフトウェアベンダーとは異なる説得力を持ちうる。通信インフラ事業者として実際に脆弱性管理の当事者であった経験が、サービスの信頼性の裏付けとなっている点は、他の診断ベンダーとの差異として注目に値する。
詳細はThe SoftBank Group and OpenAI Team Up to Safeguard Japan's Critical Infrastructureを参照していただきたい。




