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ビジネス・マーケット

本番稼働中のエージェントAIプロジェクトの77%が停滞 — 原因はモデルの性能ではなく「データと組織の整備」だった

6月18日、Help Net Securityが「Most agentic AI projects in production have stalled over data problems」と題した記事を公開した。この記事では、本番環境でエージェントAIを運用している企業の大半がデータ品質・ガバナンス問題で停滞しているという調査結果について詳しく紹介されている。

6月18日、Help Net Securityが「Most agentic AI projects in production have stalled over data problems」と題した記事を公開した。この記事では、本番環境でエージェントAIを運用している企業の大半がデータ品質・ガバナンス問題で停滞しているという調査結果について詳しく紹介されている。


本番運用中のプロジェクトの77%が停滞

調査はデータストリーミング基盤「Apache Kafka」のマネージドサービスを主力製品とするConfluentが14カ国・4,625人のITリーダーを対象に実施した年次調査「Data Streaming Report」によるものだ。エージェントAIを本番環境で運用している組織の割合は**2026年時点で32%**(前年比29%から増加)に達した。

※Confluentはデータストリーミング製品を販売する企業であり、本調査の結果はその事業領域に直接関係する。数値を参照する際にはこの点を念頭に置きたい。

しかし、その先に待っていたのは想定外の壁だ。

本番稼働中の組織のうち、77%がプロジェクトの停滞を報告。さらに61%がプロジェクトの中断・放棄を経験しており、遅延期間は1〜5カ月に及ぶケースが多い。原因の核心はデータにある。


障壁の実態:4つの課題が拮抗

ITリーダーが挙げたエージェントAIのスケールアップ障壁は以下の4点で、数値が接近しているのが特徴的だ。

障壁 回答率
スキル不足・組織的な準備不足 69%
LLMの信頼性・非決定性への懸念 68%
データインフラ・品質の問題 66%
ガバナンス・リスク・コンプライアンスの問題 65%

ここで挙がっている「LLMの非決定性」とは、同一の入力を与えても出力が毎回異なりうるという大規模言語モデルの根本的な性質を指す。生成AIが確率的なサンプリングによってトークンを選択する以上、出力の再現性は原理的に保証されない。人間がレビューを挟まないエージェント処理でこの性質が顕在化すると、テストで通過した挙動が本番で再現されないという問題が生じる。

技術的な問題と組織的な問題が同程度のスコアで並んでいる点は示唆的だ。エージェントAIの導入失敗は「モデルの性能」より「データと組織の整備」で決まることを示している。


なぜデータ問題がセキュリティ問題になるのか

エージェントAI(Agentic AI)とは、人間の承認なしに自律的にタスクを実行するAIシステムを指す。ITオペレーションやソフトウェア開発など、従来は人間がレビューしていた業務を担う。

問題は、エージェントは受け取ったデータをそのまま行動の根拠にする点だ。データの出所(プロベナンス)が不明確で、鮮度も保証されていない状態で、エージェントは実際の業務アクションを起こす。誰も検証していないデータに基づいて、本番システムが動く。これは技術的負債ではなく、セキュリティリスクとして捉えるべき問題だ。

多くの組織は依然としてリアルタイムでデータを処理するインフラを持っておらず、このギャップは過去1年でむしろ拡大したと報告書は指摘している。


解決策としての「シフトレフト」

報告書が提言するアプローチは「シフトレフト(Shift Left)」——データの処理・ガバナンス・ポリシー適用を、データが生成される源泉に近い場所に移動させること、だ。もともとはソフトウェア開発においてテストやセキュリティチェックを開発工程の「左側(早期)」に移動させる考え方として広まった概念で、近年はデータパイプラインやAI基盤の設計にも応用されている。データ領域でセキュリティに適用すると、「インジェスト(データ取り込み)時点での検証・暗号化・アクセス制御」を意味し、以降のすべての下流処理がそのコントロールを自動的に継承する。

この考え方への支持は数字にも表れている。

  • データストリーミング基盤に求める機能として「インラインセキュリティ・ガバナンスの強制適用」が最多:43%が必須81%が主要または重要なメリットと評価
  • シフトレフトのネイティブサポートについては77%が必須または強く望ましいと回答

現場が問うべきチェックリスト

報告書は最終的に、セキュリティチームが向き合うべき問いをこう整理している。

  • データはどの時点で検証されるか
  • 誰がアクセスできるか
  • データの出所はどう記録されるか
  • 改ざんされたストリームに基づいてエージェントが行動した場合、何が起きるか

投資は「エージェントAI導入」の方向に向かっている。しかしリスクへの問いはまだ答えが出ていない、というのが調査の結論だ。


詳細はMost agentic AI projects in production have stalled over data problemsを参照していただきたい。