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MetaがAI強化のためエンジニアを強制「徴兵」— CTOが「20年で最悪に近い」と認めた組織混乱の実態

6月19日、The Next Webが「Inside the revolt at Meta's Applied AI unit」と題した記事を公開した。MetaのApplied AI部門に強制異動させられたエンジニアたちの反発と、同社のAI組織再編が引き起こした深刻な機能不全について詳しく報告している。

6月19日、The Next Webが「Inside the revolt at Meta's Applied AI unit」と題した記事を公開した。MetaのApplied AI部門に強制異動させられたエンジニアたちの反発と、同社のAI組織再編が引き起こした深刻な機能不全について詳しく報告している。


全社ライブストリームを乗っ取った怒り

数千人の社員が視聴する全社ライブストリームで、あるエンジニアが配信を乗っ取り、ホストに「上級役員に伝えてほしい。あいつはゴミだ」というメッセージを代読させた。今月、Meta社内で実際に起きた出来事だ。

この事件は、ひとりの役員への個人攻撃ではなかった。約6,500人規模のApplied AI部門で積もりに積もった不満が、ついに爆発した瞬間だった。

あるエンジニアはWIREDの取材にこう語っている。「まさにグラグ(強制収容所)だ。突然、生きる目的がゼロになった」。


143億ドルの賭けと「徴兵」

発端は昨夏にさかのぼる。MetaはデータラベリングスタートアップScale AIに対して143億ドル(約2.1兆円)を投じて出資し、創業者のAlexandr Wangをチーフ AI オフィサーに据えた。これに伴い3月、Mark Zuckerbergはサブ組織としてMeta Superintelligence Labsを新設し、その実働部隊としてApplied AIを組織した。

問題はこの部門が実際に何をするかだ。ニュースレター「The Pragmatic Engineer」を運営するGergely Oroszのレポートによると、コア製品・インフラ・セキュリティチームのエンジニアの30〜50%が、AIモデルを改善するためのデータラベリングとRLHF(人間のフィードバックによる強化学習)作業に強制的に再配置された。Meta全エンジニアの5〜6人に1人がフルタイムでデータラベリングをしている計算だ。

しかも異動は任意ではなかった。内部メモによれば、拒否権はなく、強制的に移された社員たちは自分たちを「draftees(徴兵兵)」と呼び始めた。


監視・tokenmaxxing・謎のインセンティブ設計

組織改編と同時期に、複数の問題が重なった。

キーストロークとマウスクリックの追跡: 社員のPC操作をAI学習データとして収集するシステムが導入された。オプトアウト不可。1,600人以上が抗議の署名をし、あるオフィスはそこを「従業員データ抽出工場」と名づけた。

tokenmaxxing: 人事評価にAIトークン使用量が組み込まれると、社員は評価のために無駄にトークンを消費し始めた。Meta社員の30日間のトークン消費量は60.2兆トークンに達し、定価換算で数億ドル規模に相当する。Oroszはこの歪んだ構造を端的に表現している――「ずさんなAI生成コードによる障害は解雇につながらないが、手でコードを書くと不利になりかねない」。


「20年で最悪に近い」とCTOが語った士気の低下

この文化のツケは明確な形で現れた。5月30日、Metaはサポート用AIが攻撃者のメールにパスワードリセットコードを送るよう誘導される手口で、Instagramの著名アカウントを含む大規模なアカウント乗っ取り被害を受けた。セキュリティチームは再配置で弱体化しており、CISOはその数日後に退社した。

CTO Andrew Bosworthは社員に対し、AI再編のプロセスは「atrocious(ひどいものだった)」と認め、社員士気は「20年間で最悪に近い、Cambridge Analyticaのスキャンダル並み」と述べた。チーフプロダクトオフィサーのChris Coxも「この会社の狂気」と表現し、「AIは神でも悪魔でもない」と述べた。

Mark Zuckerbergはその後、金曜メモで「変化が苦痛をもたらした」と認め、2026年末まで全社的な追加レイオフはしないと約束。マネージャー対レポート比率(Applied AIでは50:1に膨れ上がっていた)の上限設定や、チームイベント予算の増額を発表した。ただし、全社AIハッカソンのアイデアについては社員から公然と不満が出ている。


それでも業績は絶好調という皮肉

奇妙なのは、Metaのビジネスが絶好調であることだ。直近四半期の売上高は563億ドル、前年比33%増。AI活用の広告ツールの利用企業数は800万社に倍増した。

Forbes寄稿者のJon Markmanは、143億ドルの投資の本質を別の角度から評価する。MetaはScale AIのモデルを買ったのではなく、フロンティアラボが今最も必要とする高品質な学習データとRLHF環境の供給元の重要な持分を手に入れたのだと。LlamaをオープンソースにしたこともZuckerbergの一貫した戦略——「モデルはコモディティ化し、価値はデータと配信に宿る」——の延長線上にある。

しかしHashiCorpの創業者Mitchell Hashimotoはこの状況を別のフレームで語る。「エージェントが後始末をしてくれる前提で高速に出荷する」という発想は「AIサイコーシス」であり、Meta以外にも広がりつつある、と。

Metaの株価は記事執筆時点(2025年初頭〜2026年6月)の過去1年で約18%下落し、大手テック企業の中で最も低いパフォーマンスとなっている。Oroszはこの騒動を受けてMetaエンジニアの面接準備サービス登録が急増していると報告している。「流出した人材は、誰かの利益になる」と彼は書いている。


詳細はInside the revolt at Meta's Applied AI unitを参照していただきたい。