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ビジネス・マーケット

米国の輸出規制で特定AIモデルへの外国からのアクセスが遮断——「誰かが管理するAIに依存するリスク」が可視化され、自社インフラ完結型AIへの需要が急拡大している

6月18日、SiliconAngleが「Prem seeks $100M Series A as export bans boost sovereign AI demand」と題した記事を公開した。この記事では、米国の輸出規制強化を追い風に、自社インフラ上でAIを完結させる「ソブリンAI」需要が急増するなか、スイスのAIスタートアップPrem SAがシリーズAで1億ドルの調達を目指していることについて詳しく紹介されている。

6月18日、SiliconAngleが「Prem seeks $100M Series A as export bans boost sovereign AI demand」と題した記事を公開した。この記事では、米国の輸出規制強化を追い風に、自社インフラ上でAIを完結させる「ソブリンAI」需要が急増するなか、スイスのAIスタートアップPrem SAがシリーズAで1億ドルの調達を目指していることについて詳しく紹介されている。


輸出規制が「外部依存リスク」を可視化した

このラウンドのタイミングを理解するには、6月12日に米政府がAnthropicに下した命令を押さえておく必要がある。米国はAnthropicの特定モデルへの外国からのアクセスを遮断するよう指示し、Anthropicは翌日これらのモデルを無効化した。同社によれば、規制に準拠するにはそれ以外の方法がなかったという。なお元記事ではモデル名として「Fable 5」「Mythos 5」と記載されているが、Anthropicの公式発表での確認は取れていない点に留意されたい。

影響はAnthropicにとどまらなかった。JPモルガン・チェースは、AnthropicのライセンスがGreater China(中国本土・香港・台湾を含む広域)を対象外と判断し、香港のスタッフのClaude利用を停止。ゴールドマン・サックスも6月初頭に同様の対応を取っていた。

規制された企業にとって、これは「ツールが、誰か他者がコントロールする依存物に変わる瞬間」である。自社内でAIを動かしたいという需要は、こうした出来事ひとつで一気に現実味を帯びる。


Premのビジネスモデル:データが外に出ない設計

Prem SAは2023年創業のスイス拠点スタートアップだ。創業者のSimone Giacomelli氏は以前、分散型AIネットワーク「SingularityNET」の立ち上げに携わっている。

Premの製品は、クラウドプロバイダーではなく顧客自身のインフラ上でAIモデルを動かすためのソフトウェアだ。モデルのファインチューニング、文書解析、推論(Inference)がすべてプライベート環境で完結し、データはPremに返送されない。主な顧客ターゲットはヘッジファンドと法律事務所で、第三者に情報を渡せない業種を明確に狙っている。

今回の資金調達と同時に、新製品「Fluso」を発表した。FlusoはAIエージェントを動かすための暗号化ワークスペースで、顧客のデータが既に存在する場所——プライベートクラウド、仮想プライベートクラウド(VPC)、またはエアギャップ(※完全にネットワークから隔離された)オンプレミス環境——で動作する。

技術的な差別化の核となるのがオープンウェイトモデルの採用だ。オープンウェイトモデルとは、モデルの重みパラメータが公開されているモデルを指し、LlamaやMistralのシリーズがその代表例にあたる。Premはこれを採用することで、全パラメータの監査が可能な状態を保ち、データがトレーニングパイプラインに触れないと主張している。クローズドなAPIを通じてのみ利用できるモデルとは異なり、顧客側が内部挙動を検証できる点が、規制産業や政府系ユースケースにおける競合優位性となっている。


市場規模:ソブリンクラウドへの投資は急拡大中

「ソブリンAI」とは、特定の国や組織が自国・自社のインフラ上でAIを管理・運用する考え方で、米中対立や規制強化を背景に欧州を中心に急速に広まっている。

調査会社Gartnerは、2026年のグローバルなソブリンクラウドIaaS(※インフラをクラウドとして提供するサービス)支出が約800億ドルに達すると予測している。欧州単体でも、2025年の67億ドルから2027年には231億ドルへと3倍超に膨らむ見通しだ。


スイス籍が持つ意味

Premがスイスを拠点にしていることには戦略的な意味がある。スイスはEUの「十分性認定」(adequacy decision)を受けており、EU加盟国ではないにもかかわらずEUとのデータ移転が合法的に行える。2023年9月には改正スイスプライバシー法も施行された。

ただし、元記事はこの点について冷静だ。「スイス籍の企業が外国政府の手の届かない場所にいるわけではない。ただ、米国クラウド依存を減らしたい買い手にとって、スイスの法域は監査人が承認できる根拠にはなる」という趣旨の評価にとどめている。


競合との構図

同じ顧客を狙うプレイヤーは多い。フランスのMistral AIはパリ近郊のデータセンター向けに8億3000万ドルのデット・ファイナンスを調達済み。ドイツのAleph Alphaは政府向けソブリンデプロイで知名度を築いてきた。AWS、Google、Microsoft、IBMのハイパースケーラーも自社のローカリティ対応オプションを打ち出している。

Premがこれらの競合と異なる点は、特定のクラウド基盤に縛られず、顧客のインフラ上で完結する設計にある。オープンウェイトモデルを中立的に組み込む構造は、特定ベンダーのモデルへのロックインを避けたい企業にとっての訴求点にもなっている。


資金調達の経緯と評価額の推移

Premの調達履歴は以下の通りだ。

  • 2024年4月:シード1,400万ドル
  • その後:評価額2億ドルでブリッジ610万ドル
  • 今回:評価額5億ドル以上でシリーズA 1億ドルを目標(Q3クローズ予定)

約2年で評価額は約2.5倍に上昇し、累計調達額は1億2000万ドルを超える見込みだ。出資者にはSequoia Capital ChinaのFan Zhang氏(元記事での表記に基づく)や、マーベル・スタジオの初代会長David Maisel氏が名を連ねている。


詳細はPrem seeks $100M Series A as export bans boost sovereign AI demandを参照していただきたい。