6月19日、The Next Webが「Architect Labs raises $24M for AI custom chip design」と題した記事を公開した。AIによるカスタムチップ設計の自動化を目指すスタートアップ「Architect Labs」がシードラウンドで2400万ドルを調達した。数年・数百億円規模の投資と少数の専門家を要するチップ設計という領域に、AIを使って正面から切り込もうとする試みだ。
「設計不要」な半導体業界を目指す
チップ設計は、完成まで数年・数百億円規模の投資、そして少数の専門家を要する領域だ。その専門家の大半は一握りの大企業に集中している。
Architect Labsが描くのは、この構造を丸ごと変えることだ。同社はチップの設計から検証までをエンドツーエンドでこなすAIシステムの開発を目指している。
同社が参照するのは半導体産業の歴史だ。約20年前、ファブレスモデル(設計と製造を分離するビジネス形態)の登場により、TSMCが世界水準の製造能力を誰でも利用できる形にした。Architect Labsはこの「分離」をもう一層上、すなわち「設計」レイヤーで再現しようとしている。
同社がこのビジョンを「designless(設計不要)な半導体業界」と呼ぶのはそのためだ。企業はチップ会社になる必要がなく、特定アーキテクチャに10年単位の賭けをしなくてよくなる。ワークロードを持ち込めば、それを動かすシリコンが得られる、という世界だ。
BroadcomとMarvellを狙い撃ち
Architect Labsが正面から競合するのは、業界大手のBroadcomとMarvellだ。両社はAmazonやGoogleといったクラウド大手向けにカスタムAIアクセラレータを設計しており、合計で年間数兆円規模の売上を誇る。
カスタムシリコンへの需要は拡大を続けている。AIラボ、ハイパースケーラー(大規模クラウド事業者)、ロボティクスメーカーのいずれもが、自社ワークロードに最適化されたチップを求めている。汎用ハードウェアではもはや追いつかず、新たなチップアーキテクチャを模索する動きも活発化している。
共同創業者のEbrahim Hussain氏はこう述べている。「AIモデルはほぼあらゆる分野で劇的に進化した。しかしチップの開発サイクルは依然として遅く、苦痛を伴うまま変わっていない」。同氏が目指すのは、数十年来の設計フローにAIエージェントを後付けすることではなく、AIを「ファーストクラスの主体」として最初から組み込んだプロセスの再構築だ。
創業者のプロフィール
創業チームのバックグラウンドも興味深い。Hussain氏は高校を飛び級し15歳で大学に入学、その後AppleとTeslaでカスタムチップの開発に携わった。共同創業者のAaditya Subedi氏はハーバード大学でAIコード検証の研究を行い、2人はスタンフォード大学で出会い、中退して起業した。
チームは現在約18名で、機械学習とハードウェアの専門家が混在する構成だ。メンバー全体で80件以上の量産チップのテープアウト(設計完了・製造送り出し)経験を持つという。Intel、Metaのカスタムシリコン部門、そしてAnthropic・DeepMind・xAIの機械学習チームの出身者も名を連ねる。
調達内容と今後の計画
ラウンドはKindred Venturesがリード。TQ Ventures、Race Capital、Together Fundが参加し、エンジェル投資家としてGoogle DeepMindのチーフサイエンティストであるJeff Dean氏やOpenAI・Nvidiaの幹部も加わった(Reuters報道より)。Kindred創業者のSteve Jang氏は取締役に就任する。
調達資金は計算資源の拡充、研究の深化、初期パートナーとの共同設計に充てる。同社はすでにいくつかの半導体パートナーと協業しており、今年後半にはAIが主導する設計が最先端プロセスノードでテープアウトする見込みだという。
同社が描く最終的なビジョンは、モデル・ソフトウェア・ハードウェアが一体となって改善し続けるサイクルの確立だ。「ハードウェアがAIにとって回避すべき障害でなくなる世界」を目指すとしている。
詳細はArchitect Labs raises $24M for AI custom chip designを参照していただきたい。




