6月19日、The Next Webが「Sanders' AI bill would hand the public half of OpenAI」と題した記事を公開した。この記事では、バーニー・サンダース上院議員がAI大企業の株式の50%を課税として徴収し、米国民に年間1,000ドル以上を配当する公的ウェルスファンドを設立する法案を提出したことについて詳しく紹介されている。
「AIで得た富の半分を国民に」——サンダース法案の中身
バーモント州選出のバーニー・サンダース上院議員が、AI企業を対象とした強硬な法案を議会に提出した。
法案の骨子は明快だ。年間AI売上が2億ドルを超えるAI企業に対し、株式の50%を一度限りの「税」として徴収する。徴収は現金ではなく株式で行われ、その株式をもとに公的ウェルスファンド(政府系投資基金)を設立する。対象はOpenAI、Anthropic、イーロン・マスクのxAIなど主要AI企業が含まれ、ファンドの規模はサンダース試算で約7兆ドルに上る。
このファンドは年5%の配当を義務付けており、サンダースは「全米国民に年1,000ドル以上が渡る」と説明する。余剰分は医療・教育・住宅に充当される。
ファンドの運営は、大統領が指名し上院が承認する7人の独立委員会「民主的AI委員会(Democratic AI Council)」が担う。委員会は取得した議決権株式を通じて企業経営に一定の関与が可能であり、「公共に害を及ぼす」と判断した意思決定を阻止できる権限を持つ。7人という構成は超党派の承認プロセスを経るが、法案では委員の専門的背景や解任要件については詳細に規定されておらず、実際の独立性をどう担保するかは今後の議論になるとみられる。
「AIは公共財を盗んだ」という論理
法案の根拠は財政論というより道徳論だ。AIは「人類の集合的な知性から経済的価値を引き出している」とし、モデルの学習に使われた書籍・楽曲・美術・ジャーナリズム・コード・学術論文を列挙したうえで、「一握りの富裕層が数億人の創造的な労働を事実上盗み取った」と断じている。
論理構造は石油・鉱物資源の収益分配モデルに近い。公共資源から価値が生み出されるなら、国民がその利益を受け取るべきだ、という考え方だ。
サム・アルトマンとの直接対話でも平行線
この「政府が一定の株式を持つ」というアイデア自体は、実はワシントン内外で以前から浮上していた。トランプ前大統領も政府出資に言及し、OpenAIは自発的な「公的ウェルスファンド」構想を示唆し、AnthropicのDario AmodeiもAI企業への課税を財源とするベーシックインカム構想に触れていた。
しかしサンダース法案は「自発的な贈与」ではなく強制的な株式接収だ。実際、サンダースはOpenAIのCEOサム・アルトマンと直接会談した際、アルトマンが「利益の5%を自発的に拠出する」案を提示したのに対し、「それは国民を買収することだ」と一蹴。双方の立場は大きく隔たったまま終わったとされる。
一方、真逆の方向から法案を批判する声もある。PalantirのAlex Karpは「50%では生ぬるい、どうせ完全国有化は避けられない」と主張している。
可決の見込みは薄い——それでも意味がある理由
現実的な可決の可能性は低い。議会は共和党が多数を占め、産業寄りの姿勢が強い。トランプ政権でAI・暗号資産担当大統領補佐官(OSTP)を務めるデイビッド・サックスは法案を「完全な財産没収だ」と批判した。また、xAIとSpaceXの合併を進めるイーロン・マスクにとっては、AI事業と非AI事業の分離を義務付ける条項が直撃する。
サンダース自身も可決を期待していない。狙いは中間選挙に向けた争点化だ。AIと雇用への不安は選挙の争点になりつつあり、米国の大学生の約70%がすでにAIを自分のキャリアへの脅威と見ているという。
法案が動かなくても、論点はすでに変わった。ワシントンの議論はもはや「国民がAIの富を分配すべきか否か」ではなく、「どの程度分配するか」に移っている。
詳細はSanders' AI bill would hand the public half of OpenAIを参照していただきたい。




