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ビジネス・マーケット

AIコスト高騰で企業が中国製モデルへ移行加速 — UberはAI予算を年度の3分の1で使い切り、OpenAI・Anthropicの成長に影響も

6月20日、PYMNTSが「Soaring AI Costs Push Enterprise Buyers to Cheaper Chinese Models」と題した記事を公開した。UberがAI予算の年間枠を4月の時点で使い切った——つまり2026年度分の予算を年度わずか3分の1で消費し、経営幹部が「振り出しに戻った」と語るほどの事態になっている。AIコストの高騰を受けた企業ユーザーが中国製モデルへのシフトを加速させており、OpenAIやAnthropicの成長にも影響が及ぶ可能性があるという。

6月20日、PYMNTSが「Soaring AI Costs Push Enterprise Buyers to Cheaper Chinese Models」と題した記事を公開した。UberがAI予算の年間枠を4月の時点で使い切った——つまり2026年度分の予算を年度わずか3分の1で消費し、経営幹部が「振り出しに戻った」と語るほどの事態になっている。AIコストの高騰を受けた企業ユーザーが中国製モデルへのシフトを加速させており、OpenAIやAnthropicの成長にも影響が及ぶ可能性があるという。


コスト高騰の構造:チャットボットからエージェントへの移行が引き金

AIコスト上昇の主因は2つある。

1つ目は、チャットボットからAIエージェントへの移行だ。エージェントは自律的にタスクをこなすため、チャットボットと比べて消費する計算リソースが格段に多い。単純な質問応答と違い、エージェントは複数のステップにわたって推論・実行・検証を繰り返すため、同じ業務目標を達成するのに必要なトークン数がまったく異なる規模になる。

2つ目は、課金モデルの変化だ。AIラボ各社が定額サブスクリプションからトークンベースの従量課金に移行したことで、使えば使うほど請求が跳ね上がる構造になった。従来のSaaSは「従業員1人あたり月◯円」という分かりやすい課金だったが、AIはトークン数、APIコール数、生成画像数、推論サイクル数、バックグラウンドで実行された自律ワークフロー数——場合によってはこれらすべてが同時に課金される。CFOが予算を管理しにくいのは当然だ。

こうした構造的な変化が重なった結果、企業の現場では想定外の請求が相次いでいる。Uberのケースはその象徴だが、同様の問題は業種を問わず広がっている。Walmartは6月1日、社内AIエージェント「Code Puppy」のトークン数を従業員ごとに上限設定した。それまでは無制限だった。Uberの経営幹部が「生産性向上の効果が費用対効果として成立していない」と認めていることは、AIへの楽観的な投資姿勢に変化が生じていることを示している。

なお、こうした事態の背景には2025年初頭のDeepSeekショックも関係している。DeepSeekが低コストで高性能なモデルを公開したことで、「高価な米国製モデルを使い続けることへの疑問」が企業の調達担当者の間に広がった。その後、米中間のAI規制をめぐる緊張が続くなかでも、コスト圧力に直面した企業が中国製モデルへの評価を実務的に進める流れは止まっていない。


中国モデルへのシフトが加速

コスト高騰が生んだのが、中国製AIモデルへの需要だ。中国のAIラボはより効率的なモデル設計と中国国内の低いエネルギーコストを背景に、米国勢より安価に提供できる。

OpenRouter(複数のLLMを一元的に利用できるAPIプロキシサービス)のデータによると、中国製AIモデルのトークン消費量が年初から逆転し、現在は米国製を上回っている。元記事はこの数字を引用しており、市場シェアの移動を示す指標として位置づけている。ただし、具体的な割合や集計期間の詳細については元記事の原典となるOpenRouterの公開データを直接確認することを勧める。

この数字が示すのは、単なる「試用」ではなく、実際のトークン消費——すなわち業務での実利用——において中国製モデルが米国製を追い越したという事実だ。調達判断が実際の利用量に反映されるまでには一定のラグがある。その点を考慮すると、この逆転現象は企業側の意思決定がすでに相当程度進んでいることを示唆している。


企業の対策:4つのアプローチ

記事に登場する経営幹部の声をまとめると、企業が取っている対策は以下の通りだ。

  • 利用上限(キャップ)の導入:部門・従業員単位でトークン消費量に制限を設ける
  • タスクに応じたモデル選定の徹底:高性能モデルを一律使用せず、用途に合ったモデルを使い分ける
  • 旧世代・低コストモデルへの切り替え:最新モデルでなくても業務が回るケースは多い
  • オープンソースモデルの採用:ライセンス料がかからないモデルで代替できる領域を探す

これらは互いに排他的な選択肢ではなく、企業によっては複数を組み合わせて対応している。共通しているのは「AIを使わない」という方向ではなく、「使い方を最適化する」という姿勢だ。AI活用そのものへの後退ではなく、調達・運用の合理化フェーズに移行しつつあると見るのが妥当だろう。


OpenAI・Anthropicへの影響

Financial Timesの報道を引用する形で、元記事はAnthropicやOpenAIの成長がコスト管理の動きによって鈍化する可能性を指摘している。企業がAIを積極導入していた時期の前提は「コストが低い」ことだった。その前提が崩れた今、ベンダー乗り換えの判断が現実的な選択肢になりつつある。

OpenAIとAnthropicはいずれも企業向けの大型契約を成長の柱に据えている。コスト圧力が本格化するなかで、価格競争力のある代替手段が台頭していることは、両社の営業・価格戦略に対する圧力になり得る。短期的な解約よりも、契約更新時の交渉力の変化や、新規採用の鈍化という形で影響が顕在化する可能性が高い。


詳細はSoaring AI Costs Push Enterprise Buyers to Cheaper Chinese Modelsを参照していただきたい。