6月19日、The Decoderが「More people get news from AI chatbots, but trust remains low」と題した記事を公開した。AIチャットボットをニュース取得に使う人が世界的に増加している一方、実際に信頼しているのは回答者全体のわずか20%。さらに、チャットボットから元記事をクリックする人は4%にすぎず、検索エンジン(19%)やソーシャルメディア(17%)と比べて著しく低い。これはReuters Institute(オックスフォード大学付属の報道研究機関、正式名称:Reuters Institute for the Study of Journalism)が45市場を対象に実施した大規模調査の結果だ。
週1回以上、AIでニュースを見る人が7%→10%に
Reuters InstituteのDigital News Report 2026によると、ChatGPTやGoogle GeminiなどのAIチャットボットをニュース取得に週1回以上使う人の割合は、前年の7%から10%に上昇した。ただし、AIチャットボットを「主要なニュースソース」と答えた人は**わずか1%**にとどまる。伸びが顕著なのはアジア、アフリカ、中南米、南東欧といった新興市場だ。
ユーザー層を見ると、若年層の比率が高い。**18〜24歳では17%**がニュース目的でチャットボットを週次利用しているのに対し、最高年齢層では5%にすぎない。最も伸び率が大きかったのは25〜34歳で、4ポイント増だった。
「ニュース好き」と自称するユーザーでは利用率が**18%**に達し、ライトな情報収集層(7%)と大きな差がある。また、極左(16%)と極右(15%)の政治的極端層でも利用率が平均を上回る。研究者のAmy Ross Arguedas博士は、これらの層が単純にニュースへの関心が高いためだと説明している。

調査対象45市場において、チャットボットの主な使い方として最も多かったのは「追加質問をする」(42%)、続いて「最新ニュースを得る(35%)」「要約(34%)」「ニュースソースの信頼性確認(33%)」「記事の平易化(30%)」という順だった。報道の自由度が低い香港やトルコ、あるいはハンガリーやルーマニアのようにニュース不信が強い市場では、「ソースの信頼性確認」目的の利用が特に高い。
ほぼ誰もオリジナルソースをクリックしない
27市場の全回答者のうち、AIチャットボットから元ニュースへ「いつも・よくクリックする」と答えた人は**わずか4%**。検索エンジン(19%)やソーシャルメディア(17%)と比べて著しく低い。
この傾向は、Pewの調査でGoogle AI Overviewsのソースリンクをクリックするユーザーが1%にとどまるという先行研究と整合する。Googleは著作権をめぐる法的紛争で「誤った情報もソースを確認すれば問題ない」と主張しているが、実態としてユーザーはほとんど確認しない。しかも、引用されたソースが回答内容と必ずしも一致しているわけでもない。
チャットボットユーザーがクリックする場合、「詳細を知りたい(51%)」は検索エンジン(59%)やSNS(60%)より低く、「事実確認(44%)」や「ソース確認(43%)」の目的で使われることが多い。
信頼度:使っている人とそうでない人で大きな差
ニュース全般を「信頼する」と答えた人は**37%。一方、AIチャットボットのニュースを信頼する人は一般回答者全体で20%にとどまる。ただし、実際にチャットボットを使っているユーザーに絞ると44%**が信頼すると答えており、非ユーザー(17%)と比べて大きな差がある。
市場レベルでは「信頼度」と「利用率」の間にR²=0.81という強い正の相関が確認されている。ナイジェリア、ケニア、インド、南アフリカが高い位置にあり、英国、ドイツ、米国は低い。レポートはこの強い相関をソーシャルメディアとの違いとして強調しており、チャットボットでニュースを得るのは受動的な閲覧ではなく「意図的な選択」であることが背景にあると分析している。
二つのリスク:おべっかと公論の断片化
記事が特に強調するのは、誤情報よりも深刻かもしれない二つの問題だ。
一つ目はAIの迎合性(sycophancy)。チャットボットはユーザーの既存の見方を否定するより肯定する傾向があり、政治的極端層での利用率が高い現状と組み合わさると、分極化を加速させるリスクがある。
二つ目は公共言論のさらなる断片化。パーソナライズされたニュース提供はソーシャルメディアが始めたトレンドを加速させる。各ユーザーが自分に合わせた形でニュースを受け取ると、公的議論の前提となる「共通の情報基盤」が侵食される。
一方でポジティブな側面もある。33%のユーザーが別言語への翻訳目的でチャットボットを使い、**35%**が複数メディアの情報をまとめる目的で使っている。使い方によっては、単一のニュースソースより多様な視点を得やすくなる可能性もある。
レポートはメディア企業に対し、「AIプラットフォームと同じ土俵で競うな」と提言している。チャットボットが提供できないオリジナル取材とジャーナリスティックな信頼性に集中すべきだという結論だ。
詳細はMore people get news from AI chatbots, but trust remains lowを参照していただきたい。





