6月21日、TechSpotが「Yann LeCun says xAI is "kind of a failure" – and the whole AI industry might be headed for a reset」と題した記事を公開した。「AIの父」の一人であるYann LeCunがxAIを「ある種の失敗(kind of a failure)」と評し、AI業界全体のバブル崩壊リスクに警鐘を鳴らしたインタビューの内容が取り上げられている。
「正直に言って、xAIはある種の失敗だ」
CNBCのインタビューで、LeCunはElon MuskのxAIについて「the founding team has left(創業チームが去った)ため、正直に言ってある種の失敗だ」と述べた。xAIは2023年の設立以降、複数の共同創業者が相次いで離脱しており、その人材流出がLeCunの評価の根拠となっている。
同じCNBCのインタビューの中でLeCunはさらに踏み込み、「ElonはAIのトップ人材を採用することが非常に難しい立場に置かれている。なぜなら、前のチームに対してあまり良い振る舞いをしなかったからだ」とも述べた。
この批判は、xAIが急速に規模を拡大している最中に飛び出した。Muskは今年初め、xAIとTeslaの株式を組み合わせた取引を通じてxAIの評価額を引き上げており、関連する取引全体の合算評価額は1.25兆ドル規模と報じられている(※なお、一部報道ではxAIとSpaceXの株式交換・バリュエーション合算の可能性も指摘されており、正確な取引の構造については原記事および各社の公式発表を参照されたい)。メンフィスに建設された「Colossus 1」および「Colossus 2」データセンターはAI訓練用の大規模インフラとして整備されたが、今では他社への貸し出しによる収益源としても機能している。GoogleやAnthropicもその計算資源を利用しているとLeCunは指摘した。「Muskがコストを回収できる唯一の方法だから」という理由からだ。
業界全体の構造問題——「バブル崩壊」の可能性
LeCunの批判はxAIだけにとどまらない。AI業界全体の収益モデルに疑問を呈している。
原記事によれば、xAI関連の事業は2025年第1四半期だけで25億ドルの営業損失を計上したとされる(ただし、この数字がxAI単体のものか、関連事業との合算かについては原記事の文脈を直接ご確認いただきたい)。LeCunはこれをxAI固有の問題ではなく、業界全体に共通する構造的な課題として捉えている。
「AIサービスの価格は上昇しているが、運用コストの低下がそれに追いついていない。だからすべての企業が赤字を出していて、ほとんどのユーザーの利用料は投資家が補填している。それがいつまでも続くわけがない」
その先に待つ結末として、「OpenAIやAnthropicは価格を上げるか、コストを削減するか、でなければ大きなバブル崩壊が起きるだろう」と述べた。
LLMへの根本的な懐疑——「世界モデル」への賭け
LeCunの批判の核心は、現在の主流技術であるLLM(大規模言語モデル)そのものへの疑問だ。LLMはコーディングや構造的な推論には優れているが、現実世界で確実に動作するシステムを構築するには限界があると主張する。
彼が代替として提唱するのが「ワールドモデル(world models)」だ。これは環境の因果関係、物理的なインタラクション、文脈を体系的に把握するように設計されたシステムを指す。「私個人的には、ワールドモデルに基づかない限り、汎用的で信頼性の高いエージェント型AIは実現しないと思っている」と述べた。
この立場は、LLMをベースとしたAIエージェントの開発を推進するOpenAIやAnthropicの方向性とは相容れない。LeCunはこれらのシステムを全否定はしないものの、「ユーザーが実際に支払う意思のある金額をはるかに超えたコストがかかる」として、経済的なスケーラビリティに疑問を示している。
LeCunが共同創業したAMI Labsは、このワールドモデルアプローチに取り組むスタートアップだ。同社はLeCunらが掲げる「LLMを超えた次世代AI基盤」の実用化を目指しており、今年初め、プレマネーバリュエーション35億ドルで約10億3000万ドルの資金調達を完了している。
「Godfather of AI」の立ち位置
LeCunはかつてMetaのチーフAIサイエンティストを務め、ディープラーニングの基礎を築いた人物として、Geoffrey HintonやYoshua Bengioとともに「AIの父」と称されることが多い。ただし、彼は以前からLLMの限界について発言を続けており、今回の発言もその延長線上にある。業界の熱狂から距離を置く数少ない重鎮の一人であることは確かだ。
AI需要とインフラへの投資は依然として旺盛だが、LeCunのコメントは「誰が勝つか」という問いよりも、現在のAI構築・資金調達モデルが持続可能かどうかという、より根本的な問いを突きつけている。
詳細はYann LeCun says xAI is "kind of a failure" – and the whole AI industry might be headed for a resetを参照していただきたい。




