6月22日、The Next Webが「Nearly 60% of TikTok videos shown to new users are AI slop, study finds」と題した記事を公開した。動画編集ツールを提供するKapwingの調査によれば、新規TikTokユーザーに表示される動画の約6割がAIスロップで占められており、同調査におけるYouTube Shortsの比率(21%)の約3倍に達する。子ども向けコンテンツでの汚染が特に深刻で、一部のハッシュタグでは確認した100本中97本がAI生成だった。
新規アカウントへの「デフォルト体験」が崩壊している
Kapwingは、TikTok上のAI生成コンテンツの実態を調査した報告書を公開した。調査対象は20の人気カテゴリにわたる10,742本のTikTok動画で、加えて新規作成アカウントの「おすすめ」フィードに最初に表示される500本の動画を個別に分析した。
その結果、500本中294本がAIスロップ(AI生成の映像や、明らかにAIで作られたスクリプト・ナレーションを使った低品質のコンテンツ)に分類された。比率にして**59%**、約6割だ。
同じKapwing調査でYouTube Shortsを新規アカウントに表示した場合のAIスロップ比率は約21%で、TikTokはその約3倍という結果になった。TikTokのレコメンドアルゴリズムは視聴時間やいいね、スクロール行動などの行動データをもとにパーソナライズされていくが、Kapwingが着目したのはそのパーソナライズが始まる前の段階——ユーザーがまだ何も操作していない、アルゴリズムが「素の状態」で動いているときだ。
子ども向けコンテンツが最も深刻
カテゴリ別に見ると、子ども向けコンテンツ(Kidsカテゴリ)が57%で最悪の数値を記録した。次いでサイエンス・教育が35%、ヘルスと歴史がそれぞれ約34%と続く。一方、フィットネス・音楽・ファッションはほぼ人間制作で、それぞれ2%未満だった。
特定のハッシュタグで見るとさらに極端な数字が現れる。#CartoonKidsでは確認した100本中97本がAI生成で、人間が作った動画はわずか3本だった。このハッシュタグ単位の97%という数値はKidsカテゴリ全体(57%)とは別の集計であり、特定タグに絞った場合の上限値として参照されたい。#cartoonsと#babysongは83%、#forkidsは79%に達した。
これらの動画のパターンは一定している——見慣れたキャラクターが不自然なシナリオに登場し、合成音声が教育的な内容を語るが、事実誤認が混入している。大人ならすぐ気づくような数え間違いも、未就学児には判断する文脈がない。
元記事によれば、シカゴ大学の小児科学教授であるDana Suskind博士はこの現象を「工業的スケールで行われる幼児向けAIミスインフォメーション」と表現した。生成AIが人間のクリエイターでは到底追いつけないペースでコンテンツを量産できることが、問題の本質にある。
TikTokの対応とYouTubeとの差
TikTokは2025年11月、ユーザーが自分のフィードに表示されるAI生成コンテンツの量を調整できるコントロール機能を導入した。ただしKapwingはこれを「受動的なコントロールに過ぎない」と批判しており、調査データも新規ユーザーへのAIスロップ流入を実質的に減少させていないことを示している。
対照的にYouTubeは2026年1月、「非本物コンテンツポリシー」に基づき、合計登録者数3,500万人・累計再生数約50億回に達する16チャンネルを削除した。この対応は一部の正規の「顔出しなし系クリエイター」を巻き込んだとして批判も受けたが、プラットフォーム間のAIスロップ比率の差は依然として大きい。
なおTikTokはフロリダ州から子ども向けSNS法に基づいて今月初めに提訴されており、AIスロップ問題はその法的圧力にさらなる文脈を加えている。
調査の限界
注意すべき点もある。Kapwingは人間制作コンテンツに商業的利益を持つ企業であり、「AIスロップ」の判定は自動検出ではなく手動レビューによるものだ。主観が入り込む余地がある。また、調査対象期間は2026年5月のスナップショットであり、アルゴリズムやモデレーションポリシーは変化しうる。
それでも、10,000本超の動画という規模はTikTok上のAIコンテンツ密度を検証した調査としては現時点で最も包括的なものだ。#CartoonKidsで100本中97本がAI生成であるという事実は、「スロップ」の定義の曖昧さに関係なく、特定フィードのほぼすべてが機械生成であることを示している。
詳細はNearly 60% of TikTok videos shown to new users are AI slop, study findsを参照していただきたい。




