6月23日、Etiido Ukoが「Anthropic's powerful Mythos AI reportedly breached 'almost all' NSA classified systems within a few hours during red-team test」と題した記事を公開した。AnthropicのAIモデル「Mythos」(同社のフラッグシップモデルシリーズの最新世代)がNSAの機密システムをほぼ突破したとされるレッドチームテストの詳細と、米政府による輸出規制との関連について詳しく紹介されている。
NSAの機密システムを「数時間で」突破
The Economistが6月14日に報じた内容によると、米上院情報委員会の副委員長であるマーク・ワーナー上院議員は、NSA(国家安全保障局)および米サイバー軍のトップであるジョシュア・ラッド大将から、AnthropicのAIモデル「Mythos」の能力についてブリーフィングを受けたという。
ラッド大将がワーナー議員に語ったとされる言葉は衝撃的だ。
「(このツールは)我々の機密システムのほぼすべてに侵入した。それも数週間ではなく、数時間で」
この発言は約1週間後にSNSで拡散し、「MythosがNSAをハックした」という見出しが独り歩きする事態となった。
実態は「制御された内部テスト」
ただし、当初記事を執筆したThe Economistの著者は6月21日に公式声明を発表し、「Mythosが自律的にNSAをハックした」という解釈は誤りだと訂正した。
実際には、Mythosを防御ツールと組み合わせた高度に特定された模擬環境下での、承認済みの内部レッドチームテスト(侵入を試みる攻撃役のセキュリティ評価)であった。テストが実施されたのは6月11日のことだ。
Anthropic側の説明はさらに踏み込んでいる。同社によれば、今回「侵入」とされた動作は、コードベースを解析して問題を修正するよう指示した際に、既知のマイナーなバグが数件検出されたにとどまるという。自律的な攻撃侵入とは程遠い内容であり、OpenAIのGPT-5.5(OpenAIのフラッグシップ系列に属する大規模言語モデル)を含む競合モデルでも同様の挙動が確認されているとAnthropicは主張している。
輸出規制との関係
この一連の出来事は、6月12日に米政府がFable 5およびMythos 5モデル(AnthropicのAIモデルシリーズの各世代を指す名称)への外国籍者のアクセスを禁止した経緯を説明するものとして注目されている。Anthropicの非市民権保有従業員も対象となったこの規制に対し、Anthropicは国籍ベースのアクセス制御を現実的に実施することは不可能だとして、モデルをグローバルで無効化した。
この措置はAIモデルそのものに対して米国が輸出規制を適用した初めてのケースである(従来はモデルを動かすハードウェアが規制対象だった)。Anthropicが受け取った通知には具体的な懸念事項の記載はなく、「Fable 5がソフトウェア脆弱性を特定できる可能性のある、限定的・非普遍的なジェイルブレイク(安全制御の回避)」に関する口頭での説明があったのみだという。
レッドチームテストが6月11日、規制が6月12日という時系列について、元記事はテスト結果が規制発動の直接のトリガーになったと示唆しているが、断定的な因果関係の記述は避けており、推測の域にとどめている。
一方でNSAとの協力関係は継続
規制を巡る対立と並行して、AnthropicはNSAとの実務的な協力関係を維持している。Financial Timesが6月上旬に報じたところによると、Anthropicのエンジニア約6名が「Project Glasswing」(AnthropicとNSAとの機密技術協力プログラムとされる)の一環としてNSA内部に常駐し、Mythosを特定の作戦用途向けにカスタマイズする作業にあたっているという。その用途には、中国やイランが運営するネットワークへの侵入が含まれる可能性も示唆されている。
Anthropicは現在、ホワイトハウスとのリスク管理フレームワークを策定中であり、モデルへのアクセス復旧に向けた取り組みを進めているとしている。
ネット上の反応
ClaudeAIのサブレディットでは意見が大きく分かれている。最多数派は、この件をNSA自身のサイバーセキュリティの脆弱性の証拠と捉え、政府が必要な水準の人材を確保できていないことや、過去の情報漏洩の歴史を問題視している。一方、懐疑的な立場からは「侵入の詳細が明かされていない」「Anthropicのマーケティング目的の誇張ではないか」といった声も上がっている。また、サイバーセキュリティの専門家からはAIが攻撃の所要時間を従来比で大幅に短縮しているとの指摘もあり、「AI能力の成長を過小評価している」として懐疑派を批判する意見も存在する。
詳細はAnthropic's powerful Mythos AI reportedly breached 'almost all' NSA classified systems within a few hours during red-team testを参照していただきたい。




