6月22日、Kevin Haynesが「What Most Tech Workers Still Don't Realize About AI and Job Security」と題した記事を公開した。2万3,000人規模のGallup調査が明らかにしたのは、「AIそのものが人間の仕事を奪う」という従来の議論ではなく、AIを使いこなす社員が使わない社員のポジションを埋めていくという、より具体的な雇用構造の変化だ。テックレイオフが2022年以降の高水準から落ち着きつつある今、「誰が残るか」の基準が静かに塗り替わっている。
調査の背景:Gallupとテックレイオフの文脈
本調査を実施したGallupは、米国を拠点とする世論・職場調査の大手機関で、Gallup Workplaceが定期的に公開する雇用・エンゲージメントデータは企業・政策立案者の双方から広く参照されている。今回の調査は2026年2月に全米2万3,000人以上を対象に実施されたものだ。
調査の背景として押さえておきたいのが、テック業界のレイオフ動向だ。2022年後半にMeta・Amazon・Twitterなどが大規模な人員削減を実施したのを皮切りに、2023年〜2024年にかけてGoogleやMicrosoft、Salesforceなどでも継続的なレイオフが行われた(Layoffs.fyiが業界全体の推移をトラッキングしている)。こうした構造的な再編が続く中、企業が「誰を残すか」を判断する基準として、AIリテラシーが急速に浮上してきたのが今回の調査が示す文脈だ。
AIを使わない社員は解雇リスクが3倍高い傾向
Gallup調査によれば、AIを月1回未満しか使わないテック系ワーカーの解雇確率は18%。一方、AIを定期的に活用している社員では6%にとどまる。実に3倍の差だ。
ただし、この数字を読む際には留保が必要だ。これはあくまで相関データであり、「AIを使わないこと」が解雇の直接原因であると因果関係を示すものではない。AIを積極的に活用する社員がもともとパフォーマンス評価が高い傾向にある、あるいは企業がAI推進に積極的な組織文化を持つ場合に解雇率が全体的に低い、といった第三の要因が介在している可能性もある。とはいえ、2万3,000人規模のデータとして示された統計的な差は、キャリアの観点から無視しにくい水準だ。
この傾向はテック業界に限った話ではない。他業種でも同様のパターンが確認されており、ただし業界外ではその格差はやや小さいとされる。Gallupはこの結果を踏まえ、「AIを活用していない労働者は、年齢・学歴・職種を問わず、雇用市場においてより脆弱な立場に置かれている」と述べている。
採用・人員整理の両方で「AIリテラシー」が判断基準に
調査が示すもう一つの重要な動向が、企業側の採用・評価姿勢の変化だ。雇用主がAIの活用を社員に積極的に促すようになっているだけでなく、求職者に対してもAI経験の有無を確認するケースが増えている。
Gallupは「AIリテラシーは、人員削減時に誰を残すかを決める重要な判断軸になりつつある」と指摘する。スキルセットの問題として言い換えれば、かつてExcelやプログラミングの基礎が「あって当然」のスキルとして扱われるようになったように、AIツールの活用能力が職場における基礎リテラシーとして位置づけられ始めているといえる。
なお、ここでいう「AIの活用」が具体的に何を指すかは元記事では明示されていないが、GitHub CopilotやChatGPTのような生成AIツールの業務利用が主な文脈と考えられる。
全体の解雇水準は低下傾向
ただし、全体像として見ると状況は必ずしも悲観的ではない。**2026年第1四半期に「自社が雇用削減を行っている」と回答した割合はわずか21%**で、2022年半ばから2025年末にかけて観測されたピーク水準を大きく下回っている。
テックレイオフの嵐が一段落した局面で、企業が「削減」から「選別」へと方針を移しつつあるとも読める。絶対数としての解雇が減る中で、残るポジションを誰が獲得するかという競争軸が変化している、というのが調査全体のトーンだ。
何が問われているのか
この調査で浮き彫りになるのは、「AIに仕事を奪われる」という漠然とした脅威ではなく、「AIを使いこなしている人が、使っていない人の枠を奪う」という構造だ。相関データである点を踏まえつつも、2万3,000人規模で観測された傾向として、キャリア戦略の文脈では軽視しにくい数字といえる。AIリテラシーを職場でどう位置づけるかは、個人・組織の双方にとって実践的な問いになっている。
詳細はWhat Most Tech Workers Still Don't Realize About AI and Job Securityを参照していただきたい。




