6月22日、StartuphHub.aiが「Baseten tripled to $13B while nobody was watching: inference infrastructure and sovereign AI defined this week's $7.3B in deals」と題した記事を公開した。この記事では、2026年6月の第3週に集中した推論インフラおよび主権AI関連の大型資金調達、総額73億ドル規模の取引について詳しく紹介されている。
誰も気づいていなかった:Basetenが評価額を3倍の130億ドルに伸ばした
今週最大のサプライズは、Basetenの評価額が約3倍になって130億ドルに達したという事実だ。「nobody was watching(誰も見ていないうちに)」という記事タイトルの表現が、その静けさをよく表している。なお、元記事によれば直前ラウンドの評価額は約43億ドル前後であり、そこからの約3倍という数字だ。
Basetenは、MLモデルのデプロイと推論インフラに特化したプラットフォームだ。OpenAIやAnthropicのような基盤モデルそのものではなく、企業がモデルを本番環境で動かすための「エンジンルーム」を提供している。
評価額が3倍になったタイミングとして、これは偶然ではない。生成AIの商業利用が本格化するにつれ、「モデルを動かす側のインフラ」への需要が急速に拡大している。学習(training)コストへの投資は落ち着きつつある一方、推論(inference)コストは実運用の拡大とともに増加し続けており、そこを握るプレイヤーへの評価が一気に上がっている。
今週の2つの主役:「主権AI」という概念が資金調達の文脈を変えた
Basetenと並んで今週の論点を形成したのが、主権AI(Sovereign AI)という概念を前面に掲げた2社の大型調達だ。
Dream:政府向けサイバー防衛AI、2億6000万ドル調達
イスラエル発のDreamが6月18日、2億6000万ドルを調達し、評価額30億ドルを達成した。Bicycle CapitalとGroup 11が共同リードし、Bain Capital VenturesとTru Arrow Partnersが参加した。
Dreamの創業者陣が興味深い。AIスタートアップとしては異例の顔ぶれで、イスラエルの元インテリジェンス関係者であるShalev Hulio(NSO Groupの共同創業者でもある)、元オーストリア連邦首相のSebastian Kurz、Gil Dolevの3名が2023年に立ち上げた。
同社が「ソブリンAI企業」を自称するのは意図的な差別化戦略だ。外国の基盤モデルプロバイダーに依存せず、政府が自ら管理・監査・運用できるAIインフラを提供するという立ち位置を明確にしている。顧客は欧州・中東・東南アジアの政府機関や重要インフラ事業者で、現在6つの政府顧客から年間1億3000万ドルの売上を上げている。
「ソブリンAI」という言葉はNVIDIAのJensen Huangが2024年初頭のWorld Government Summit等の講演で広めたフレームだが、Dreamはそれをビジネスモデルの中心に据えた数少ない商業企業の一つだ。
Sarvam AI:インドのフルスタック主権AI、2億3400万ドル調達
インドのSarvam AIは、シリーズBの第1トランシェとして2億3400万ドルを調達し、ポストマネー評価額15億ドルを達成した。これはインドのスタートアップ史上、最高額のシリーズB評価額として記録されている。
特筆すべきはリード投資家の性格だ。IT大手HCLTechがファンド経由ではなく自己資本から1億5000万ドルを直接投じた。財務的な利回りを期待した投資というより、戦略的な「自国AIスタック」への賭けという性格が強い。Bessemer Venture Partners、Khosla Ventures、Peak XV Partners(旧Sequoia India)も参加した。
Sarvamの技術的な実績は具体的だ。インド各言語に対応した音声モデルは月間50万時間超の音声を文字起こしし、ビジョンモデルは保険フォームや土地台帳など3500万ページをデジタル化している。英語中心のグローバル基盤モデルが手薄にしている「ローカル言語×政府業務」という領域を正面から攻めている。
今週の取引が示すトレンド
今週の73億ドルという数字の背景には、2つの構造的なシフトが読み取れる。
第一に、推論インフラへの評価の急上昇。 Basetenの3倍評価はその象徴だ。基盤モデルの競争が激化し差別化が難しくなる中、「動かす側」のインフラに対するプレミアムが高まっている。
第二に、地政学的文脈での主権AI需要の顕在化。 DreamとSarvamはいずれも「自国でコントロールできるAI」を価値提案の核にしている。規制・安全保障・データ主権への懸念が高まる中、政府や国策的な企業がこの文脈の資金調達を後押ししている。
詳細はBaseten tripled to $13B while nobody was watching: inference infrastructure and sovereign AI defined this week's $7.3B in dealsを参照していただきたい。




