6月22日、Computer Weeklyが「Santander extends staff access to AI as first quarter delivers €35m value」と題した記事を公開した。スペインの大手銀行サンタンデールがAIツールを全従業員18万5,000人に展開し、2025年第1四半期だけで3,500万ユーロのビジネス価値を創出したことを伝えている。
第1四半期で3,500万ユーロ、年内2億ユーロを目指す
サンタンデール銀行はこれまで4万人の従業員にAIツールへのアクセスを限定していたが、これを全世界の18万5,000人全員に拡大する。同行のチーフデータ&AIオフィサーであるRicardo Manjón氏によると、この取り組みは「日常的な生産性ツールでAIを活用し、分析の準備、情報の検索高速化、文書の要約、顧客との会話改善、社内プロセスの簡素化」を目的としている。
金額面での実績が具体的だ。サンタンデールは2026〜2028年の計画として、コスト削減と収益成長を合わせてAIで10億ユーロのビジネス価値を生み出す目標を2月の投資家向けイベントで発表している。Manjón氏はその進捗として、2025年第1四半期だけで3,500万ユーロを達成し、年度末までに2億ユーロに到達する見込みだと述べた。
「ロジックはシンプルだ。真に針を動かせるものに集中し、その影響を測定し、グループ全体でうまくいくものをスケールさせる」——Ricardo Manjón氏(サンタンデール公式ブログより)
使用ツールは目的別に複数を使い分け
サンタンデールは単一のAIベンダーに依存せず、用途に応じて複数のツールを使い分けている点が特徴的だ。
- Microsoft Copilot:従業員の日常的な生産性向上に活用
- OpenAI ChatGPT、Anthropic Claude、Google Gemini:より専門的な用途に対応
- その他、スタートアップや技術パートナーのAIも採用
コスト削減と自動化の観点では、現在280以上のプロセスエージェントを稼働させている。英国では音声チャネルへのAI展開を進めており、年間通話数の40%にあたる約24万件をセルフサービスで解決することを目標とする。これによってサービスチームの工数を4万5,000時間削減し、より複雑な対応に集中させる狙いだ。
データの外部共有はしない——セキュリティ方針も明示
複数の外部AIサービスを利用しながらも、Manjón氏はデータ管理の方針を明確にしている。「顧客データをサードパーティモデルの学習目的で外部共有することはなく、AI対応プロセスはセキュアな環境内で動作する」と述べており、倫理・法務・サイバーセキュリティ・リスクの各フレームワークの下で開発が進められているとしている。
金融業界全体でAI活用が加速
同記事によると、サンタンデールだけでなく、金融業界全体でAI活用への動きが加速している。LloydsBankの「Financial Institutions Sentiment Survey」では、93%の金融機関が今後5年間で最もインパクトのある技術としてAIを挙げた。
また同記事が別途言及しているように、HSBCはGoogle Cloudとの提携を通じて今後2年間で200以上のAIユースケースを追加する計画を明らかにした。推定価値が1億ドルを超える高優先度の施策に絞り込み、顧客体験のパーソナライズ、金融犯罪リスク管理、スタッフ向けAIエージェントの拡充などに取り組む予定だ。Google CloudおよびGoogle DeepMindのエンジニアとの協力体制も整える。
規模・速度・ガバナンスの3点を同時に追うサンタンデールのアプローチは、大規模金融機関がAI展開を「実験フェーズ」から「事業貢献フェーズ」へ移行させた事例として参考になる。
詳細はSantander extends staff access to AI as first quarter delivers €35m valueを参照していただきたい。




