6月22日、Computer Weeklyが「Lloyds Bank staff have taken 400,000 AI courses since January」と題した記事を公開した。英大手銀行ロイズ・バンキング・グループが全従業員を対象に推進するAI教育が、年初からわずか数ヶ月で40万件のコース受講を達成したという。教育の全員化に加え、エージェンティックAI専門職の大規模採用やアプレンティスシップの立ち上げなど、人材戦略の全体像が明らかになってきた。
40万件受講、AIリテラシー全員化への進捗
ロイズ・バンキング・グループは2026年1月、6万7,000人の全従業員を対象にAI教育を実施する計画を発表した。自社の「AI Academy」を通じて、2026年末までに全スタッフがAIリテラシーを習得することを目標としている。
その後の進捗報告によれば、約6万5,000人のスタッフがすでに合計40万件のコースを受講したという。全従業員数に対してほぼすべての人員が何らかの形でコースに触れている計算になる。
エージェンティックAIに300人を新規採用
教育面と並行して、同行はエージェンティックAI(Agentic AI)に特化した300の新規ポジションを創設した。エージェンティックAIとは、与えられた目標に対して自律的にタスクを計画・実行するAIシステムのことで、単純な質問応答にとどまらない応用が求められる領域だ。
300ポジションの内訳は、データサイエンティスト・AIサイエンティスト、エンジニア、責任あるAI(Responsible AI)スペシャリスト、AIプロダクトマネージャーなど。既存の社内人材と外部採用の両方で充当する方針だ。
すでに700人以上の社員がAIユースケースの開発に携わっており、その成果の一つとして、AI財務アシスタントがバンク・オブ・スコットランドの50万人の顧客に利用されている。
レベル6 AIエンジニアリング・アプレンティスシップの開始
技術人材の育成面では、33名のアプレンティス(見習い職員)が「レベル6 AIエンジニアリング・アプレンティスシップ」に参加することも発表された。英国の資格フレームワークにおけるレベル6は学士号相当にあたり、就業しながら高度な専門資格を取得できる英国独自の制度だ。採用規模こそ小さいが、即戦力の技術人材を内製で育てる長期的な布石と位置づけられる。
第1期生の一人、エマ・リチャーズ氏は次のように述べている。
「このアプレンティスシップを通じて、ソフトウェアエンジニアリングの実践的なスキルを積みながら、AIが日常業務をどうサポートできるかを学べます。実際のビジネス環境で、経験豊富な同僚のサポートを受けながら学びを適用できることが、自信につながると思っています。」
年次サマースクールも規模を拡大
ロイズは「Data and AI Summer School」も再始動させた。昨年は200セッションに9万件以上の登録があり、データリテラシー、可視化、機械学習、応用AIといったトピックを扱った。今年は250セッション以上に拡大する予定だ。
欧米間のAIスキル格差という背景
一連の取り組みが加速する背景には、欧州の金融機関が米国企業に対してAI人材育成で後れを取っているという構造的な問題がある。
Forresterが公開したレポートによれば、「正式なAI研修を受けた」と答えた従業員の割合は米国で52%、欧州ではわずか39%にとどまる。さらに、意思決定者の多くが「自社ではすでにAI研修を提供している」と誤認しているケースも多いと指摘している。
同レポートは効果的なAIスキル習得のアプローチとして、以下の配分を推奨している。
- **10%**:教室やオンラインによる正式な学習
- **20%**:ピアツーピア接続によるソーシャルラーニング
- **70%**:実務を通じたオンザジョブ経験
「この異なる学習アプローチを組み合わせ、相互に絡み合った『学習ファブリック』として織り込むことが重要だ」とレポートは述べている。全員研修・専門職採用・アプレンティスシップ・サマースクールを組み合わせるロイズの構成は、このモデルに近い形を実装しつつあると言える。
詳細はLloyds Bank staff have taken 400,000 AI courses since Januaryを参照していただきたい。




