6月22日、Help Net Securityが「Hundreds of AI-powered iOS apps found exposing credentials」と題した記事を公開した。AI機能を搭載したiOSアプリの多くがLLM APIのクレデンシャルを外部に露出しているという調査結果を伝えており、開発者・セキュリティ担当者にとって見過ごせない内容だ。
444本のアプリを分析、64%がクレデンシャルを露出
Wake Forest University の研究者が App Store に掲載された 38,000件以上のリストを精査し、LLM機能が確認された 444本のiOSアプリに絞り込んで調査を実施した。その結果、282本(64%) が悪用可能なクレデンシャルまたはバックエンドへのアクセス手段を露出していた。
影響を受けたアプリはライティング支援、生産性ツール、エンターテインメント、ライフスタイル、教育、ユーティリティ、ヘルス&フィットネスなど 13カテゴリに及ぶ。無名アプリだけの問題でもない。脆弱なアプリの 15%はユーザー評価が1,000件超で、最も人気のある影響アプリは 230万件以上の評価を持つ。
研究者はこう指摘している:
「LLM APIキーの漏洩は、iOSエコシステムにおける広範かつ構造的な問題だ。分析対象アプリの26%に影響しており、カテゴリや開発者の規模を問わず発生している」
なお、LLM搭載アプリは2025年に 170億ダウンロードを記録し、全モバイルアプリダウンロードの 13% を占めている。これほど普及した技術スタックに、これだけの割合で根本的なセキュリティ上の欠陥が存在するという事実は重い。
何が漏洩しているのか
露出の内訳は以下のとおりだ:
- 136本:認証トークンを露出
- 92本:認証なしでバックエンドにアクセス可能
- 54本:平文のAPIキーを露出
- うち 28本 では、AIサービスが使うシステムプロンプトも同時に露出
APIキーの漏洩手法は、ネットワークトラフィックの傍受によるもの(記事冒頭の図を参照)。アプリのバイナリやコード内にハードコードされたキーが、通信をインターセプトすることで取得できる状態になっていた。
「プロキシ構成にしてあるから安全」は通用しない
特に重要な知見が、バックエンド構成に関する分析だ。
脆弱なアプリのうち最多は 155本がカスタムバックエンド(開発者自身が運用するサーバー) 経由でLLMトラフィックをルーティングしており、67本がFirebase・Google Cloud Run・AWSなどのクラウドプラットフォームを利用、60本がAIプロバイダーに直接通信していた。
研究者は以下のように述べている:
「漏洩アプリの55%以上がカスタムバックエンドを経由してLLMトラフィックをルーティングしており、プロバイダー側の対策だけでは不十分だ。クラウドプラットフォームと直接API通信がそれぞれ23%・21%を占めており、プロキシ構成を採用してもクレデンシャルの露出は防げないことが確認された」
「APIキーを直接埋め込まずプロキシ経由にすれば安全」という設計思想は、実装が不適切であれば意味をなさない。
開示後も23%は未修正のまま
研究者は282本すべての開発者に対し、脆弱性情報を公表前に当事者へ通知して修正を促す慣行である「責任ある開示(Responsible Disclosure)」を実施し、90日後に再テストを行った。
結果、28%(約79本)は修正済み(クレデンシャルの失効またはアクセス制御の強化)。一方、23%(約65本)は依然として悪用可能な状態にある。内訳は、修正対応なしが 36本、認証実装が根本的に欠陥を抱えている状態が 30本 だ。
※残りの約49%については、元記事では修正済み・未修正以外の状態(開発者からの応答はあったが対応中、またはアプリが非公開化された等)として集計されている可能性があるが、本記事執筆時点では明示的な内訳が確認できていない。元記事および論文の詳細を参照されたい。
カテゴリ別では、脆弱なアプリ数でトップが生産性アプリ、次いでエンターテインメントとライフスタイル。漏洩率(カテゴリ内比率)では ヘルス&フィットネス が最高を記録した。
開発者が今日から確認すべきこと
本調査はiOSアプリに限定されているが、問題の本質はプラットフォーム固有ではない。LLMのAPIキーをクライアントサイドに持たせる実装、または不適切に保護されたバックエンド経由での通信は、同様のリスクをAndroidや他のプラットフォームにも生じさせる。
本調査の詳細な手法・データは、研究者が公開した論文「LLM API Credential Leakage in iOS Applications」(arXiv)にまとめられており、Help Net Securityの記事はその知見をもとに構成されている。
詳細はHundreds of AI-powered iOS apps found exposing credentialsを参照していただきたい。




