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AnthropicのAIモデルへのアクセス制限で米EU協議 — AIが地政学的資源となる時代の到来

6月26日、PYMNTSが「EU and White House Met on Anthropic Access Following Ban」と題した記事を公開した。米政府によるAnthropicの最新AIモデルへの外国向けアクセス制限を受け、EUとホワイトハウスが直接協議を行ったことを報じている。

6月26日、PYMNTSが「EU and White House Met on Anthropic Access Following Ban」と題した記事を公開した。米政府によるAnthropicの最新AIモデルへの外国向けアクセス制限を受け、EUとホワイトハウスが直接協議を行ったことを報じている。


米政府によるAnthropicモデルへのアクセス制限の経緯

米政府が外国の個人・企業に対し、Anthropicの最新AIモデルへのアクセスを制限したことを受け、EUとホワイトハウスの間で協議が行われた。Bloomberg Newsが6月25日(木)に報じた。

制限の対象となっているのは、Anthropicのモデル「Mythos」(開発コード名:Fable 5)だ。両者は同一モデルを指しており、「Fable 5」が内部開発コード、「Mythos」が公開名称にあたる。Anthropicの説明によれば、政府がこのモデルの"ジェイルブレイク"(安全機能の迂回)が可能であることを把握したことが発端だという。Mythosはサイバーセキュリティ関連タスクの実行を制限するよう設定されていたモデルだが、その制限を回避できることが確認された。Anthropicはその後、アクセス回復に向けて政府との交渉を進めている

米国内では、モデルへのアクセスは連邦政府省庁と一部の大手テック・金融企業に限定されている状況だ。一方でEU側は、6月初頭にEUサイバーセキュリティ機関(ENISAがMythosへのアクセスを付与されたばかりだった。ENISAはこのモデルにアクセスした初のEU機関であり、今回のアクセス制限措置はその直後に下されたかたちとなる。


EU側の主張:AI自律性の確保が急務

EUを代表してホワイトハウスとの協議に臨んだのは、欧州委員会の上級副委員長Henna Virkkunenだ。彼女はミラノでBloombergの取材に応じ、次のように述べた。

「私自身もトランプ政権に対してこの問題を提起した。また、Anthropicとも協議を行っている。」

Virkkunenが強調したのは、先進的なAIモデルがICT(情報通信技術)サプライチェーンの脆弱性検出に不可欠であるという点だ。同時に、単一企業や非欧州国への依存を減らし、EUが独自のAI能力を構築する必要性についても言及した。

欧州委員会はAIとサイバーセキュリティに関するアクションプランを策定中で、来月採択される予定だという。EUが10億ユーロ規模のAI推進計画を打ち出していることと合わせて見ると、今回の外交的摩擦がEUのAI戦略を加速させる一因になっていることがわかる。


EUのAI普及率:量は多くても「深度」が課題

こうした外交的緊張が高まる一方で、EUがAIへの依存度を急速に高めていることを裏付けるデータもある。報道の前日、欧州中央銀行(ECB)がEU域内企業のAI導入状況に関する調査を公表した。Mythosのようなモデルへのアクセス制限がEU企業に実質的な打撃を与えうることを示す文脈として押さえておきたい数字だ。

  • 調査対象企業の**70%**がAIを利用している
  • しかし、AIを「集中的(intensive)」に活用している企業はわずか7%
  • 2025年時点でAI未導入の企業の約半数が、2026年に投資を計画している

さらに興味深いのは、集中的なAI活用は大企業よりも小規模・新興企業に多いという点だ。規模が大きいほど導入率は上がるが、使いこなしている度合いは必ずしも比例しない。ENISAのような政府機関がAnthropicのモデルに頼り始めているという今回の事実は、こうした依存構造がすでに官民双方に広がっていることを示している。


まとめ

今回の一件は、単なるアクセス制限問題にとどまらない。米政府が安全保障上の懸念を理由に最先端AIモデルの輸出を事実上制限し、それに対してEUが外交ルートで反発した構図は、AIが地政学的な資源として扱われ始めていることを示している。EUが独自のAI能力強化を急ぐ背景にも、こうした構造的リスクへの認識がある。

詳細はEU and White House Met on Anthropic Access Following Banを参照していただきたい。