6月29日、Los Angeles Timesが「Nvidia's AI chip sales in China stall, as local chipmakers like Huawei take the lead」と題した記事を公開した。この記事では、米国の輸出規制を契機にHuaweiが中国AIチップ市場でNvidiaを逆転しつつある現状について詳しく紹介されている。
サプライチェーンの壁がNvidiaを締め出した
この市場変動の根本にあるのは、製造技術をめぐる地政学的な制約だ。
Nvidiaはオランダ・ASMLのEUV(極端紫外線)露光装置と、台湾・TSMCの製造能力を組み合わせることで世界最高水準のチップを実現している。中国はこのEUV装置の購入を禁止されており、最先端プロセスでの自製に構造的な制約を抱える。そこに米国の輸出規制が重なり、Nvidiaの最先端チップが中国市場に入れない状況が固定化しつつある。
Morningstarのアナリスト、Phelix Leeは「Huaweiへの急激なシフトは起こらない」と慎重な見方を示す一方で、Counterpoint ResearchのBrady Wang氏(台北拠点)は「NvidiaがChinaで販売できるかどうかにかかわらず、技術的自給自足を目指し最終的に輸出するという中国の戦略は変わらない」と指摘した。
市場シェアが逆転しつつある
こうした構造変化が、シェアという数字に如実に表れ始めている。
調査会社Bernsteinの推計によれば、2025年時点でNvidiaの中国AIチップ市場シェアは約40%で、Huaweiがほぼ同水準まで迫っていた。さらに同社は、2026年にはNvidiaのシェアが約8%まで縮小し、Huaweiが約50%に達すると予測している。これらはBernsteinの予測値であり、確定した実績ではない点に留意が必要だ。
NvidiaのCEOであるJensen Huangは、AP通信とのインタビューでこの変化を率直に認めた。
「輸出規制でNvidiaが中国から締め出される前、我々は約95%の市場シェアを持っていた。それまでは十分に競争できていた」
30年にわたる中国市場での蓄積が、輸出規制によって急速に失われた格好だ。
Huaweiの「Ascend 950」はH200に匹敵するか
業界アナリストによれば、HuaweiのAIチップ最上位製品「Ascend 950」シリーズは、NvidiaのH200と大まかに同等とみなせるという。ただし元記事はこの評価が具体的にどのベンチマークや指標に基づくものかを明示していないため、数字の詳細な比較には別途一次情報の確認が望ましい。H200はNvidiaのラインアップの中でも最も高性能な部類に入る製品だ。
Mercator Institute for China Studies(中国研究に特化した欧州のシンクタンク)で半導体を担当するAntonia Hmaidiは「Nvidiaは確実にHuaweiに大きな地盤を奪われており、現在は国内市場でHuaweiがリードしている」と述べている。
Huaweiは昨年9月、中国製半導体のみを使いながら数千チップを組み合わせた大規模AIコンピューティングクラスターの展開も発表した。Huaweiの半導体部門を率いるHe Tingbo氏は競合との比較について問われ、「かなり良いソリューションを見つけた」と述べつつ、「どちらが速く進めるかは時間が教えてくれる」と答えた。
それでもNvidiaは中国に必要とされている
ただし、Huaweiが全面的に置き換えたわけではない。
DeepSeek(OpenAIのChatGPTやAnthropicのClaudeと競合する中国のAIモデル)のような最先端AIのトレーニングには、依然としてNvidiaのチップが使われているとアナリストは指摘する。中国の大学や大手テック企業もR&D目的でH200を求めている。また、輸出規制を回避してNvidiaチップを中国に密輸しようとする事案が複数摘発されており、需要の根強さを示している。
なお、DeepSeekは2026年4月に公開した最新モデル「V4」をHuaweiのAscendチップに対応させたと発表しており、DGA-Albright Stonebridge GroupのパートナーであるPaul Triolo氏は「DeepSeekとHuaweiの間で将来のモデルを国産ハードウェア上で訓練するための協力が相当進んでいる可能性が高い」と述べた。
規模の差はまだ大きい
財務規模ではまだ大きな差がある。Nvidiaの直近通期売上高は約2,160億ドルで、Huaweiの同期間の売上高約1,260億ドルを大きく上回る。Nvidiaはグローバルではまだ成長が続いており、2025年5〜7月期の売上高は約910億ドルを見込む(中国データセンター向けを除く)。
ただし中国市場という一点においては、ハードウェア層での構図は明確に変わりつつある。Counterpoint ResearchのWang氏が指摘するように、中国の先端チップ製造能力が向上しコスト競争力が上がれば、東南アジアなどでも市場を広げる可能性があり、その影響はやがて中国外にも波及しうる。
詳細はNvidia's AI chip sales in China stall, as local chipmakers like Huawei take the leadを参照していただきたい。




