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ElasticとOpenAIが提携拡大 — 企業内の散在データをAIエージェントが検索・分析できる基盤を整備、トリアージ時間を数秒に短縮した事例も

7月30日、Elasticが「Elastic and OpenAI collaborate to bring frontier intelligence to unstructured enterprise data」と題した記事を公開した。ElasticとOpenAIが提携を拡大し、企業内の非構造化データにAIエージェントを接続するための基盤を整備する取り組みを詳述したものだ。注目すべきは具体的な数字で、トリアージ時間を10〜20分から数秒へ短縮したVisaの事例、そして入力トークン数を最大75%削減しながら回答精度を60%から92%に引き上げたという評価結果が示されている。

7月30日、Elasticが「Elastic and OpenAI collaborate to bring frontier intelligence to unstructured enterprise data」と題した記事を公開した。ElasticとOpenAIが提携を拡大し、企業内の非構造化データにAIエージェントを接続するための基盤を整備する取り組みを詳述したものだ。注目すべきは具体的な数字で、トリアージ時間を10〜20分から数秒へ短縮したVisaの事例、そして入力トークン数を最大75%削減しながら回答精度を60%から92%に引き上げたという評価結果が示されている。


「コンテキスト問題」をElasticsearchで解く

AIエージェントの実用性は、推論に使えるコンテキストの質に左右される。企業が持つ知識の大半は、ドキュメント、チケット、ログ、メトリクス、トレース、セキュリティアラートといった非構造化データに散在しており、しかもリアルタイムで変化し、アクセス権限も異なる。この「コンテキスト問題」こそが、今回の提携拡大の核心だ。

Elasticsearchは今回、エージェント向けのコンテキストレイヤーとして位置づけられる。具体的には、レキシカル検索とベクトル検索の組み合わせ、セマンティックリランキング、フィルタリング、アクセス制御を1つのプラットフォームで提供する。

Elastic社内の検索評価テストでは、Elasticsearchを組織記憶(organizational memory)として使用した場合にリコール0.89を達成し、ユーザー間のデータ保護も完全に機能したと報告されている。

コスト面でも具体的な数字がある。BrowseComp-Plusデータセットを使った実験で、Elasticのプリコンピューテッド・ナレッジインジケーター(Knowledge Indicators)を適用したところ、標準的なRAG(Retrieval-Augmented Generation)ベースラインと比べて入力トークン数を最大75%削減し、回答精度は60%から92%に向上した。Knowledge Indicatorsとは、頻繁に参照される文脈情報をあらかじめ計算・キャッシュしておくことで、エージェントがリクエストのたびに大量のドキュメントを検索・取得しなくて済むようにする仕組みだ。トークン削減はそのままAPIコスト削減に直結するため、エンタープライズ規模での運用では特に効いてくる。

Elastic Agent BuilderはOpenAIのモデルおよびエージェントと連携でき、ツールはMCP(Model Context Protocol)経由でOpenAIエージェントに公開可能だ。MCPはAnthropicが提案しAIエージェントコミュニティで広く採用が進む標準プロトコルで、エージェントが外部ツールやデータソースを統一的なインターフェースで呼び出せるようにするものである(仕様はこちら)。Agent SkillsはCodexから利用でき、GPTモデルを推論エンジンとして使う構成も取れる。


セキュリティ運用への適用:VisaとAirtelの事例

Elastic Securityは今回、SIEM・XDR・自動化を統合したエージェント型セキュリティオペレーションプラットフォームとして提示されている。アラートのトリアージ、証拠の相関分析、対応計画の作成をエージェントが担い、最終判断・承認は人間が行う構成だ。

OpenAIの最新フロンティアモデルと連携するAttack Discoveryは、バラバラなアラートを一貫した攻撃チェーンに束ね、MITRE ATT&CKフレームワークにマッピングし、影響を受けたユーザーとホストを特定してケースに紐づける。アナリストは数千件の生アラートではなく、証拠の裏づけされた少数の攻撃にフォーカスできる。

導入実績として2社の数字が示されている。

  • Visa:レガシーSIEMからElastic Securityへの移行時に初のエージェントSOCワークフローを構築。メインフレーム検知のトリアージ時間を10〜20分から数秒に短縮、かつ全AIの判断が監査可能な状態を維持。
  • Airtel(マネージドセキュリティチーム):Attack Discovery・Agent Builder・Automatic Importの組み合わせでトリアージ・分析を最大40%高速化、調査を30%高速化と報告。

また、Automatic Migration機能はSplunkやQRadarの検知ルールをElastic Security形式に変換する。既存SIEM資産の移行コストを下げる機能として、現場での関心は高い。


可観測性領域:OpenAI利用状況の監視も対象に

Elastic Observabilityは、ログ・メトリクス・トレースに加え、AIアプリケーション固有のシグナル(プロンプト、ツール呼び出し、モデルレスポンス、トークン使用量、取得ステップ)を1つのプラットフォームに集約する。

Elastic WorkflowsとAgent Builderで調査・修復を自動化し、アラート発火時には証拠の相関分析から根本原因の特定、推奨ネクストステップの提示まで一連の流れをエージェントが担う。

OpenAI基盤そのものの監視にも対応する。既存のOpenAIインテグレーションでAPIの使用状況メトリクスと組織の監査ログを収集でき、トークン消費量やAPIコールをアプリケーションの遅延・エラー・インフラ状態と同一クエリ言語で相関分析できる。さらに、OpenAIのCompliance Logs Platformへの対応を今後追加予定とされており、OpenAIワークスペース全体の活動を監査可能な形で一元把握できるようになる見込みだ。


今後のロードマップ

  • 開発者向けagent-skills(GitHubで公開中)がOpenAI CodexにElastic固有のガイダンスを提供。
  • セキュリティ向けOpenAI Daybreak Cyber Partner Programのメンバーとして、GPT-5.5 Cyberの推論能力をElastic Securityのエージェントワークフローに組み込む計画。アラートの相関分析、対応アクションの推奨、検知ルールの自動生成が対象。
  • SREチーム向け:Knowledge Indicatorsの一般提供開始後、生テレメトリから運用コンテキストをプリコンピュートし、ダッシュボード・トポロジーマップ・調査・修復ワークフローへのコンテキスト提供を強化する。

詳細はElastic and OpenAI collaborate to bring frontier intelligence to unstructured enterprise dataを参照していただきたい。