8月12日、The Next Webが「Target appoints its first chief AI officer as retailers scale up AI spending」と題した記事を公開した。米小売大手Targetが初のChief AI Officer(最高AI責任者、以下CAIO)を任命したというニュースだが、その背景には見逃せない数字がある。IBMの調査によれば、CAIOを設置する企業は1年で26%から76%へと急増しており、Targetの動きはむしろ業界では後発に属する。AI組織整備はすでに「標準」になりつつある。
TargetがCAIOを初設置——Lowe's幹部を招聘
TargetはChandhu Nairを上級副社長兼Chief AI Officerに任命した。Nairは8月24日付で就任する。彼はLowe's(米国の大手ホームセンターチェーン)で「ストア・データ・AI・イノベーション担当 上級副社長」を務めており、それ以前はStaplesやGapでのキャリアも持つ。
Nairはターゲットでの方針について「在庫管理や意思決定の高速化を含む、より統合されたアプローチ」と説明する。就任にあたっての声明は象徴的だ。
「最も意義深いAIの物語は、ラボで何が起きるかではない。現場で何が起きるか——買い物をいかに簡単にするか、チームメンバーにより良いツールを渡せるか、より自信を持ってビジネス判断を下せるか、新しいアイデアを素早く市場に出せるか——そこにある。」
CAIOはすでに「標準的な役職」になっている
Targetの動きは業界では後発に属する。IBMのInstitute for Business Valueの調査によれば、2026年時点で76%の企業がCAIOを設置しており、1年前の26%から大幅に増加した。さらに、CAIOを置く企業はAI投資からのリターンが5%高いという結果も出ている。
CAIOという肩書き自体、AI時代が生み出した新しい職種の一つだ。The Next Webは以前、AI evangelistやVibe Coderなど、AIが生み出した新職種についても報じている。
Targetが取り組むAI施策の実態
Targetはすでに複数のAI活用を進めている。
- Target Trend Brain:顧客が検索するスタイル・色・素材を予測する生成AIツール
- 会話型ギフト提案機能:昨年のホリデーシーズンに導入。買い物客がギフト選びに使う対話型インターフェース
ただし、この投資は業績が厳しい中での施策でもある。Targetは現在、顧客と投資家の双方を取り戻す局面にある。
競合も横並びで動く——そして中国はすでに先を行く
小売業界全体でAI競争が本格化している。
- Walmart:店舗とサプライチェーン全体にAIツールとエージェントを展開中
- Gap:2025年にGoogle Geminiとパートナーシップを締結
- Best Buy:OpenAIとGoogleの両社と提携
※編集部の考察:Walmartのリーダーシップ交代(Douglas McMillon→John Furner、2026年2月)とAI戦略の関連性については元記事の範囲外の情報であるため、ここでは言及を割愛する。
一方、中国ではすでに次のフェーズに移行しつつある。AlibabaやMeituan、JD.comは、検索バーに手を加えるのではなく、検索バーそのものを置き換える形でAIショッピングエージェントを大規模展開している。StripeのJohn Collisonもエージェンティック・コマースがショッピングを変革すると主張しており、業界の議論は「AIをどう使うか」から「AIエージェントが商取引をどう再定義するか」へと移りつつある。
CAIOの設置率が1年で26%から76%に跳ね上がったという数字は、組織としてAIをどう位置づけるかという問いが、もはや「検討課題」ではなく「実行フェーズ」に入ったことを示している。
詳細はTarget appoints its first chief AI officer as retailers scale up AI spendingを参照していただきたい。




