8月12日、The Next Webが「Upwork cuts full-year forecast as AI pressures its marketplace」と題した記事を公開した。AIによる自動化がフリーランスマーケットプレイス大手Upworkの事業を直撃し、同社が通期業績予想を下方修正した件について詳しく報じている。
AIが「仕事の流通市場」を侵食している
Upworkの株価は、月曜の時間外取引で最大21%下落し、火曜の終値は約15%安の8.39ドルとなった。年初来の下落率は50%超で、52週安値(7.44ドル)に迫る水準だ。
発端は業績予想の下方修正だ。2026年通期の売上高見通しを従来の7億6000万〜7億9000万ドルから7億3000万〜7億5000万ドルへ引き下げた。第3四半期の売上高見通しも1億7600万〜1億8400万ドルと、市場コンセンサスの約1億9400万ドルを下回った。
第2四半期の実績自体は悪くなかった。売上高は1億9170万ドル(前年比2%減)で市場予想を上回り、調整後EBITDAは12%増の6410万ドル、非GAAP EPSは0.41ドルだった。にもかかわらず株価が急落したのは、今後の見通しが投資家の不安を呼んだためだ。
数字が語る構造変化
業績の内訳に、問題の本質がある。
- グロスサービスボリューム(プラットフォーム上での取引総額):9億6640万ドル、前年比約4%減
- アクティブクライアント数:76万3000件、同4%減
CEOのHayden Brownは、この不振を「AIによる自動化の加速、労働市場の低迷、GoogleのSEOアルゴリズム変更による流入減」の三つで説明した。
特にAI起因の問題が深刻だ。基本的なライティング、翻訳、簡単なコーディングといった「ルーティン業務」がAIに代替されており、Upworkが自社で把握する限りグロスサービスボリュームの約10%がAIによる影響を直接受けると開示した。
ワシントン大学のXiang Hui、Oren Reshef両氏とニューヨーク大学のLuofeng Zhou氏がUpworkの実データを使って行った研究でも、ChatGPT公開後にライティング系フリーランサーの月間受注件数が2%、収入が5.2%減少したことが確認されている。画像系フリーランサーはさらに大きな影響を受けた。
同じパターンはライバルのFiverrにも見られる。Fiverrは2週間前に売上高前年比10%減、アクティブバイヤー数22%減を報告し、株価は約20%下落した。両社に共通するのは「顧客数は減っているが、残った顧客は単価の高い仕事に多く使っている」という構図だ。実際、Upworkのアクティブクライアント1社あたりのグロスサービスボリュームは過去最高を記録している。この「顧客の二極化」は、プラットフォーム型マーケットプレイスがAIによる業務代替を受けた際に生じやすいパターンとして注目されている。
Upworkの反論:AIは市場を「分断」しているだけだ
Upworkは手をこまねいているわけではない。同社はAI関連業務を最速成長セグメントと位置づけており、年換算で約3億3000万ドル(前年比22%増)、うちAIコンサルティングのサブセグメントは約50%増で推移している。
さらに、Claude・ChatGPT・CursorといったAIエージェントがUpworkのAPIを通じて人間のフリーランサーを直接雇用できる統合機能も立ち上げた。
Brown CEOの主張は「AIは仕事を消滅させているのではなく、市場を分断している」というものだ。AIが生成した成果物のレビュー、修正、完成を人間のフリーランサーに依頼するケースが増えているという。ただし、その主張と通期予想の下方修正は矛盾しており、投資家がどちらを信じたかは株価が示している。
リストラとアナリスト評価
Upworkはこれらの決算発表に先立つ5月、従業員の約4分の1にあたる145名を削減している。今四半期には1380万ドルの構造改革費用を計上した。
アナリストの評価は軒並み引き下げられた。各社の目標株価の修正幅は以下の通りだ。
- Needham:15ドル → 11ドル(Buy評価は維持)
- Goldman Sachs:17.50ドル → 11.50ドル
- RBC:9ドル → 8ドル
- Scotiabank:10ドル → 8ドル
数字の羅列だけでは伝わりにくいが、これらの引き下げに共通するのは「コアマーケットプレイスの回復シナリオを後退させた」という認識だ。NeedhamがBuy評価を維持しつつも目標株価を大幅に切り下げたのは、AIコンサルティング領域での成長余地を評価しながらも、短期的な収益圧力を無視できないという判断を反映している。
残された問題
AIが自社の最速成長セグメントを牽引する一方で、コアマーケットプレイスを侵食しているという矛盾。その矛盾を今回の予想引き下げが改めて浮き彫りにした。ルーティン業務の喪失をAIコンサルティングやエンタープライズサービスで補えるのかどうか、答えはまだ出ていない。
フリーランスプラットフォームに限らず、「人材の仲介・流通」を主業とするビジネスモデル全体が、生成AIの普及によって構造的な転換点を迎えている可能性がある。Upworkの今回の決算は、その問いをあらためて突きつける事例となった。
詳細はUpwork cuts full-year forecast as AI pressures its marketplaceを参照していただきたい。




