8月13日、RuntimeWireが「Alibaba releases open Qwen3.8 with 2.4T total, 95B active parameters」と題した記事を公開した。Alibabaが総パラメータ数2.4兆・1トークンあたり約950億パラメータを活性化するMoEモデル「Qwen3.8」のウェイトをオープン公開したという発表だ。同社がこれを「Qwen-Maxクラスで初めてオープン公開されたモデル」と位置づけるなど、オープンウェイトLLMの競争における一つの到達点として注目される。ただし公開されたチェックポイントには機能制限があり、ライセンス条件も精査が必要な状況だ。
2.4兆パラメータのMoEをオープンウェイトで公開
Alibabaは8月12日、Qwen3.8-2.4T-A95BのモデルウェイトをHugging Face上で公開した。同社はこれを「Qwen-Maxクラスで初めてオープン公開されたモデル」と位置づけている。
アーキテクチャの核心はスパースMoE(Mixture-of-Experts)だ。総パラメータ数は2.4兆だが、1トークンの推論ごとに活性化されるのは約950億パラメータにとどまる。92層のネットワーク内に512個のエキスパートを持ち、各推論ステップでは「ルーティングされた10個」と「共有1個」の計11エキスパートが動作する。格納容量は巨大だが、すべてのパラメータを毎回使うわけではない設計だ。
なお、比較の参考として、同じくスパースMoEを採用するDeepSeek-V3は総パラメータ約6,710億・活性化パラメータ約370億、Llama 3.1 405BはDenseモデルで405億パラメータ(全パラメータ常時活性化)という規模感だ。Qwen3.8は活性化パラメータベースではこれらを大きく上回り、スパースMoEとしても異例の規模感にある。※編集部の考察
コンテキスト長はネイティブで262,144トークン、拡張時は1,010,000トークンに達する。推論の深さはreasoning_effortパラメータでxhigh(デフォルト)・medium・lowから選択でき、preserve_thinkingで過去の推論コンテキストを保持する制御も備える。
対応フレームワークはHugging Face Transformers、vLLM、SGLang、TokenSpeed。このうちTokenSpeedはAlibaba/ModelScopeが開発する推論最適化フレームワークで、大規模MoEモデルの高スループット推論を主眼としたもの。他の汎用推論フレームワークと異なり、Qwen系モデルとの親和性が高い点が特徴だ。
ダウンロード版とクラウド版で機能差あり
公開されたチェックポイントはテキスト専用であり、常に「thinking mode(推論モード)」で動作する。画像・動画入力には非対応で、ドキュメント上のインターフェースから推論モードを無効化することもできない。
一方、Qwen Cloudで提供されるQwen3.8-Maxは以下を追加で備える:
- ビジョン入力(画像・映像)
- non-thinkingモード(推論ステップをスキップ)
- 組み込みツール群
- デフォルト100万トークンのコンテキストウィンドウ
インフラを自前で持てるチームにはダウンロード版、マネージドな推論が必要なチームにはQwen Cloudを案内する構成だ。
実用上の課題:サーブに必要なインフラ規模
RuntimeWireは今年6月、Qwen 3.6 27Bがローカルでのコーディング用途に実用的になったと報じた。それと比べてQwen3.8のスケールは桁違いであり、ウェイトの保存容量だけで膨大なストレージが必要になる。サービング時のメモリ・コンピュート・スループットを考慮すると、個人や小規模チームが手軽に動かせる代物ではない。
ベンチマークについても注意が必要だ。元記事が参照したリポジトリ内の比較データは、Qwen3.8-Maxのホステッド版を対象とした社内実施のものであり、ダウンロード版チェックポイントの独立した第三者評価は現時点で存在しない。実際の性能やコストは、自前でデプロイして初めて判明する。
ライセンスについて
元記事のURLにはenterprise-licenseというパスが含まれており、エンタープライズ向けのライセンス条件が設けられていることが示唆される。元記事内でもリポジトリにQwen3.8専用ライセンスファイルへのリンクが記載されているとのことだが、具体的な条文の内容については記事中で詳細に触れられていない。商用利用条件は必ず元リポジトリのライセンスファイルを直接確認すること。エンタープライズ用途での導入を検討する場合はとくに注意が必要だ。
LLMのオープンウェイト競争は2024年後半から加速しており、MetaのLlama系やMistralなどが先行してきた領域に、Alibabaが「Maxクラス相当」を投入してきた形だ。ただし「オープン」の範囲はモデルによって異なり、今回も機能差・ライセンス条件ともに精査が欠かせない。
詳細はAlibaba releases open Qwen3.8 with 2.4T total, 95B active parametersを参照していただきたい。




