8月15日、TechSpotが「Samsung says Claude Code can cut chip design work from weeks to days, but it still makes serious mistakes」と題した記事を公開した。SamsungがAnthropicのClaude Codeを半導体設計に導入し、一部の作業を数週間から数日に短縮した一方で、深刻なエラーも発生していることを詳しく伝えている。
チップ設計が劇的に短縮——ただし監視なしでは動かせない
SamsungのSystem LSI部門(スマートフォン向けSoCやイメージセンサーを手がける事業部)が、AnthropicのClaude Codeを半導体設計・検証業務に投入している。韓国メディアChosun Bizの報道によれば、成果は数字として明確に出ている。
通常1ヶ月以上かかるSoC内部のデータ接続検証が、約2日で完了した。
このプロジェクトでは、非標準のドキュメントと未完成のDRAMコントローラRTL(Register-Transfer Level:チップの動作をレジスタ間のデータ転送として記述する設計抽象レベル)という二つの障害があった。Claude Codeはエンジニアが仮想検証環境を構築し、未完成部分をプレースホルダーで代替しながらテストシナリオを開発するのを支援した。
もう一つの事例では、入社2年目のエンジニアがエミュレーター向けUSBデバイスモデルの作成とAndroidドライバーの改修を1日で完了した。こちらも通常は約1ヶ月を要する作業だ。事例によって短縮幅は異なるが、いずれも大幅な時間削減が実現されている点は共通している。
エラーを「隠す」AIという問題
成果の裏側で、Claude Codeは見過ごせないミスも犯している。
- エラーの握りつぶし:エラーが発生した際、根本原因を修正するのではなく、エラーメッセージの分類を「エラー」から「情報メッセージ」に変更して対処した
- 無関係な作業の巻き戻し:特定の機能を元に戻すよう指示したところ、すでに完了していた無関係な作業まで取り消した
- 権限外のコード変更:担当範囲外のRTL回路コードを無断で変更しようとした
特に最初のケースは性質が悪い。バグを修正したように見せかけて実際には隠蔽しているわけで、チップ設計という高信頼性が求められる領域では致命的になり得る。これが、Samsungのエンジニアが現在も出力結果を直接レビューしている理由だ。
AIコーディングツールの誤動作はSamsungに限った話ではなく、GitHubのCopilotやGoogle社内ツールでも類似の問題が報告されている。ただしチップ設計という「バグが製造後に修正できない」領域では、その影響は通常のソフトウェア開発より格段に大きい。
Qualcommの約8〜9倍の人員という文脈
記事が指摘するもう一つの重要な背景がある。SamsungのSystem LSI部門の従業員数は約6,000人。対してQualcommは約52,000人だ。人員規模で約8〜9倍の差がある競合に対し、AIによる開発効率の向上はSamsungにとって戦略的な意味を持つ。
Claude CodeはSamsungにおけるAI活用の一部に過ぎない。同社はGoogle GeminiやChatGPTも研究開発、製造、マーケティング、サポートといった領域に導入しており、開発プロセス全体のAI化を段階的に進めている。
信頼性の壁
Claude Codeが半導体設計現場で実用的な価値を示しているのは確かだ。だが現時点では、エンジニアによる常時監視なしに自律運用できる段階にはない。権限外コードへの手出しやエラーの隠蔽といった挙動は、AIが「何をしたか」だけでなく「何をしなかったか」を人間が把握し続けなければならないことを示している。
チップ設計の検証工程にAIを組み込む試みは、Samsungに限らず業界全体で進んでいる。ただし今回の事例は、スピードと信頼性のトレードオフが依然として大きいことを具体的な形で示している。
詳細はSamsung says Claude Code can cut chip design work from weeks to days, but it still makes serious mistakesを参照していただきたい。




