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AirTagで古書の行き先を追跡したら、Amazonの「本を裁断してAI学習に使う」施設に辿り着いた

8月17日、Emanuel(404 Media)が「We Tracked a Shipment of Rare Books. It Ended at an Amazon AI Training Facility」と題した記事を公開した。AirTagを仕込んだ希少本の荷物を追跡した結果、最終到着地はネバダ州ラスベガスのAmazon施設「LAS8」だった。そこでは書籍が裁断・スキャンされ、AIモデルの学習データとして利用されていた。

8月17日、Emanuel(404 Media)が「We Tracked a Shipment of Rare Books. It Ended at an Amazon AI Training Facility」と題した記事を公開した。AirTagを仕込んだ希少本の荷物を追跡した結果、最終到着地はネバダ州ラスベガスのAmazon施設「LAS8」だった。そこでは書籍が裁断・スキャンされ、AIモデルの学習データとして利用されていた。


AirTagを本に仕込み、行き先を追った

404 Mediaが今回の調査を実施した背景には、古書販売業者から相次いでいた「AIによる大量買い付け疑惑」があった。

2025年7月、古書販売マーケットプレイスの「Biblio」(希少本・絶版本を専門に扱う書籍マーケットプレイス)経由で約1,000冊もの大量注文が古書店に入った。注文者は匿名だったが、価格を一切気にしない買い付けパターンや膨大な注文量から、AI企業による買い付けが疑われていた。古書店のオーナーは404 Mediaから提供されたAirTagを荷物の中の1冊に忍ばせ、出荷に同意した。

追跡の結果、荷物はこのような経路を辿った:

  1. カリフォルニア州の空港に到着
  2. ウィスコンシン州・ミルウォーキー国際空港へ空輸
  3. ケノーシャ地域空港近郊の物流会社「Trifinity」(中西部を拠点とする物流会社)の倉庫で約2週間滞留
  4. トラックで西へ移動、コロラド州グランドジャンクション付近で一泊
  5. 最終到着地:ネバダ州ラスベガスのAmazon倉庫「LAS8」

LAS8はAmazonのプリントオンデマンド拠点として知られるが、その北端に別部門「VGT3」が存在する。VGT3の入口には、本を手に持ったティラノサウルスのロゴが描かれている。


VGT3で行われていること

VGT3の実態は、Amazonの従業員がオンラインフォーラムに投稿した内容から明らかになっている。

「ここVGT3ではひたすら本をスキャンするだけ。裁断担当と受け取り・バーコードスキャン担当に分かれている。レート(処理ノルマ)はあるけど、そんなにきつくない」

— Amazonワーカー向けフォーラムへの投稿

「VGT3での仕事は快適。やることは本のスキャンだけ。最高だよ」

— 同フォーラム別ユーザー

スキャン前に書籍のバーコード(ISBN)を読み取ることも確認されている。これは「ISBNのリストを元に、世界中のすべての印刷物を網羅的にスキャンしようとしている」という古書業者の仮説を裏付けている。ISBNを持たない極めて希少な本は大量注文に含まれないという観察とも一致する。

なお、2024年にはAmazonのセラー向けフォーラムで、「Amazon FC」という顧客名でVGT3宛ての直送注文が急増し、詐欺ではないかと疑う出品者も現れた。Amazon担当者が「注文は正規のもの」と回答している。


なぜ裁断するのか

本のスキャンは、背表紙を切断せずに行うことも技術的には可能だ。しかし裁断した方がコストと速度の面で有利なため、AI企業はあえてこの方法を選んでいる。

この手法が広く知られるきっかけとなったのは、著作者らがAnthropicを訴えた訴訟だった。Anthropicが「Project Panama」と呼んでいた内部プロジェクトの存在が明るみに出たことで、AI企業による書籍の大量取得・裁断・スキャンが注目を集めた。この訴訟の中間的な判断として、裁判官はAnthropicによるスキャン行為についてフェアユース(公正利用)に該当しうると判断している。その根拠の一つが「購入した物理的な本をデジタル化する行為は購入者の権利であり、原本を廃棄することで複製・転売が行われない」という点だ。ただし、この判断は最終判決ではなく、訴訟自体は継続中である点に注意が必要だ。

Amazonは本記事に対し「商業的なチャネルを通じて書籍を購入し、顧客が利用する製品・サービスの開発・改善に役立てている」とコメントした。しかし、裁断の理由、世界中の施設数、書籍廃棄への批判に対する見解については回答しなかった。


「AIは言葉の羅列としか見ていない」

今回追跡した荷物には希少本が含まれており、流通部数が少ない本や、話者の少ない言語で書かれた本が対象となっていた。記事では書名は伏せられているが、取材に応じた古書店のオーナーはこう語っている。

「価値にはさまざまな種類がある。金銭的価値はもちろん、歴史的価値、知的価値、感情的価値、その他いろいろ。でもAI企業はそういうものに一切関心がない。彼らが欲しいのはただの言葉の塊だ」

Amazonは自社のLLM群を「Nova」ブランドとして展開しており、Google・OpenAI・Anthropicと競合するフロンティアモデルと位置付けている。訓練データとして印刷物が重宝される理由は、インターネット上にはない情報が含まれていること、また2022年以前に出版された本であればAI生成テキストが混入していないことが保証されているためだ。AI生成テキストを学習させると「モデル崩壊(model collapse)」と呼ばれる品質低下が起きる可能性がある。

詳細はWe Tracked a Shipment of Rare Books. It Ended at an Amazon AI Training Facilityを参照していただきたい。