8月18日、Los Angeles Timesが「Nvidia's $105-billion bet on Ohio data center supercharges AI arms race」と題した記事を公開した。この記事では、NvidiaがオハイオのOpenAI向けデータセンターに最大1,050億ドルのリース保証を提供することで合意した件について詳しく報じている。
OpenAIのオハイオ拠点、規模は「最大8ギガワット」
NvidiaはOpenAIのためにオハイオ州パイク郡に建設される大規模なデータセンターキャンパスへの支援に合意した。財務申告書によれば、その支援規模は最大1,050億ドルに上る。
OpenAIはこの施設から最大8ギガワット(GW)のコンピューティング容量を確保する契約を結んだ。1ギガワットは米国の一般家庭で最大75万世帯分の電力に相当する数字だ。最初の800メガワットは2028年までに稼働開始の予定で、OpenAIは容量が利用可能になった段階から支払いを開始する契約となっている。
施設の建設・所有・運営を担うのはSoftBank Group傘下のSB Energy Corp.だ。Nvidiaはこの開発会社に対して別途15億ドルの直接投資も行う。
「循環取引」疑惑に対してNvidiaが明言
この取引で注目すべき論点は、規模よりもファイナンス構造にある。
NvidiaはこれまでもCoreWeaveなど急速にAIインフラを整備しようとする企業に対してローン保証(融資への債務保証)を提供してきた実績がある。またOpenAIやAnthropicに直接出資もしている。今回の最大1,050億ドルはリース保証、すなわちOpenAIが施設の賃貸料を支払えない場合にNvidiaが肩代わりする形の保証であり、CoreWeaveへのローン保証とは性質が異なる。いずれも財務諸表上は偶発債務として開示される点は共通しているが、両者を同列に論じる際には注意が必要だ。今回の保証は、こうした取り決めの中で同社史上最大規模となる。
この構造に対して市場では懸念の声がある。Nvidiaが他社に資金的な後ろ盾を与え、その会社がNvidiaのチップを購入するという「円環的な取引(circular financing)」ではないか、という疑問だ。偶発債務の積み上がりが財務リスクを高めるのではないかという点も指摘されている。
これに対してNvidiaは明確に否定している。「OpenAIがリースを支払う」と同社は声明の中で述べた。
なお、Bloombergはかつて、NvidiaがOpenAIへのデータセンターリース保証として最大2,500億ドル規模を検討していると報じていた。今回確定した1,050億ドルはその一部に相当する。
AIインフラ投資の「軍拡競争」を象徴する案件
AIモデルの高度化に伴い、推論・学習に必要なコンピューティングリソースは指数関数的に増加し続けている。データセンターの電力消費をめぐる競争は、チップ性能の競争と並行して激化する一方だ。このオハイオの施設は、構想通りに完成すれば世界最大級のデータセンターの一つとなる。
この巨大プロジェクトを政治経済的に後押しする文脈も見逃せない。施設のオーナーとなるSB Energy Corp.の親会社であるSoftBankは、創業者の孫正義氏がトランプ政権発足直後に5,000億ドル規模の米国投資計画「Stargate」をトランプ大統領とともに発表した経緯がある。NvidiaのJensen Huang CEOもStargateの主要パートナーとして名を連ねており、今回のオハイオ案件はその流れを汲むプロジェクトと位置づけられる。トランプ政権がこの投資を「大きな勝利」と称しているのも、こうした政治的な背景があってのことだ。SoftBank・Nvidia・OpenAIという三者が絡む今回の構造は、単なる商業取引を超えた政治経済的な連携の産物といえる。
Nvidiaにとっては、チップを販売するだけでなく、顧客のインフラ整備そのものを財務面で支えることで需要を創出するという戦略の一環でもある。今回の案件はその規模感と構造の両面で、現在のAIインフラ投資競争の到達点を端的に示している。
詳細はNvidia's $105-billion bet on Ohio data center supercharges AI arms raceを参照していただきたい。




