8月29日、テクノロジー専門メディア「WCCFtech」のライターRamish Zafarが「TSMC Bonuses Surge 50% and Outpace Revenue Growth, as SEC filings Expose the AI Talent War's Real Cost」と題した記事を公開した。TSMCが米SECへ提出した開示書類の読み解きを軸に、2025年第2四半期のボーナス支給額が売上高成長率を上回る伸びを記録したことを明らかにし、AI人材獲得競争が半導体大手の報酬体系に与えている影響を詳細に分析している。
ボーナスが売上成長を超えた——数字が示す現実
TSMCが米SEC(証券取引委員会)に提出した書類によると、2025年第2四半期に同社が支払ったボーナスはNT$360億(約1,700億円)で、前年同期のNT$240億から50.6%増となった。
※編集部の考察:元記事本文では前年同期比50.6%増と記載されているが、NT$360億とNT$240億の比較であれば約50%増の計算と整合する。なお本文中に「NT$350億から」と記述されているのは誤読・誤記の可能性があり、原文のSEC書類に照らした確認を要する。
一方、同期の売上高はNT$1.2兆で前年比36%増。ボーナスの伸び率が売上高の伸び率を明確に上回った形だ。
ボーナス総額はQ2の営業利益NT$7,660億の**約4.7%に相当する。なお2024年Q2時点ではNT$240億のボーナスが同期営業利益の5.2%**を占めており、利益に対する比率はやや低下している。つまりボーナスの絶対額は急拡大しているものの、利益規模の拡大がそれを上回っているという構図であり、「損益を動かした」というよりも「報酬コストの急増傾向が鮮明になった」と表現する方が実態に即している。
台湾の主要紙「United Daily News(UDN)」が従業員を取材したところ、ボーナスは28日に支給され「4ヶ月前の前回支給より増額だった」との声が上がった。TSMCは取材に対し、以下のようにコメントしている。
「TSMCは業界平均を上回る報酬と福利厚生を従業員に提供することを約束しています。外部競争・内部公平性・法令遵守を考慮しつつ、多様で競争力ある報酬体系を構築し、利益を従業員と分かち合う考え方のもと、人材の採用・定着・育成・動機付けに取り組んでいます。」
SK hynixが先行、業界全体で報酬競争が加速
半導体業界でボーナス競争が注目されるようになったきっかけの一つは、韓国のメモリ大手SK hynixだ。AIブーム以降、同社のボーナス支給額は急拡大している。2025年5月には第1四半期の業績に連動したボーナスが支払われたと報じられたが、その規模について元記事は具体的な金額の確定値を示しておらず、円換算の根拠も明示されていないため、ここでは詳細の引用を控える。関心のある読者は元記事および各報道を直接参照されたい。
さらに8月には、SK hynixが従業員の「おじ・おば」にまで慶弔支援を拡大するとの暫定合意が明らかになった。具体的には215ドルの弔慰金と2日間の休暇が支給される内容で、福利厚生の拡充が人材確保の手段として機能していることが見て取れる。
なぜ今、ボーナスが重要指標になるのか
AI向け半導体の需要急増により、先端プロセス技術者の争奪戦は激化している。TSMCは世界最先端のファウンドリ(半導体受託製造)として、NVIDIAやApple、AMDなどの主要顧客向けチップを製造しており、技術者の確保は事業継続の根幹に直結する。
SECへの定期開示書類にボーナス支給額が記載されるのは、TSMCがニューヨーク証券取引所にADR(米国預託証券)を上場しているためだ。ADRとは、外国企業の株式を米国市場で取引できるよう証券化した金融商品で、TSMCの場合はフォーム6-Kとして定期的に財務情報が開示される。TSMCの最新の決算情報はIR公式ページでも確認できる。こうした開示が競合他社や求職者にとって「報酬水準の物差し」として機能し始めている点は、採用市場に新たな透明性をもたらしている。
今回の数字が示すのは、AI人材獲得コストが「特別手当」の域を超え、企業の報酬体系に恒常的に組み込まれつつある現実だ。利益比率としては前年をわずかに下回るものの、絶対額での急拡大が続く限り、この傾向はより鮮明になっていくとみられる。
詳細はTSMC Bonuses Surge 50% and Outpace Revenue Growth, as SEC filings Expose the AI Talent War's Real Costを参照していただきたい。




