9月10日、The Next Webが「Google adds three features to its AI plans, and keeps a fourth for Americans」と題した記事を公開した。Googleは秋のアップデートとしてGeminiサブスクリプションに3つの新機能を追加したが、今回の発表で改めて浮き彫りになったのは「加わったもの」ではなく「依然として欠けているもの」だ。エージェント機能「Gemini Spark」がEU・英国で引き続き利用できない事実が確認され、しかもGoogleはその理由を一切説明していない。さらに、GoogleがDMA(デジタル市場法)に基づき欧州委員会と交わした合意内容と、この除外措置が論理的に矛盾するという問題まで浮上している。
Gemini Sparkとは何か、そしてなぜEUで使えないのか
Gemini Sparkは、Geminiサブスクリプションに含まれるエージェント機能だ。Chromeブラウザや保存済みパスワード、ログイン済みアカウントへのアクセス許可を与えることで、物件の内見予約や航空券の予約手続きといった「ウェブ上の雑用」を代行する。支払いを伴う操作には人間の最終確認が必要になる仕組みだ。なお、Googleが別途提供する「Gemini Live」はリアルタイム音声会話機能であり、Sparkとは異なる機能として位置づけられている。
このSparkは、欧州経済領域(EEA)・スイス・英国・ナイジェリアでは販売されていない。Googleが160か国以上に展開を拡大した2024年7月の時点で、これらの市場は除外されていた。そして今もGoogleはその理由を公表していない。
秋の新機能アップデート:EUでも使える3つ
Googleは公式ブログで、以下の機能追加を発表した。EUを含む多くの市場でも利用できる。
- 音声機能(Voice):GmailとKeepはAI Plus・Pro・Ultra向け、DocsはProとUltra向けに対応
- Google Pics:画像編集ツール。Pro・Ultra向け
- Sheetsのキャンバス機能:スプレッドシート上でミニアプリを構築できる機能。Pro・Ultra向け
これら3機能は欧州ユーザーにも開放される。一方、今回のアップデートで最も前面に押し出されているSparkは、米国のProおよびUltraサブスクライバー限定だ。米国ユーザーはSparkによるWebタスク処理、写真編集、アルバムのキュレーションが利用可能になる。
同じ料金で機能が少ない欧州ユーザー
問題はここだ。欧州のユーザーは米国と同じプランを同じ価格で購入しながら、目玉機能を使えない。
- AI Pro:月額19.99ドル
- AI Plus:月額4.99ドル
類似の状況はAppleにも見られた。EU向けに再設計されたSiriの一部機能の提供が見送られたケースだ。ただしAppleは、EUの規制当局が「競合アシスタントに自社と同等のシステムアクセスを提供すること」を要求したためとして、理由を明確に説明した。Googleは何も説明していない。 この非対称性が、単なる展開の遅れではなく意図的な除外ではないかという疑念を強めている。
DMAとの矛盾
この沈黙は、Googleが欧州委員会と交わした合意内容を考えると余計に奇妙だ。
GoogleはDMA(デジタル市場法)に基づく和解の一環として、2027年7月までに競合アシスタントがAndroid上でGeminiと同等の機能に到達できるよう開放することを約束している。
だが「同等」の基準となるべきGemini Sparkが欧州で提供されていない以上、競合他社が何を目標に機能を拡充すればよいのか、比較の基準自体が存在しないことになる。DMAの救済措置は、まさにそのような比較を可能にするために設計されたはずだった。「同等のアクセスを保証する」と約束しながら、その比較対象をそもそも欧州市場に持ち込まないのであれば、約束の実効性は著しく低下する。
The Next Webは今回の発表の2週間前、Gemini Liveの発表時点では欧州向けの除外について言及がなかったと指摘していた。今回の発表が事実上その「除外の公式確認」となった形だ。GoogleがいつSparkの欧州展開について説明するのか、あるいは説明しないままなのか、規制当局の動向とあわせて注目される。
詳細はGoogle adds three features to its AI plans, and keeps a fourth for Americansを参照していただきたい。




