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Salesforceが営業・サポート向けAIエージェントを一斉投入 — 数週間の商談を複数セッションまたいで継続管理できる「長期記憶エージェント」が登場

9月12日、SiliconAngleが「Salesforce introduces new AI agents to automate sales, support tasks」と題した記事を公開した。Salesforceが営業・サポート・社内業務向けに複数のAIエージェントを一斉発表したというニュース自体は他社の動向と似て見えるが、今回の発表で際立つのは「Long-Horizon Runtime」と名付けられたモジュールの存在だ。一般的なLLMエージェントがセッション単位でコンテキストをリセットしてしまう構造的な弱点を、ステートフルな長期タスク管理で正面突破しようとする技術的な試みであり、エンタープライズAIエージェント市場において一つの実装指針を示すものとして注目に値する。

9月12日、SiliconAngleが「Salesforce introduces new AI agents to automate sales, support tasks」と題した記事を公開した。Salesforceが営業・サポート・社内業務向けに複数のAIエージェントを一斉発表したというニュース自体は他社の動向と似て見えるが、今回の発表で際立つのは「Long-Horizon Runtime」と名付けられたモジュールの存在だ。一般的なLLMエージェントがセッション単位でコンテキストをリセットしてしまう構造的な弱点を、ステートフルな長期タスク管理で正面突破しようとする技術的な試みであり、エンタープライズAIエージェント市場において一つの実装指針を示すものとして注目に値する。


注目は「長期タスクに対応する」営業特化エージェント「Hunter」

今回の発表で最も技術的に興味深いのが、B2B営業向けエージェント「Hunter」だ。

Hunterはリード(見込み顧客)の発掘、アウトリーチメールの作成、プレゼン準備、提案書の生成といった営業ワークフローを自動化する。ここまでなら既存のAIアシスタントとさほど変わらないが、Salesforceが特に強調するのが「Long-Horizon Runtime(長期ホライズン・ランタイム)」と呼ばれるモジュールだ。

B2Bの商談はクローズまでに数週間を要することも多い。このランタイムは、エージェントが長期的な作業計画を立て、複数のチャットセッションをまたいでデータを再利用できるようにする仕組みだ。一般的なLLMベースのエージェントはセッションごとにコンテキストがリセットされる課題を抱えているが、このモジュールによってステートフルな長期タスク実行を実現している。エンタープライズ用途では「複数週にまたがる商談の文脈を維持できるか」が実用性の分水嶺となりやすく、この点でHunterは他社の汎用エージェントとは異なるアプローチを取っている。

現時点ではHunterのみに搭載されており、Salesforceは今後他のエージェントへの展開を予定していると述べている。


各エージェントの役割

Hunterのほか、今回は用途別に細分化された複数のエージェントが発表された。

営業チーム向け:

  • Piper:企業サイトに組み込み可能。B2B見込み客を迎え入れ、適切な営業担当者へ誘導する。
  • Carter:ECサイト向け。消費者の商品に関する質問に答え、チャット内でのチェックアウトウィジェットも備える。

カスタマーサポート向け:

  • Casey:返品対応などの処理を自動化する。
  • Fin:同様のサポート用途向け。元記事によると、SalesforceがFinというスタートアップを36億ドルで買収(2026年6月)して得た技術をベースにしているとされている。

社内業務向け:

  • Paige:社内ヘルプデスク向け。従業員のHR質問やITサポート対応を担う。
  • Marshall:サプライチェーンチームの繰り返し業務を自動化する。

役割の細分化は、単一の汎用エージェントに多様な業務を委ねるアプローチとは対照的な設計思想だ。業務コンテキストに特化させることで精度と信頼性を高めようとする意図が読み取れる。


Agent ScriptとMulti-Agent Orchestration

開発者目線で押さえておきたいのが、エージェントのカスタマイズ構文「Agent Script」だ。重要な処理フローをエージェントに強制させる記述が可能で、Salesforceはこれによってハルシネーション(AIの誤出力)リスクを低減できるとしている。エージェントの自律性と制御性のトレードオフに対する実装上の答えの一つとして注目したい機能だ。

また、既存ツールであるAgentforce Coworkerも今回アップデートされた。目玉は「Multi-Agent Orchestration」で、複雑なタスクを複数の専門サブエージェントに分割して処理させる機能だ。加えて、サブエージェントの出力品質を継続的に最適化する機能と、タスクの実行方法をワーカーがカスタマイズしやすくする「AI Skills」も追加された。


発表時期と今後のスケジュール

今回発表された機能の多くは即日一般提供(GA)が開始されており、残りは2026年内に順次リリース予定だとされている。

SalesforceはAgentforceプラットフォームのAIエージェント化を着実に進めており、今回の発表はエンタープライズSaaSの「エージェントレイヤー」化という大きな流れの中に位置づけられる。MicrosoftのCopilot for Sales、HubSpotのBreeze AIなど、CRM領域でのAIエージェント競争が激化する中、Salesforceが取った戦略は「役割の細分化」と「長期ステート管理」という二軸での差別化だ。Long-Horizon Runtimeのように技術的な課題に正面から取り組んでいる点は、今後他社がどう追随するかという観点でも注視しておきたい。なお、AgentforceについてはSalesforce公式のAgentforce概要ページも参照すると全体像を把握しやすい。

詳細はSalesforce introduces new AI agents to automate sales, support tasksを参照していただきたい。