9月17日、TechTargetが「Gemini 3.8 Live Transforms Conversational AI」と題した記事を公開した。Googleが9月15日に発表した音声AIモデル「Gemini 3.8 Live」と「Live Extended Thinking」は、推論中も会話を止めないという設計思想を持つ。従来の音声AIが「質問→停止→回答」という構造を前提としていたのに対し、モデルがバックグラウンドで推論しながら会話を継続できる点が、開発者・アナリストコミュニティで技術的な関心を集めている。
会話を止めずに推論する、という設計思想
従来の音声AIは「質問→停止→回答」という流れが基本だった。ユーザーが何かを尋ねると、モデルが処理を終えるまで会話が止まる。Gemini 3.8 Liveはこの構造を変える。
テクノロジーアナリストのSid Nag氏(Tekonyx創業者)は次のように説明する。
「モデルはバックグラウンドで推論しながら、会話を継続させる設計になっている。推論している間も会話を"生かしておける"。リアルタイムで処理しており、止まって別の答えを返すのではない」
これはユーザーの操作から応答までの遅延(インタラクティブレイテンシ)と、モデルが情報を処理するのにかかる総時間(推論レイテンシ)を、設計上切り離すという考え方だ。なお、この2つの概念の呼称は元記事中に登場する用語ではなく、本稿で説明のために整理したものである。両者を切り離すことで、モデルが「速さか、深い思考か」を選ぶ必要がなくなる。
この方向性はGoogleだけが追っているわけではない。OpenAIのRealtime APIやGemini 2.0 Live APIなど、音声対話をリアルタイムで処理する取り組みは業界横断で進んでいる。Gemini 3.8 Liveはそこに「推論の深さを保ったまま会話を継続する」という設計を加えた点で、一歩踏み込んだアプローチとなっている。
2モデルの構成と主な機能
GoogleはGemini 3.8 LiveとLive Extended Thinkingを2025年9月15日に発表した。いずれも音声エージェント向けで、以下の機能を備える。
- 音声ストリーミングを続けながら、APIやツールの呼び出しを並行実行
- ライブ映像入力に対応し、ユーザーが見ているものと発話を同時に理解
- 97言語以上をサポート
- 会話をリアルタイムで中断・割り込みが可能
Extended Thinkingバージョンには「Configurable Thinking(設定可能な思考)」機能が追加されており、モデルの内部推論をオン・オフ切り替えられる。推論深度をユースケースに応じて調整できる点は、エンタープライズ用途で実用的だ。
なお、今回の音声モデルは、基盤モデルであるGemini 3.8 Flash・3.8 Cyberが発表されてから約2週間後のリリースとなる。Gemini 3.8 Flash・3.8 Cyberの発表は2025年9月1日前後であり、音声特化モデルはその後継としての位置づけとなっている。
「プロンプト→応答」ではない会話設計
Futurum GroupのアナリストBradley Shimmin氏は、このモデルのアーキテクチャが従来のプロンプト応答型とは異なる点を強調する。
「アーキテクチャの設計上、多様な動作にカスタマイズできる。ユーザーはプロンプト・レスポンスの形式で対話するのではなく、普通の会話に近い形でやり取りできる。リアルタイムで割り込んで文脈を注入できるが、モデルが行っていることを中断させない」
Shimmin氏は、Appleがすでに「メモ」「ボイスメモ」などの生産性アプリでリアルタイム文字起こしを提供しており、Googleはそこに追いつきつつあると指摘する。ただしGoogleの実装は「ユーザーとAIの対話の仕方そのものを変える」点で一歩踏み込んでいると評価する。
想定されるエンタープライズ用途
Nag氏は、このモデルの活用先として以下を挙げている。
- カスタマーサポートチャットボット
- 営業プロセス
- テキスト・音声・映像を組み合わせたマルチモーダルなエージェントアプリケーション
伝統的な翻訳ユースケースにも対応するが、Googleはそれにとどまらない設計を意図している、とShimmin氏は述べている。開発者向けのAPIアクセスについては、Google AI StudioおよびGemini APIを通じて提供される。
詳細はGemini 3.8 Live Transforms Conversational AIを参照していただきたい。




