9月17日、Euronewsが「Novo to use Anthropic's Claude to advance AI drug discovery」と題した記事を公開した。GLP-1受容体作動薬「Ozempic」で知られるデンマークの製薬大手Novoが、AnthropicのClaudeを創薬R&Dに採用する。注目すべきは、Novoにとってこれが初のAI提携ではない点だ——同社はすでにOpenAIとも提携しており、競合するLLMプロバイダーを並行活用するという、製薬業界では異例の戦略を打ち出している。通常10〜15年を要するとされる新薬開発のサイクルを、AIがどこまで圧縮できるかが問われている。
OzempicのメーカーがAnthropicと組んだ
Novo(「Ozempic」などのGLP-1受容体作動薬の開発元として知られるデンマークの製薬大手)は、Anthropicとのパートナーシップを締結し、創薬R&DへのAI活用を本格化させる。
今回の核心はClaude Scienceの活用だ。Claude Scienceは元記事中でAnthropicの科学分野向けの取り組みとして言及されているが、その詳細な定義や構成については元記事の記述に基づいている。研究者が複雑な生物学的データや論文を扱う際の推論・理解の支援を目的としたものと紹介されている。
NovoのCEO、Mike Doustdar氏は発表のなかで「AIツールは生産性向上にとどまらず、まったく新しい科学的機会を提供できる。人体の生物学的メカニズムや薬効の理解を深めることに貢献する」と述べている。
Anthropic共同創業者・CEOのDario Amodei氏は、「AIの能力向上により、1世紀分の生物学・医学的ブレークスルーを10年に圧縮できる可能性がある」とコメント。信頼できるフロンティアモデルへのアクセスにより、研究タイムラインの短縮と治療薬の発見が加速できると主張している。
この発言は、製薬業界の現実と照らし合わせると重みがある。新薬が候補化合物の探索から承認・市場投入に至るまでには、通常10〜15年の開発期間と数十億ドル規模のコストがかかるとされる。Anthropicの主張通りにこのサイクルが短縮できるとすれば、ビジネス上のインパクトは計り知れない。ただし、AIが実際に臨床試験の成功率や承認スピードにどう影響するかは、現時点では実証段階にある。
NovoのAI戦略:Anthropicは「2社目」
今回の提携で最も注目すべき点は、NovoにとってAnthropicが初のAIパートナーではないことだ。
Novoは2026年4月にすでにOpenAIとの提携を発表している。元記事によれば、このOpenAIとの提携では創薬プロセスへのAI活用が目的とされており、複雑なデータセットの解析や創薬候補の探索、研究から患者アクセスまでの期間短縮が想定されている。※なお、元記事中に「GPT-Rosalind」というモデル名が明示されているかどうかは本記事執筆時点で確認できていないため、OpenAIとの提携内容の詳細は元記事および関連一次情報を参照していただきたい。
つまりNovoは、OpenAIとAnthropicという競合するLLMプロバイダーを創薬パイプラインに並行して組み込むという戦略を取っている。特定ベンダーへの依存を避けながら、それぞれの強みを使い分けようという意図が読み取れる。こうした複数AIプロバイダーを並行活用するアプローチは、製薬業界における今後の標準的な調達戦略になりうる。
また、インフラ面でも整備が進んでいる。2024年にはNovo Nordisk財団がNvidiaおよびデンマーク輸出投資基金(EIFO)と連携し、デンマーク初のAI対応スーパーコンピュータ「Gefion」を中核とするデンマークAIイノベーションセンターを設立している。大規模なAI計算基盤を自国に持つことは、外部プロバイダーとの提携を補完する重要な要素となる。
Anthropicのライフサイエンス展開
Anthropic側にとっても、製薬・ライフサイエンス分野への進出は戦略的な優先事項となっている。
2026年5月には、大手製薬企業Bristol Myers Squibb(BMS)とのコラボレーションを発表。BMSではClaudeを研究・臨床開発・製造・商業・コーポレート機能にわたって横断的に展開しているとされる。
今回のNovoとの契約は、Anthropicがライフサイエンス分野での導入実績を着実に積み上げている流れの一環だ。OpenAIもMicrosoft経由でライフサイエンス向けのAZ(AstraZeneca)連携などを進めており、フロンティアLLMプロバイダー間で製薬大手の囲い込み競争が激化している構図が見える。
総括:10〜15年サイクルは縮まるか
創薬分野へのLLM適用は、「文書要約」や「論文検索の効率化」といった補助的用途から、「科学的推論の支援」という中核的な研究プロセスへとシフトしつつある。
Novoが複数のAIプロバイダーと積極的に提携を重ねる背景には、新薬開発の通常10〜15年という長い開発期間をいかに圧縮するかという切実な経営課題がある。Amodei氏の「10年で1世紀分のブレークスルー」という主張が現実のものとなるかどうかは、今後の臨床成果が証明することになる。Novoのような大手製薬企業がAIを実際の研究パイプラインに組み込み始めたこと自体が、業界全体の転換点を示す事例として注目される。
詳細はNovo to use Anthropic's Claude to advance AI drug discoveryを参照していただきたい。




