9月19日、PYMNTS.comが「Anthropic Targets November IPO as Revenue Surges」と題した記事を公開した。AnthropicがIPOを11月に計画しており、収益が急拡大していることが報じられている。
11月IPOへ、時期を後ずれさせた理由
ウォール・ストリート・ジャーナルの報道によると、AnthropicはIPO(新規株式公開)の時期を、多くの投資家が予想していた10月から11月へと変更した。この時期変更は、第3四半期の財務データを開示できるタイミングに合わせた可能性が高い。
IPOの際、企業は通常、直近の財務実績を投資家に示す必要がある。第3四半期(7〜9月)の数字をプロスペクタス(目論見書)に盛り込むためには、その集計・監査が完了した後でなければ開示できない。好調な四半期データを手元に揃えてから投資家への説明を行うのは、上場価格の引き上げを狙う上で標準的な戦略だ。第3四半期の業績は好調が見込まれており、IPO前に投資家へ示せる数字として戦略的な意味を持つ。
ニューヨーク・タイムズの報道(Bloombergが引用)によると、Anthropicの年換算収益(revenue run rate)は2025年末時点の約90億ドルから、2026年7月末には約650億ドルへと急増している。約7ヶ月で7倍以上に膨らんだ計算だ。
※編集部の考察:この数字(90億ドル→650億ドル)はPYMNTS.comが元記事で報じている通りだが、650億ドルという水準はOpenAI(2025年時点のrun rateが約340億ドルと報じられている)をも大きく上回る。元記事の数字がmillion(百万)とbillion(十億)の混同、あるいはannualized projectionの計算基準の違いによる可能性も否定できず、今後の続報で確認が必要だ。
IPO規模は史上最大級の可能性
今回のIPOは、規模の面でも前例のない水準になりうる。報道では、Anthropicの企業価値(バリュエーション)は約2兆ドルと評価される可能性がある。
※編集部の考察:調達額「最大1,000億ドル」という数字も元記事に記載されているが、これはIPOによる調達額(proceeds)としては前例がない水準であり、企業価値(valuation)との混同が生じている可能性がある。元記事の表現を忠実に紹介しつつも、読者は数字の解釈に注意されたい。
Anthropicは2026年6月1日に秘密裏のIPO申請(confidential filing)を行ったことを発表済みだ。confidential filingとは、米SEC(証券取引委員会)の制度で、一定規模の企業が上場前に財務情報を非公開のまま審査を受けられる手続きを指す。この段階では具体的な財務数字は公開されず、正式な上場申請(S-1の公開)が行われて初めて詳細が明らかになる。具体的な上場タイミングは市場環境などの要因に依存するとしていた。
背景:GoogleとAmazonが支えるAnthropicの資金調達
Anthropicは、OpenAIの元幹部であるDario Amodei氏とDaniela Amodei氏らが2021年に創業したAI安全性重視の企業だ。上場前の資金調達においては、GoogleとAmazonが主要な出資者として知られており、両社はそれぞれ数十億ドル規模の投資を実施している。Googleは2023年以降、最大で20億ドル規模の出資コミットメントを行ったと報じられており、AmazonはAWSとの連携も絡めた形で最大40億ドルの投資を発表している(各社の最終的な出資総額は公式には確認されていない)。
こうした大手テック企業からの出資は、Anthropicのビジネスの裏付けとして機能する一方、上場後の株主構成や独立性に関する議論を呼ぶ可能性もある。
OpenAIとの対比:上場レースの行方
同じくAI大手のOpenAIも2026年6月8日に秘密裏のIPO申請を発表しているが、CEOのSam Altmanは9月11日にFortuneへのインタビューで「2026年中のIPOは行わない」と明言した。「AIの安全性に対する懸念が高まっている今、上場に踏み切るのは賢明ではない」とも述べている。
この発言により、2026年内にAI主要プレイヤーとして上場を果たすとすればAnthropicが先行する形となる。ただし、Anthropic自身も、AIが急速に発展することへの社会的な懸念が高まる中でのIPO計画という点で批判を受けうる立場にある。今回の11月という日程は、そうした議論が活発化する以前に決定されていたと報道は伝えている。
「AIの鈍化」懸念はIPOの障害になるか
足元では、フロンティアAI(最先端の大規模AIモデル)の開発スピードが鈍化するのではないかという議論が業界内外で起きている。これがAnthropicのビジネスに与える影響を懸念する声もある。
ただし、PYMNTS.comが9月17日に報じた専門家の見解では、フロンティアAIの鈍化が技術の導入を止めるとは考えにくいとされている。Savvi AIのCEO兼共同創業者であるMaya Mikhailovは次のように述べた。
「企業は、新しいモデルがなければAIの導入を止めるわけではない」
— Maya Mikhailov(Savvi AI CEO)
まとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| IPO予定時期 | 2026年11月(変更の可能性あり) |
| 想定企業価値 | 約2兆ドル |
| 収益run rate(2025年末) | 約90億ドル |
| 収益run rate(2026年7月末) | 約650億ドル(※数字の解釈に注意) |
| confidential filing実施日 | 2026年6月1日 |
| 主要出資者 | GoogleおよびAmazon |
なお、Anthropicはコメントの要請に対して回答しておらず、上場タイミングは今後変わる可能性があるとも報道は留保している。
詳細はAnthropic Targets November IPO as Revenue Surgesを参照していただきたい。




