9月19日、Mixed Newsが「Anthropic says Claude led 26% of its own AI research work in August」と題した記事を公開した。Anthropicが自社AI研究開発の26%をClaudeに「主導」させているという自己報告と、その測定方法の詳細を紹介している。
ClaudeがAnthropicの研究を「主導」——その実態
Anthropicは9月17日、自社のAI開発ペースを測定したレポートを公開した。その中で最も目を引く数字が、2026年8月時点でClaudeが同社のAI研究開発タスクの26%を「主導(leads)」しているというものだ。
ただし、この26%が「Claudeが研究の4分の1を単独でこなしている」を意味するわけではない。Anthropicが使用しているのは、AIトレンドを研究する独立機関Epoch AIが開発した自動化レベルのスケールだ。AL0(AI関与なし)からAL5(完全自律)の6段階で定義されており、「主導」はAL4に相当する。
AL4の定義は「高レベルの指示から大部分のタスクをエンドツーエンドで完了できるが、人間が監督する」状態だ。Anthropicが示した例は、夜間データパイプラインの障害対応。Claudeが障害を特定・修正しレポートまで作成するが、最終的に修正をデプロイするかどうかはエンジニアが判断する。AL5(完全自律)の領域はゼロとしており、「主導」と「自律」の間には明確な線が引かれている。
この26%という数値は、2026年2月の1%未満から8ヶ月で急増したものだ。また、測定対象全体の90%以上がAL3(「AIが協働する」)以上に達している。なお、以降で言及する研究シェアおよびエージェント数の数値は2026年8月のデータ、コンピュート配分は7月のスナップショットに基づくものであり、測定期間が指標によって異なる点には注意が必要だ。
測定方法と、Anthropicが自ら認める課題
この数値の信頼性を考える上で重要なのが、測定にClaudeを使っているという点だ。
Anthropicは対象部門のスタッフの20%を毎週サンプリングし、ClaudeエージェントにそのスタッフのタスクをSlackや内部ドキュメントから洗い出させ、別のClaudeを「審判(judge)」として自動化レベルを評価させている。
Anthropic自身もこの弱点を認めている。審判モデルが「評価対象モデルと同じ種類のエラーを犯す可能性がある」と明記しつつ、「審判がスタッフの評価と完全一致した割合は59%、スタッフ同士が一致した割合は35%だった」として、それでも人間より精度は高いと主張する。
自社モデルで自社システムを評価し、現時点では第三者による独立した検証がない——この点は数値の読み方に注意を要する。ただし、Anthropicはレポートの中でこの課題を自ら明示したうえで、将来的に独立した第三者評価者を内部システムへのアクセス付きで招聘し、定期的に公表する計画を示している。限界を認識し改善計画を提示していること自体は、透明性の観点で評価できる姿勢といえる。
30,000エージェントが稼働、ブロック率は0.002%
レポートには、エージェントの監視に関する数値も含まれている(以下は8月のデータ)。
2026年8月時点で、Anthropicの最も使われている内部プラットフォームでは常時約30,000のエージェントが研究・エンジニアリング業務に従事している。これらのエージェントのアクションは実行前に自動モニターが審査する仕組みだ。
8月中に記録された10億件以上のエージェント判断のうち、ブロックされたのは0.002%(約47,000件に1件)。ブロック率そのものは極めて低いが、分母が10億件を超える規模では、0.002%でも数万件の介入が発生することを意味する。ブロックされたアクションは1週間以内に人間がレビューし、事後モニターが週約10万件のトランスクリプトにフラグを立て、そのうち約50件が人間の目に届く。
Anthropic自身のコメントが興味深い。「個々のエージェントが問題を起こすことは稀だが、数百万〜数十億規模になれば、稀な事象でも定期的に発生しうる」という認識を示している。スケールが問題の本質を変えるという指摘だ。
安全性に割いたコンピュートは約6%
コンピュートに関する数値は、7月13日〜20日の1週間分のスナップショットであり、他の指標とは測定期間が異なる点に留意が必要だ。この期間、AI研究に使われたコンピュートの約6%が安全性研究に、約12%がAI駆動の研究に充てられたとしている。
Anthropicはこれを意図的に保守的な数値と説明しており、能力向上と安全性向上の両方に寄与する研究は一般研究としてカウント、セーフガード用分類器のコンピュートは除外している。6%という数値の評価は、何を分母に取るか、何を「安全性研究」と定義するかによって大きく変わる。
なお、業界全体の文脈として、SemiAnalysisの試算では2024年〜2029年の累積AIインフラ投資は約11.1兆ドルに達する見込みだ。コンピュート全体のパイが巨大なため、6%という割合が何を意味するかは文脈次第でもある。
比較対象がない自己申告の数値
Anthropicはレポートの中で、「フロンティア開発者ならどこでも同じ指標を公開できる」と主張し、業界全体での採用を促している。
しかし現時点では、他のフロンティアラボが同じ指標を公表しておらず、26%という数値に比較対象がない。これがファーストパーティ発信として持つ意味と限界でもある。測定期間も指標によってばらばら(研究シェアとエージェント数は8月、コンピュートは7月の1週間)であることも、数値を横並びで解釈する際の注意点だ。
数値の解釈には慎重さが必要だが、AIが自身の研究開発に関与する度合いを定量的に示し、測定方法の課題や改善計画まで含めて公開しようとした試み自体は、業界の透明性という観点で一定の意味を持つ。
詳細はAnthropic says Claude led 26% of its own AI research work in Augustを参照していただきたい。




