9月29日、The Next Webが「China's AI travel curbs now reach executives' spouses and children」と題した記事を公開した。中国がAI・半導体分野の幹部に課している出国制限を、その配偶者や子供にまで拡大したという内容だ。
出国制限が「家族」へ拡大
Bloomberg Newsの報道によると、中国政府はAI・半導体分野の一部の幹部の配偶者・子供が海外へ渡航する際にも、北京の事前承認を必要とする制度を導入した。短期旅行であっても対象となる。
対象となるのは、著名なスタートアップ創業者や、国家安全保障上重要とみなされるAI企業のトップなど。政府機関はすでに対象者への通知を開始しており、複数の情報筋によると、家族の渡航についても申請が必要と告知を受けた者がいるという。ただし、すでに制限下にある全員の家族が新ルールの対象となるかは不明で、今後もリストへの追加が続く見通しだ。なお、The Next Web自身はこの報道を独自に確認していないとしている。
今年初頭から段階的に強化
中国による民間AI人材への出国制限は今年初頭から始まっており、Alibaba、DeepSeekなど民間大手のAI部門トップが対象となっていた。今回の家族への拡大はその延長線上にある措置だ。
制限の目的は、米国への技術・知見の流出を防ぐことであり、完全な出国禁止ではなく、渡航に事前承認が必要な制度と位置づけられている。
中国はこれまでも研究者、核科学者、国有企業幹部とその家族の渡航を制限してきた実績がある。ただし今回の焦点は民間セクターだ。ChatGPT登場以降、中国のトップAI人材の多くは民間企業から生まれており、その流出リスクへの警戒が強まっている。
また別途、出国禁止の執行に関するルールが9月15日に発効した。刑事捜査から産業・技術安全保障上の違反可能性まで幅広いケースが対象となる。
Manusの買収破談と当局の警戒感
当局の危機感を高めた出来事として、MetaによるAIエージェント「Manus」の開発企業への20億ドル規模の買収がある。北京はこの取引を差し止め、取引の解消を命じるとともに、米国による機密性の高いテック企業への投資制限に動いた。
Bloomberg報道では「今回の渡航制限はManusの件と必ずしも関連しているわけではない」と明示されており、直接の因果関係は確認されていない。一方で、Manus問題が当局の人材流出への警戒心に影響を与えた可能性は、文脈上の背景として指摘されている。
さらに、Carnegie Mellon大学の調査によると、現在、中国には米国より多くのエリートAI研究者が存在するという。この人材集積を維持しようとする北京の思惑が、制限強化の背景にある。
「人材の囲い込み」が本格化
一連の動きは、AI覇権をめぐる米中競争が「技術」から「人材」の争奪戦に移行していることを示している。配偶者・子供への制限拡大は、研究者本人にとって渡航判断に関わる事情を家族にまで広げる措置であり、事実上の抑止力として機能する構造だ。
当局の反応
中国の産業情報技術省(Ministry of Industry and Information Technology)はThe Next Webによるコメント要請に応じていない。
詳細はChina's AI travel curbs now reach executives' spouses and childrenを参照していただきたい。




