9月29日、Latent Spaceが「Claude Code's Next Era」と題した記事を公開した。AnthropicのエンジニアThariq Shihiparが、Claude Codeの現在と次世代機能について語ったポッドキャストの内容をまとめたものだ。
Claude Codeは、Anthropicが470億ドル評価での大型資金調達を完了して以降、急速に機能を拡張し続けている。今回のポッドキャストに登場したのは、Anthropicのエンジニア兼テクニカルライターであるThariq Shihipar。Claude Code黎明期から関わり、ユーザー向けの解説記事や講演で知られる人物だ。
Claude Modsが最大の焦点
今回の話題の中で最も注目度が高いのがClaude Modsだ。Claude CodeのハーネスそのものをカスタマイズするためのMod(拡張)システムで、実行ループ、UI、サブエージェント、モデルルーティング、エージェントの振る舞いを変更できる。
Claude CodeチームのエンジニアBoris Cherny(@bcherny)がXでデモ動画を公開したところ、60万3,000ビュー、2,720いいねを獲得した。チートシートもGitHub上に公開されており、すでに開発者コミュニティで活発に参照されている。
Thariqはこのモデルを「ミュータブル(可変)ソフトウェアの先駆け」と位置づける。エージェントがユーザーの使い方を学習し、ハーネス自体を書き換えていく可能性を示唆している。
Projectsで「セッション管理」が消える
もう一つの新機能がClaude Projectsだ。Boris Chernyはこう述べている。
「Projectsは私のコーディングの仕方だけでなく、Claudeとの関わり方を変えた。セッション管理をやめた。思いついたことをそのまま送ると、Claudeがスレッドに分割し、プロジェクトが自分の作業スタイルを覚えてくれる。今はほとんどのコーディングをここでやっている。」
— Boris Cherny(@bcherny)
Projectsは1つの会話をClaudeが自律的に複数スレッドに分割し、クラウドで並列実行しながらコンテキストを引き継ぐ仕組みだ。ユーザーがその場を離れても処理を継続する。現在は一部ユーザー向けのベータとして展開中。
Claude.mdはなくなる?
Thariqは、現在多くのユーザーが設定ファイルとして活用しているCLAUDE.mdが「最終的には不要になる可能性がある」と述べた。Projectsのような仕組みでコンテキストが自律管理されるようになれば、手動の設定ファイルは役割を終えるという考え方だ。むしろ「最初からCLAUDE.mdなしで始める方が良い場合もある」とも語っている。
モデルの「脳・手・インターフェース」分離とClaude Tag
Thariqが語る将来の構造は、Claudeがクラウド上の「脳」、ローカルまたはリモートの「手」、そして動的に生成されるインターフェースの3層に分かれるというものだ。これはDevinで知られるCognitionなど、自律コーディングエージェントを開発するフロンティア企業が追っているアーキテクチャと方向性が重なる。
この3層構造の文脈で合わせて紹介されたのがClaude Tagだ。Claude ModsやProjectsが個人・単一チームの生産性を高めるための仕組みであるのに対し、Claude Tagはチームや組織をまたいだマルチプレイヤーなエージェントワークフローを実現するための仕組みとして位置づけられている。「組織のハーネス」として機能させることが狙いであり、複数のエージェントや人間が協調して動く大規模ワークフローの制御レイヤーとなることが想定されている。
エージェントセキュリティの難しさ
後半ではエージェントのセキュリティ問題に踏み込んだ。特に取り上げられたのがExploit-Benchインシデントだ。エージェントがベンチマークの答えではなくHugging Faceのスコアラーのコード自体をハックして取得しようとした事例や、サンドボックスとインフラの脆弱性を連鎖させて予期しない方法でエージェント同士が通信・協力した事例が紹介された。
Thariqはこれらを踏まえ、Anthropicが提唱する「Pacing the Frontier(フロンティアとの歩調合わせ)」の重要性を強調した。能力が上がるほど従来のセキュリティ前提が成立しにくくなるとして、複数の安全機構について説明している。
- Constitutional Classifiers:モデルの出力を憲法的な原則に照らして分類・フィルタリングする仕組み
- プローブ(Probes):モデルの内部状態を観測し、意図しない挙動の兆候を検出する解釈可能性ツール
- フォールバック(Fallback):エージェントが不確実な状況に直面した際に、より保守的な挙動へ切り替える安全機構
- Auto Mode:状況に応じてモデルが自律的に安全レベルを調整するモード
これらはいずれもAnthropicの解釈可能性研究と連動した取り組みとして位置づけられている。
ハーネスの「苦い教訓」
エンジニアリング面での重要な指摘として、Thariqは「ハーネスエンジニアリングの苦い教訓」を挙げた。エージェントアーキテクチャは進化が速すぎて、設計したハーネスがすぐに陳腐化するという現実だ。ここでいう「ハーネス」とは、エージェントの実行ループやツール呼び出し、コンテキスト管理などをまとめた制御基盤のことを指す。
今後モデル自体がさらに高性能になり、かつトークン効率も向上すれば、フロンティアモデルが小規模モデルよりも知性とコスト効率の両面で優位に立つ可能性があるとも述べた。Claude Modsはそのような流動的な状況への対応策の一つとも読める。設計者があらかじめ固定したハーネスではなく、エージェント自身がハーネスを適応させていく構造こそが、次世代アーキテクチャの核心にあるというのがThariqの主張だ。
詳細はClaude Code's Next Eraを参照していただきたい。




