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AMDが82億ドルでFei-Fei LiのWorld Labsを買収 — NVIDIAのHugging Face獲得に対抗し、ロボティクスと完全オープンソースAIで勝負へ

9月29日、The Next Platformが「AMD Buys World Labs For $8.2 Billion To Get AI Model Cred」と題した記事を公開した。AMDがFei-Fei Li創設のAIスタートアップ・World Labsを82億ドルで買収し、AIモデル開発能力の獲得とNVIDIA対抗軸の構築を狙う戦略的買収を詳報している。

9月29日、The Next Platformが「AMD Buys World Labs For $8.2 Billion To Get AI Model Cred」と題した記事を公開した。AMDがFei-Fei Li創設のAIスタートアップ・World Labsを82億ドルで買収し、AIモデル開発能力の獲得とNVIDIA対抗軸の構築を狙う戦略的買収を詳報している。


NVIDIAのHugging Face買収が引き金に

この買収を理解するには、直前の出来事を押さえておく必要がある。2026年9月初旬、NVIDIAはAIモデル配布プラットフォームの最大手であるHugging Faceを129億ドルで買収した。Hugging Faceは300万以上のAIモデル、100万以上のデータセット、140万以上のインタラクティブスペースを擁するプラットフォームであり、AMDがInstinct GPUアクセラレータの普及を図るうえで戦略上欠かせない存在だった。

AIモデルの開発・配布エコシステムを押さえることは、GPU販売の需要そのものを左右する。Hugging Faceがハードウェアベンダーの傘下に入れば、そのプラットフォーム上でのモデル最適化や推奨環境が競合優位に直結するためだ。NVIDIAの傘下に入ったことで、AMDは抜本的な手を打つ必要に迫られた。


World Labsとは何か

World Labsは2024年1月に設立されたAIスタートアップで、テキストや画像を生成するいわゆる「生成AI」ではなく、世界の物理法則を理解・予測する「ワールドモデル」の構築に特化している。ワールドモデルとは、現実世界の因果関係や物理的なダイナミクスを内部表現として学習するAIモデルの総称であり、ロボットの行動計画や3Dシミュレーションへの応用が期待されている点で、単なる画像・動画生成モデルとは技術的な位置づけが異なる。

創業メンバーは錚々たる顔ぶれだ。

  • Fei-Fei Li(CEO):プリンストン大学で物理学の学士を取得後、Caltechで電気・電子工学のPhDを取得(※元記事の記載に基づく)。2017年にGoogleのAI/MLチーフサイエンティストを務め、その後スタンフォードAI研究所所長・人間中心AI研究所(HAI)の共同所長を歴任。ImageNetの生みの親としても広く知られる。
  • Justin Johnson:Caltechで計算機科学の学士、スタンフォードでPhD取得。Metaでのリサーチサイエンティスト経験を持つ。
  • Ben Mildenhall:スタンフォードで計算機科学の学士、UCバークレーでPhD取得。GoogleでコンピュータビジョンとGenerative 3Dモデルを研究。NeRF(Neural Radiance Fields)の共同考案者としても知られる。
  • Christoph Lassner:ドイツのテュービンゲン大学出身。Amazon、Meta、Epic Gamesでの3D世界構築経験を持つ。

資金調達では、Jeff Dean(Google)、Geoff Hinton(Google)、Marc Benioff(Salesforce)、Reid Hoffman(LinkedIn)、Eric Schmidt(元Google CEO)らがエンジェル投資家として参加。今年2月に完了したシリーズBでは10億ドルを調達し、NVIDIAとAMDも出資していた。当時の評価額は約50億ドルであり、AMDは今回それに対して約75%のプレミアムを上乗せして82億ドルを支払う計算になる。

製品面では、2025年11月に「Marble」ワールドモデルを公開し、2026年1月にはクラウドアクセス版「World API」をリリース。さらに今年9月初旬に、マルチモーダル自己回帰拡散トランスフォーマーを採用した上位モデル「Atlas」の早期アクセスを一部顧客向けに開始している。


「株式で支払う」という現実

注目すべき点として、AMDは82億ドルを現金ではなく自社株式で支払う。AMDは時価総額1兆ドルを突破しているが、CPUおよびGPUの製造に必要な先行投資が重くのしかかっており、現金を大規模に使える状況にはない。

買収後の体制として、Fei-Fei LiはAMD CEOのLisa Suに直接報告するチーフサイエンティストに就任する。JohnsonとMildenhallはAMD内でWorld Labsの運営を継続する見込みだ。なお、共同創業者のLassnerはAMDのアナウンスメントに名前がなく、買収対象から外れている可能性がある。


AMDの本当の狙いはロボティクスか

記事が指摘する興味深い点は、ワールドモデルの市場規模そのものよりも、ロボティクスへの布石としての側面だ。NVIDIAはすでにCosmosワールドモデルをロボティクス向けに展開しており、物理シミュレーションを通じた自律ロボットの訓練基盤として位置づけている。Jensen HuangはNVIDIAのロボティクス部門をSpencer Huangに、3DシミュレーションおよびOmniverseのプロダクトマーケティングをMadison Huangに任せているとされる(※いずれもJensen Huangの家族である旨は元記事の記載に基づく)。

競合としては、TencentのHunYuanWorld、GoogleのGenie 3、さらにRunway・Odyssey・Decartといったスタートアップ、そしてYann LeCun(元Metaリサーチ責任者)が率いるAMI Labsも同空間に参入している。ワールドモデルはロボティクスに限らず、自動運転・3Dコンテンツ生成・科学シミュレーションといった領域でも需要が拡大しており、AMDが単なる「GPUのコモディティ競争」から抜け出すための技術的足がかりとして機能するかが注目される。


「NVIDIAよりオープン」を証明できるか

記事の締めくくりで筆者が問うのは、Li・Su両名がAIモデルをソースコード・重み・学習データまで含めてフルオープンにする選択をするかどうかだ。NVIDIAの「Nemotron」シリーズはオープンウェイトだが、Cosmosの学習に使った2000万時間分の動画データは非公開のままである(おそらくインターネットからスクレイピングしたものであり、権利上公開できない)。AMD+World Labsがここに踏み込み、モデル・重み・学習データをすべて公開する完全オープンソース路線を選択すれば、NVIDIAとの明確な差別化軸になり得る。記事はこの点をAMDにとっての最大の勝負どころとして位置づけており、Fei-Fei Liのアカデミックなバックグラウンドがその方向性を後押しする可能性があると示唆している。

詳細はAMD Buys World Labs For $8.2 Billion To Get AI Model Credを参照していただきたい。