9月29日、Futurismが「Creative Industries Have Been Eviscerated by AI, Data Shows」と題した記事を公開した。米国労働統計局のデータをもとに、2022年11月のChatGPT一般公開以降の約4年間でアメリカのクリエイティブ産業・メディア分野の雇用が20万人以上失われた実態を詳しく伝えている。
「2001年、2008年の大不況並み」の雇用喪失
データジャーナリストのJoseph PolitanoがSubstackの投稿で分析した結果によると、2022年11月のChatGPT公開を起点とする約4年間で、アメリカのクリエイティブ産業は20万人超の雇用を失った。そのうち約5万人分の喪失は直近1年だけで発生している。
Politanoはこの状況を「現代の米国メディア雇用史上最悪レベルの下落期のひとつ」と表現し、同程度の損失強度と期間が観測されたのは2001年のドットコムバブル崩壊後と2008年の世界金融危機後のみだと指摘する。タイトルで「2008年」を強調しがちだが、Politanoの分析では2001年と2008年の両局面が同等の参照点として挙げられている点は押さえておきたい。
打撃が大きいのはデジタル系クリエイティブ職
特に深刻な落ち込みを見せているのが、グラフィックデザイン、放送、出版、映像・音楽レコーディングといったデジタル系のクリエイティブ職だ。ジェネレーティブAIがたとえ品質面で不十分であっても、人間によるデザイン・映像・文章・音声制作の代替手段として手軽に使われ始めており、メディア・クリエイティブ産業全体の雇用成長率は2023年以降マイナスが続いている。
一方で、美術館業務や舞台芸術といったライブアート系の一部職種は逆に増加している。ただし「フリーランスアーティストへの雇用」のような形態は過去と比べて急減しており、セクターによって明暗が分かれる構図だ。デジタルで完結しやすい職種ほどAI代替の圧力にさらされやすく、身体性や現場性を伴う職種はいまのところ比較的影響を免れている。
データの出所と信頼性について
元データは米国労働統計局(BLS)によるもの。BLSはトランプ政権復帰後にその独立性を繰り返し揺さぶられており、Futurismも記事内で同様の断り書きを入れている。ただし現時点でもBLSはマクロ経済的な雇用動向を読むための最も広く参照される公的指標であり、今回の分析の有効性は大きく損なわれるものではない。
「もともと厳しかった」では済まない変化
クリエイティブ産業での安定雇用がもともと難しかったことは業界関係者なら誰もが知るところだ。しかし今回の数字が示すのは、AIの普及と労働市場全体の悪化が重なることで、「もともと厳しかった」という認識では到底収まらないレベルの構造変化が起きているという現実だ。しかも損失が近いうちに止まる兆候は見えない、とFuturismは伝えている。
2022年11月以降のわずか4年足らずで、過去の大不況期に匹敵する規模の雇用が消えた。この速度と規模が示唆するのは、景気サイクルによる一時的な落ち込みではなく、産業構造そのものの書き換えが進行中である可能性だ。エンジニアにとってもこの数字は無関係ではない。AIが「雇用を奪う」という議論が仮説ではなく実績データとして積み上がりつつある現実は、クリエイティブ職にとどまらず、ソフトウェア開発を含む他の知識労働者にとっても射程内の問題として受け止める必要がある。
詳細はCreative Industries Have Been Eviscerated by AI, Data Showsを参照していただきたい。




