10月1日、Chance Townsendが「Trump rebrands AI as 'super intelligence' as tech giants sign White House accord」と題した記事を公開した。トランプ大統領が「AI(Artificial Intelligence)」を「Super Intelligence」に改称し、大手テック企業のCEOらがホワイトハウス協定に署名したことの経緯と、その協定の実態を詳報している。
「スーパーインテリジェンス・ランチョン」で何が起きたか
2026年9月29日、トランプ大統領とアメリカの主要テック企業トップらは、ホワイトハウスの東の間で「スーパーインテリジェンス・ランチョン」を開催し、「White House Accord on Super Intelligence(スーパーインテリジェンスに関するホワイトハウス協定)」に署名した。
出席者は以下の面々だ。
- イーロン・マスク(xAI)
- ジェンスン・ファン(Nvidia)
- ダリオ・アモデイ(Anthropic)
- マーク・ザッカーバーグ(Meta)
- スンダー・ピチャイ(Google)
- グレッグ・ブロックマン(OpenAI)
- サティア・ナデラ(Microsoft)
- ジェフ・ベゾス(Amazon)
- リサ・スー(AMD)
- アレックス・カープ(Palantir)
協定に実際に署名したのはアモデイ、ブロックマン、ファン、マスク、ピチャイ、ザッカーバーグの6名。ナデラとベゾスは出席したが、MicrosoftとAmazonは署名していない。またAppleからは誰も出席しなかった。ティム・クックCEOは直近ではトランプ主催の習近平国賓晩餐会にも同席していたが、今回は不在だった。
トランプはこの協定を「道徳的に拘束力がある」と述べた。
「AI」廃止の経緯――SNS投票で決まった名称
同日、トランプは大統領令に署名し、連邦政府の公式文書において「AI(Artificial Intelligence)」を「Super Intelligence」に置き換えるよう指示。議会にも新名称を法律に明記するよう求めた。
この改称は2回のSNS投票を経て決まった。9月19日にXとTruth Socialで「Superior Intelligence」「Extreme Intelligence」「Supreme Intelligence」の三択を問うたところ、23万票以上の投票でSuperior Intelligenceが41.5%で1位に。続いてTruth Socialで「Super Intelligence」対「Superior Intelligence」を問う2回目の投票を行い、5万票以上が集まり65%がSuper Intelligenceを選んだ。
AI研究の文脈では、哲学者・研究者のニック・ボストロムが著書『Superintelligence』(2014年)で定義した「superintelligence(超知性)」は、人間のあらゆる認知能力を凌駕する仮想的なシステムを指す概念だ。現在のChatGPTやGeminiといったLLMベースのシステムは、特定タスクで人間を上回る能力を示す場面もあるが、汎用的な推論・自律的な目標設定といった点ではsuperintelligenceの定義には遠く及ばない。今回トランプが使用する「Super Intelligence」はこの学術的概念とは切り離された政治的・ブランド的用語であり、概念的な混同を生む可能性がある。シカゴ大学のマーケティング教授ジャン=ピエール・デュベは、この名称使用を「時期尚早」と述べ、ブランドの混乱から定着しないと予測している。
協定の中身:4層の安全管理、しかし強制力はゼロ
協定のサブタイトルは「Joint Commitment on Frontier Responsibilities(フロンティア責任に関する共同コミットメント)」。フロンティアAIモデル(最先端の大規模AIモデルを指す)を開発する各社が安全に開発する責任を負うと主張し、署名各社に以下4層の管理体制の導入を求めている。
- 社内モニタリング
- 内部統制を維持する社内開発チーム
- 独立した外部監査人
- 各社取締役会に設置する独立委員会
また、各社が定期的に集まり、共通の標準とベストプラクティスを策定することにも合意している。
この枠組みは、Anthropicのアモデイが9月12日に自身のブログで公開した提言をほぼそのまま踏襲したものだ。彼はそこでAI業界に対し「フロンティアのペースを管理すること」を求め、外部評価者への常時・社員レベルのアクセス付与、民主主義国家のAI企業間での安全基準の共同策定、政府による独禁法の適用除外(「限定的ウェーバー」)の付与を提案していた。OpenAIのサム・アルトマンも数時間以内に公開支持を表明していた。
ただし、この協定には以下のものが一切存在しない。
- 執行メカニズム(強制手段)
- ペナルティ
- タイムライン
- 監査結果の公表義務
- 「独立した」評価者の定義
文書は、これらの手順をいつか法律や規制に転換することが「理にかなっているかもしれない」と述べるにとどまっている。
協定と並行して、AnthropicやOpenAI、Google、xAIが協調して開発を減速させたことが独禁法違反にあたるとするクラスアクション訴訟も進行中だ。なお元記事では「SpaceXAI」という表記が使われている箇所があるが、出席者リストに記載のとおりマスクの参加はxAIとしての立場によるものであり、SpaceXとxAIは別法人である。
自主規制の限界
結局のところ、「White House Accord on Super Intelligence」はほぼ完全に自主規制と取締役会による監督に依存する。ピチャイはXに「業界も責任を持ってイノベーションを進めなければならない」と投稿したが、それをどう担保するかの仕組みは協定には書かれていない。
歴史的な文脈で言えば、バイデン政権は2023年7月にOpenAI・Google・Microsoftなど7社から自主的なAI安全コミットメントを取り付けており、その後2024年にはより広範な大統領令へと発展させた経緯がある。トランプ政権はバイデン時代のそれらの規制的枠組みを就任直後に撤廃した上で、今回の協定を打ち出した形だ。自主規制から始めて規制へと強化するアプローチは両政権に共通するが、強制力を持つ段階への移行がいつ、どのように実現するかは今回の協定からは一切読み取れない。
なお、協定文書には「President of the Unites States」というタイポが含まれている。公式文書としての完成度を問う声も出ており、協定全体の象徴として受け取られかねない細部だ。
詳細はTrump rebrands AI as 'super intelligence' as tech giants sign White House accordを参照していただきたい。




