10月6日、Futurismが「Court Finds That Using Copyrighted Material as AI Training Data Is Not Fair Use」と題した記事を公開した。AIの学習データへの著作権保護素材の使用が「フェアユース」に当たらないとする米連邦控訴裁判所の判断について報じたもので、AI業界が固唾を呑んで見守ってきた法的争点がついに上級審レベルで動き出した。
AI業界の「フェアユース」防衛に亀裂
2025年9月末、米国第3巡回控訴裁判所は、AIリサーチ企業Ross Intelligenceが著作権法を侵害したとする下級審の判決を支持した。第3巡回控訴裁判所はフィラデルフィアを本拠とする連邦控訴裁判所であり、本件はデラウェア州連邦地裁からの上訴であるため管轄は合致する。Rossは法律調査プラットフォームを構築するにあたり、Thomson Reutersが運営する法律データベース「Westlaw」のコンテンツを学習データとして使用していた。Reutersの報道によれば、これはAI学習データに関する著作権訴訟で控訴裁判所レベルとして初めて判断が下されたケースだ。
「フェアユース(Fair Use)」とは、米国著作権法第107条が定める例外規定で、批評・報道・研究などの目的であれば著作物を無断使用できるとするものだ。適用されるかどうかは、使用がどれだけ「変容的(transformative)」か、原著作物をどの程度使用しているか、原著作物の市場価値を損なうかどうかなどの要素で判断される。
OpenAIのSam Altman CEOはかねてより、フェアユース条項がAI学習に適用されなければ業界にとって致命的になるという趣旨の発言をしており(※編集部注:Altmanがいつ・どの場で当該発言を行ったかは元記事に明示されていない)、AI各社にとってこの法的争点は死活問題と位置づけられてきた。
Rossのケースの具体的な中身
今回の判決の核心は、RossがWestlawの「ヘッドノート」——法的論点を簡潔にまとめた編集サマリー——をそのまま逐語的にコピーして自社の法律検索エンジンに使用したという点だ。
デラウェア州連邦地裁判事は原判決でこう記している。
「Rossはヘッドノートを取得することで、競合する法律調査ツールの開発を容易にした。よってRossの使用は変容的ではない。」
変容的でないと判断された以上、フェアユースの主張は成立しない。控訴裁判所はこの判断を支持した。
AI業界は「勝利」と強弁、しかし実態は
注目すべきは業界側の受け止め方だ。テック業界団体Chamber of ProgressのAI担当上級ディレクター、Adam Eisgrauは判決後にXでこう投稿した。
「この判決は、巨大なマルチパーパスモデルを生み出す高度に変容的な生成AI学習が、フェアユースとなる可能性が高いことを暗黙的に確認している!」
しかし著作権専門ブログ「Copyright Lately」のAaron Mossはこの反応を一蹴している。
「各社が勝利宣言をしているのを見ると、みんな別の判決を読んだのかと思う。そうではない。」
Mossはさらに、このケースが生成AIの法的行方を決める「最適な器」ではないとも指摘する。理由として、損害賠償の算定が未解決であること、Rossはすでに存在しないこと、そしてRossのAIは生成AIではなかったことを挙げている。
今後の注目案件:Anthropic対Concord Music
Rossの残存組織は最高裁への上告を宣言しているが、Mossは「生成AIの学習問題についてより明確な判断を導ける、クリーンなケースがすでにカレンダーに載っている」と指摘する。
その一つが、Concord Music GroupがAnthropicを訴えた訴訟だ。数千件の著作権保護された楽曲の歌詞をClaudeの学習に無断使用したとして提訴されており、元記事の掲載時点(10月6日)基準で「今月後半」に審理が予定されているとされている。読者が本記事を読む時点ではすでに進展している可能性がある点に留意されたい。
著作権をめぐる訴訟はこの一件にとどまらない。著者、コメディアン、音楽業界、大手新聞社、さらにはEncyclopedia Britannicaに至るまで、権利者側の訴訟は多岐にわたっており、法廷の外での圧力も増し続けている。なお、ロス・インテリジェンスは訴訟費用の圧迫を理由に2021年に事業を停止しており、今回の判決はAI企業にとって財務的なリスクが現実のものとなりうることを示す事例でもある。
フェアユースをめぐる議論の背景を深く理解するには、米国著作権局によるフェアユースの公式解説も参照されたい。また、AI×著作権をめぐる関連訴訟としては、New York Times対OpenAI訴訟や、Getty Images対Stability AI訴訟なども現在進行中であり、本件と合わせて動向を追う価値がある。
詳細はCourt Finds That Using Copyrighted Material as AI Training Data Is Not Fair Useを参照していただきたい。




