10月8日、The Newsが「Nvidia eyes major investment in Figure AI robotics: Here's what to know」と題した記事を公開した。NvidiaがヒューマノイドロボットスタートアップのFigure AIに対し、さらに10億ドル(約1,500億円)の追加投資を行う交渉を進めているという。現時点では交渉中であり確定した情報ではないが、実現すれば同社のロボティクス戦略における重要な節目となる。
NvidiaがFigure AIに10億ドルの追加投資を検討
今回報じられている10億ドルの投資はあくまで「検討・交渉中」の段階であり、最終的な合意に至るかどうかは未確定だ。その前提を踏まえた上で、両社のこれまでの関係を整理する。
Figure AIは2022年にBrett Adcockが創業したヒューマノイドロボット専業のスタートアップだ。Nvidiaにとって今回が初の関与ではなく、2025年9月に完了したシリーズC調達ラウンド(総額10億ドル超)にすでに参加している。このラウンドは本稿執筆時点(2026年10月)から約1年前に締結されたものだ。当時のポストマネー評価額(調達資金込みの企業価値)は390億ドルに達しており、今回の追加投資が実現すればNvidiaの関与はさらに深まることになる。
単なる出資者ではなく、技術パートナーとして
Nvidiaの関与は資金面にとどまらない。同社はFigureのHelix AIモデルとロボット展開における主要な技術プロバイダーでもある。
Helix AIモデルとは、Figure AIが開発しているロボット制御向けの基盤モデルで、視覚・言語・動作を統合してロボットが物理空間のタスクを自律的に実行できるよう設計されたものだ。このモデルのトレーニングおよびロボットへの推論実装の両面でNvidiaのハードウェアが使われている。
CEO Jensen Huangはこのパートナーシップについて、「Nvidia Vera Rubinでモデルをトレーニングし、そのモデルをFigureのロボット内部に搭載されたNvidia GPUで実行する」という構成であると説明している。Vera Rubinは、Nvidiaが次世代データセンター向けに開発しているGPUアーキテクチャだ。
HuangはこのエコシステムをRoboticsフライホイール(**"robotics flywheel"**)と表現している。フライホイールとは、一度回り始めると自己強化的に加速するサイクルを指すビジネス用語で、ここでは「Nvidiaのハードウェアでモデルを鍛え、そのモデルがロボットを改善し、改善されたロボットがさらに多くのデータを生み出す」というループを意味する。
ヒューマノイドロボット開発を阻む2つの壁
Figure AIが公表している主な開発課題は2点だ。
- データ不足:ロボットはWebスクレイピングで大量テキストを学習できるLLM(大規模言語モデル)とは異なり、物理世界での動作データを実際に収集・蓄積しなければならない。
- 計算資源の不足:開発を加速するための十分なコンピューティングリソースが不足している。
この2点は、ヒューマノイドロボット開発がソフトウェアのAI開発よりも根本的に難しい理由を端的に示している。テキストや画像と違い、ロボットの動作データはインターネット上にほとんど存在しないため、データ収集自体がボトルネックになる。Nvidiaとの提携は、この2つの課題——データ生成のための実機展開と、大規模トレーニングのための計算資源——をまとめて解決する手段として機能しうる。
Physical AIへのNvidiaの注力
今回の動きは、Nvidiaが「Physical AI(物理空間で動作するAI)」の領域に本格的に踏み込んでいることを示している。データセンター向けGPUビジネスで急成長してきた同社が、ヒューマノイドロボットという新たな大規模コンピューティング需要を取り込もうとしている構図だ。
ロボティクス分野ではTesla Optimusも独自のAIスタックと垂直統合モデルで開発を加速しており、Boston DynamicsはAtlasなどのプラットフォームで産業用途への展開を進めている。ただし、Boston DynamicsはNvidiaエコシステムとは独立した技術スタックを持つ企業であり、Nvidiaのインフラ戦略とは異なるアプローチを取っている点は注意が必要だ。Nvidiaはチップ・ソフトウェアスタック・クラウドトレーニング基盤を丸ごと提供することで、特定のロボットメーカーではなく業界全体のインフラ層を押さえようとしている点が特徴的だ。
今回の追加投資交渉が報じられたことで、その戦略の本気度が改めて浮き彫りになった形だ。ただし繰り返しになるが、投資の実行はまだ確定していない。今後の合意に向けた動向が注目される。
詳細はNvidia eyes major investment in Figure AI robotics: Here's what to knowを参照していただきたい。




