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「ソフトウェアは終わった」— Rust歴10年の開発者がAIコーディングのみでAdobe Creative Suiteのクローンを無料公開、Adobeの"キャンセル料"への怒りが原動力

10月8日、Ars Technicaが「"Software is over": Bold AI developer takes aim at Adobe with open source clones」と題した記事を公開した。Rust開発の経験を約10年持つソロ開発者がAIツールのみを使ってAdobe Creative Suiteのオープンソースクローンを構築・無料公開した件について詳しく紹介されている。

10月8日、Ars Technicaが「"Software is over": Bold AI developer takes aim at Adobe with open source clones」と題した記事を公開した。Rust開発の経験を約10年持つソロ開発者がAIツールのみを使ってAdobe Creative Suiteのオープンソースクローンを構築・無料公開した件について詳しく紹介されている。


「Photoshopを丸ごと一発で作った」——ただし自己申告

「ソフトウェアは終わった」——そう豪語するのは、Rustによるシステム開発の経験を約10年持つ開発者のThomas氏だ。今年2月からAIツールのみでコーディングを続けてきた同氏は、Adobe Premiere・Photoshop・After Effectsといった有料ソフトのオープンソースクローンを構築し、MIT/Apacheライセンスで無料公開した。

なお、「Photoshopを丸ごと一発で作った」という主張はHacker Newsへの自己申告によるもので、Ars Technica記事のコメント欄でも信憑性を疑う声が複数上がっている点は留意が必要だ。

制作のきっかけはAdobe特有の「キャンセル料」という不透明な課金体系に「何度もやられたこと」だという。Adobe製品のサブスクリプションを解約しようとすると残期間の料金を請求される仕組みはかねてから批判されており、Thomasはその怒りをそのまま開発の動力に変えた。

Hacker Newsでは次のように述べている。

「今では機能的に1:1の等価物を、クリーンルームで、高パフォーマンスかつクロスプラットフォームに作れる。何も止めるものはない。Google Searchを置き換え、独自のスマートフォンを作り、広告をすべて排除してテック世界全体を『脱クソ化』する」

ここで言う「クリーンルーム開発」とは、既存ソフトのソースコードを参照せず、外部から観察できる仕様や動作のみをもとに独自実装する開発手法を指す。著作権侵害のリスクを回避する手段として知られており、後述の法的論点と深く関わる。


AIコーディングで大規模ソフトをゼロから構築

公開されたアプリのひとつ「Filmcraft」は、Adobe Premiereの外観・操作感を忠実に再現している(冒頭の画像参照)。Rustベースでクロスプラットフォームかつパフォーマンスにも配慮した構成で、Thomas氏が積み重ねてきた大規模Rustプロジェクトの知見が基盤となっている。AIツールはあくまでコーディングの加速手段であり、Rust・映像処理・UIアーキテクチャに関する深い理解がなければ成立しない開発であることは強調しておきたい。

Ars Technicaの記事では、FilmcraftのほかにPhotoshopクローンおよびAfter Effectsクローンの存在にも言及されているが、それぞれの完成度や公開状況についての詳細な検証は記事の範囲外となっている。「複数の大規模アプリを短期間で仕上げた」という主張を額面通りに受け取る前に、各ツールの実際の動作を確認することが望ましい。

開発コストの問題については、画像生成AIモデルを統合したIDE「Artcraft」へのトークンベースのアクセス販売で賄う計画だ。なお、本紹介記事でのArtcraftへの言及はArs Technicaの元記事に基づくものであり、GitHubリポジトリ等の独自調査は行っていない。アプリ内に統合されており、サードパーティモデルとの併用も可能。Thomasは「映像クリエイター向けの人気ソフトを作るチームがいるため、この取り組みの資金は確保されている」と述べ、孤児プロジェクトになるリスクを否定している。


法的リスクという現実

ただし、手放しで称賛できる話でもない。

クリーンルーム開発によるリバースエンジニアリング——元のソースコードをコピーせず機能を再現すること——は一般的に法的に許容される行為とされているが、「トレードドレス」の問題が残る。トレードドレスとは、UIの見た目・配色・操作体験といった製品の「外観的アイデンティティ」を指す概念で、商標法上の保護対象となりうる。FilmcraftのUIがAdobeのそれに酷似している場合、著作権・商標上の問題が生じる可能性がある。Ars Technicaは過去のTetrisクローン訴訟などを引き合いに出し、この点を指摘している。

Thomasは、Adobeを標的にした初めての開発者ではない。ただ、AIコーディングツールを全面的に活用して短期間で複数の大規模アプリを仕上げたという点で、今回の事例は注目に値する。


Hacker Newsの反応

Hacker Newsでは議論が分かれている。AIによる高速開発の可能性に興奮するコメントがある一方、法的リスクやトレードドレス問題、そして「丸ごと一発で作った」という主張の信憑性を疑う声も多い。「ソフトウェアは終わった」という言葉のインパクトに対して、「誇張が過ぎる」という冷静な反応も見られる。

Thomasは「近い将来、一般の開発者が人気の有料ソフトのオープンソース版を作り、インターネットを取り戻せるようになる」と展望を語っている。その主張が現実になるかどうかはともかく、AIツールがリバースエンジニアリングの敷居を大きく下げつつあるという事実は、業界にとって無視できない変化だ。


詳細は"Software is over": Bold AI developer takes aim at Adobe with open source clonesを参照していただきたい。