10月9日、RuntimeWireが「Anthropic commits $150M to put Claude inside federal science projects」と題した記事を公開した。AnthropicがClaudeを連邦政府の科学研究プログラム「Genesis Mission」に導入するため、3年間で1億5000万ドルを投じると発表した内容だ。同時期には米国防総省(ペンタゴン)によるClaude利用停止を伝える報道もあり、政府機関ごとにAnthropicとの関係性が異なる現状が浮かび上がっている。
1億5000万ドルを連邦科学プログラムへ
Anthropicは2025年10月8日、米エネルギー省(DOE)主導のGenesis Missionに対し、3年間で総額1億5000万ドルを投じると発表した。対象は15以上の連邦機関にまたがる数百件の研究プロジェクトで、NASA、国立衛生研究所(NIH)、国立科学財団(NSF)などが含まれる。
提供内容はモデルアクセスにとどまらない。Claude本体に加え、コード生成に特化したClaude Code、APIクレジット、技術サポート、研究者向けのオンボーディングおよびトレーニングが含まれる。ただし、1億5000万ドルの内訳(クレジット費用か、人員配置か、その他サービスか)は元記事でも公表されていないと指摘されており、研究者が実際に受け取るコンピューティング能力の規模は不明なままだ。
CEO自身が物理学者というバックグラウンド
この取り組みを理解する上で、共同創業者兼CEOのDario Amodeiの経歴が背景として興味深い。彼はスタンフォード大学を経て、プリンストン大学で神経回路をテーマに物理学の博士号を取得。その後スタンフォード医学部でポスドク研究員を務め、Google BrainおよびOpenAIでの研究職を経てAnthropicを共同創業した経歴を持つ。政府科学プログラムへの参入は、彼個人の研究者としての原体験とも重なる。
「アクセス提供」から「研究ワークフローへの統合」へ
今回の発表で最も問われるのは、Claudeが既存の研究環境に実際に組み込めるかどうかだ。研究者はすでに専用のデータ、計測機器、計算システムを持って仕事をしており、モデルへのアクセスが増えても、ドメイン知識や実験データとの照合なしに科学的成果は生まれない。発表にはトレーニングやサポートの記述があるが、参加する「数百件のプロジェクト」について具体的なプロジェクト名や成果指標は一切開示されていない。
Anthropicはこれまでにも段階的に連邦科学分野への浸透を図ってきた。
- 2025年7月:ローレンスリバモア国立研究所が約1万人の科学者・研究者・スタッフへのClaude展開を拡大
- 2025年12月:DOEとGenesis Missionの一環としてパートナーシップを発表。エネルギー、生命科学、科学的生産性の向上を対象に
- 並行して:研究者向けワークベンチClaude Scienceの提供、学術科学者向けに1万席の無料・割引シートの開放、AI for Scienceプログラムによるクレジット提供
今回の発表はこれらの取り組みをDOE傘下を超え、複数の連邦機関へと広げるものだ。
競合ひしめく連邦インフラ争い
Genesis Missionの協力協定にはAnthropicだけでなく、OpenAI、Google、Microsoft、NVIDIA、AWSも名を連ねている(DOEは2025年12月に24組織との協力協定を発表)。DOEはGenesisを国立研究所、スーパーコンピュータ、実験施設、データセット、AIシステムを接続するインフラとして位置づけており、ここでの定着が将来の政府調達における優位につながる構図だ。
ペンタゴン報道との並走
一方で、連邦政府との関係は一枚岩ではない。RuntimeWireは同記事内で、10月5日付の報道としてペンタゴン(米国防総省)が6か月の段階的廃止を経てClaudeの利用を停止したと伝えている。Genesis Missionへのコミットメントはこの件とは別軸の動きであり、政府内でも機関ごとに関係性が異なる現状を示している。なお、ペンタゴンの利用停止については元記事が参照元となっているため、一次情報の確認には元記事を直接当たられたい。
詳細はAnthropic commits $150M to put Claude inside federal science projectsを参照していただきたい。




