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EUのサイバーセキュリティ機関が中国製AIモデルの評価を開始 — 独自フロンティアモデルを持てない欧州が直面するAIプロバイダー選択の現実

10月9日、Politico.euが「EU cyber and science researchers are testing Chinese AI models」と題した記事を公開した。EUの公的機関が中国製AIモデルを正式に評価していることが明らかになったのは今回が初めてとみられ、地政学とAI安全評価が交差する局面として国際的な注目を集めている。欧州が独自のフロンティアモデルを持てない現状で、米国製か中国製かというプロバイダー選択の圧力が現実のものとなりつつある。

10月9日、Politico.euが「EU cyber and science researchers are testing Chinese AI models」と題した記事を公開した。EUの公的機関が中国製AIモデルを正式に評価していることが明らかになったのは今回が初めてとみられ、地政学とAI安全評価が交差する局面として国際的な注目を集めている。欧州が独自のフロンティアモデルを持てない現状で、米国製か中国製かというプロバイダー選択の圧力が現実のものとなりつつある。


ENISAが中国製AIモデルを評価中と公式確認

EUのサイバーセキュリティを担う機関ENISA(European Union Agency for Cybersecurity)の執行ディレクターであるJuhan Lepassaarは、自らのチームが現在「数種類」の中国製オープンウェイトAIモデルを評価中であると認めた。ENISAはすでに米国のAnthropicやOpenAI、Googleといった主要AIベンダーの最先端モデルへのアクセスを取得しており、そこに中国製モデルが加わった形だ。

同時に、EUの科学研究センターであるJRC(Joint Research Centre)も、中国を含む複数の国・地域から提供されている「公開オープンウェイトモデル」の評価を実施していることを、欧州委員会のスポークスパーソンMaciej Beresteckiが認めた。評価の目的は「各モデルの能力・性能・限界・リスクを比較する科学的評価」であり、潜在的な科学的応用可能性の調査も含まれる。

オープンウェイトモデルとは、モデルの重みパラメータを含むコアコンポーネントが公開されており、誰でも実行・内部構造の研究が可能なモデルを指す。中国のAI開発はこのオープンモデル路線に傾いており、米国の一部大手企業(NVIDIAを含む)も同路線への投資を進めている。


AIセキュリティ懸念を受けて設立されるテストプラットフォーム

JRCとENISAは、EUが策定したサイバーセキュリティとAIに関するアクションプラン(EU Action Plan on Cybersecurity of AI)のもと、共同でAIテストプラットフォームを構築する任務を与えられている。このアクションプランが策定された背景には、高度なAIモデルがサンドボックス環境の外部と意図せず通信したり、セキュリティ上の懸念を引き起こしたりした一連のインシデントに対するEU当局の危機感がある。

ただし、JRCの評価活動の主眼はAI安全・セキュリティではないと、別の欧州委員会関係者は匿名を条件に述べている。あくまでも科学的な性能比較が主目的だ。

なお、JRCは中国のAI開発者と専用アクセス契約やライセンス交渉は行っておらず、モデルは「セキュアなオンプレミス科学インフラ」上で実行されている。欧州委員会が中国製モデルを自身の業務に使用する意図はないとBeresteckiは強調した。


欧州が直面するAIプロバイダー選択の構造的課題

この動きの背景には、EUが置かれた地政学的な構造がある。AIフロンティア開発において米中が激しく競う中、欧州は独自の競争力ある最先端モデルを持てていない。EUのフロンティアモデルが存在しない現状では、欧州の公的・民間機関はAIプロバイダーとして米国か中国かを選ぶ圧力にさらされている。

欧州委員会のUrsula von der Leyen委員長は最近の演説で、フロンティアAI競争に勝とうとすべきではないと示唆した。一方、今週は欧州の文脈でも象徴的な動きが報じられた。Politicoによれば、欧州の環境特化型検索エンジンEcosiaが、これまで連携していた欧州発AIラボMistralとの関係を見直し、中国のオープンソースモデルへの切り替えを進めたという。EcosiaはAIラボではなく検索エンジン企業であり、MistralはフランスのAIスタートアップだ。両者はパートナー関係にあったが、Ecosiaが中国製モデルを選択したことは、欧州企業においても「欧州産」という選択肢が必ずしも優先されるわけではない現実を示している。

EUが中国製AIモデルを公式に評価していることが今回初めて明らかになったという事実は、地政学とAI安全評価が不可分に絡み合う新たな局面を象徴している。欧州がAI主権をどう定義し、どこから調達するかという問いは、技術的な判断であると同時に政治的な決断でもある。


詳細はEU cyber and science researchers are testing Chinese AI modelsを参照していただきたい。