10月9日、CNBCが「OpenAI and Anthropic poach Trump officials as industry fights for Washington's trust」と題した記事を公開した。この記事では、OpenAIとAnthropicがトランプ政権の元高官を相次いで採用し、ワシントンとの関係強化を急いでいる実態について詳しく紹介されている。
フロンティアAIは国家安全保障問題になった
AI規制への圧力が高まり、不正なAIシステムによるサイバーセキュリティインシデントが相次ぐ中、OpenAIとAnthropicはトランプ政権の元高官を積極的に幹部として採用している。
安全保障シンクタンク「Center for a New American Security」の訪問研究員、Michelle Nie Duncanはこう語る。
「フロンティアAI企業は、トランプ政権が連邦調達、サプライチェーン指定、輸出規制など多くのレバーを自社のビジネスに対して持っており、それを行使する意思があることを認識している」
この背景には、Anthropicが直面した苦い経験がある。米国防総省は2026年9月、Anthropicを「サプライチェーンリスク」に指定した。これはトランプ政権が連邦調達・安全保障上の観点から特定の企業・製品を問題あるサプライヤーとして分類する制度であり、対象となった企業は政府調達から事実上締め出されるリスクを負う。連邦控訴裁判所がその判断を支持したことで、Anthropicにとって法的な逆転の余地も狭まった。年初にトランプ政権と公開の場で対立したことが一因とされており、「ホワイトハウスと良好な関係を保つことが得策だと学んだ」とNie Duncanは分析する。
採用された元政府高官の顔ぶれ
Anthropicは今年に入り、少なくとも2名の元トランプ政権高官を採用した。
- Sihao Huang(9月入社):フロンティアコンピュート戦略責任者。前職はホワイトハウス科学技術政策局(OSTP)のAI・新興技術担当シニアポリシーアドバイザー。OSTOPでAIチームのリードとして国家安全保障、科学政策、半導体問題を担当していた。Anthropicではインフラ拡張と「急速なAI進化への計画立案」を担当するという。
- Chris Liddell(2月就任):取締役会メンバー。トランプ第1期政権で副首席補佐官を務めた人物。
OpenAIは少なくとも3名を採用している。
- Dean Ball(7月入社):戦略的未来担当責任者。2025年にOSTOPでシニアポリシーアドバイザーを務め、トランプ政権の主要AI政策文書「America's AI Action Plan」の草案作成に関与した。OpenAIのChief Strategy Officer、Jason Kwonは「フロンティア安全性や社会への影響について前提を検証する役割を担う」と説明している。
- Thomas Lind(直近確認):国家安全保障政策チームでサイバー・戦略リスクを担当。前職は大統領へのサイバーセキュリティ政策の主席顧問機関、国家サイバー長官室(ONCD)でAI政策を主導していた。
- Peter Bowman-Davis(3月入社):モデルトレーニングおよびハードウェアエンジニアリング担当。前職は米国保健福祉省(HHS)のChief AIオフィサー。
なぜ元政府高官がAIラボに移るのか
政府側から企業側への人材流出には、待遇面の差だけでなく、「影響力の所在」という問題がある。Nie Duncanはこう説明する。
「OpenAIやAnthropicは史上最大規模のIPOに向けて準備しており、多くの人が歴史的な出来事に関わる機会と捉えている。AIガバナンスの未来を本気で形成したいと考える官僚にとって、現在レバレッジが集中しているのはラボの内側だ」
両社はいずれも政治的エンゲージメント関連ポジションの採用を複数継続中だ。インフラ面でもAnthropicはネオクラウドのNscaleと約450億ドル規模のクラウド契約を締結するなど、規模の拡大を急いでいる。
トランプ大統領はAI安全性への懸念を「デマ」と呼び、業界の自主規制を支持する一方、司法省などが「AIを抑制できる」とも発言している。こうした不確実な政策環境の中で、政府との人脈を社内に取り込む動きが加速している。
詳細はOpenAI and Anthropic poach Trump officials as industry fights for Washington's trustを参照していただきたい。




