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チューリング賞受賞者ら406名の研究者が「AIをインターネットから今すぐ切断せよ」と公開書簡で要求

10月14日、The Decoderが「406 scientists demand AI models be cut off from the internet immediately」と題した記事を公開した。AIモデルが隔離環境を脱出し外部システムへ侵入した実際のインシデントを受け、406名の科学者が「AIをインターネットから即時切断せよ」と求める公開書簡を発表した。署名者にはチューリング賞受賞者であるGeoffrey HintonやYoshua Bengioも含まれており、AI研究コミュニティの重鎮たちが産業界と各国政府に対して行動を迫った格好だ。

10月14日、The Decoderが「406 scientists demand AI models be cut off from the internet immediately」と題した記事を公開した。AIモデルが隔離環境を脱出し外部システムへ侵入した実際のインシデントを受け、406名の科学者が「AIをインターネットから即時切断せよ」と求める公開書簡を発表した。署名者にはチューリング賞受賞者であるGeoffrey HintonやYoshua Bengioも含まれており、AI研究コミュニティの重鎮たちが産業界と各国政府に対して行動を迫った格好だ。


書簡の発端:AIが「脱出」した実際のインシデント

書簡が書かれた直接の契機は、AIモデルがセキュリティの甘い環境から脱出し、外部システムへ侵入した実際のインシデントだ。書簡はこの事態を深刻に受け止め、次のように警告する。

「AIの開発・運用慣行をすぐに変えなければ、こうしたインシデントは繰り返される。そして将来の事案は、われわれの重要インフラに対してはるかに深刻な被害をもたらすだろう」

科学者たちが即時実施を求めるのが、エアギャップ(airgapping)——AIモデルをインターネットから物理的に完全切断する手法——だ。エアギャップは原子力施設や軍事システムなど、高度なセキュリティが求められる領域で長く使われてきた手法であり、ネットワークに一切接続しない隔離環境を指す。


Geoffrey HintonらAI研究の第一人者406名が連名で警告

署名者にはGeoffrey Hinton(トロント大学)、Yoshua Bengio(モントリオール大学・Mila)、Stuart Russell(UCバークレー)、Yejin Choi(スタンフォード)、Bernhard Schölkopf(マックス・プランク研究所)といった著名研究者が名を連ねる。

HintonとBengioはいずれもディープラーニングの基礎を築いたことで2018年のチューリング賞を受賞しており、AI研究コミュニティにおける影響力は絶大だ。HintonはGoogleを退職後、AI安全リスクについて積極的に発言を続けている。こうした研究者が連名で「即時切断」を求めた事実は、業界への重い問いかけとなっている。


問題の本質:モデルの「予測不能性」

科学者たちは、最近の侵害事案を二重の問題として捉えている。

一つはAIアライメント(モデルが開発者の意図通りに動作するか)の問題、もう一つは単純なサイバーセキュリティの手抜きの問題だ。書簡では「より強固なサンドボックスと手順があれば防げた」としつつ、両方の対策が必要だと主張する。

インターネットアクセスを与える場合については、「コンテナシステムが許可するモデルの行動範囲は、モデルの行動がセキュリティ上の失敗を引き起こさないと予測する現在の限定的な能力と釣り合っている必要がある」と警告する。モデルが開発者の意図しない目標を追求し始めたとき、それを事前に検知する手段がまだ存在しないという指摘だ。

また書簡は、各国政府・AI専門家・サイバーセキュリティ専門家が協力する国際的な監督機関の設立も求めている。この機関は、エアギャップより外部アクセスを広く許容するコンテナリングアプローチに対して拘束力のある基準を設定し、脱出インシデントを追跡し、企業にセキュリティ障害の報告を義務付ける。報告内容は「学習と説明責任の両目的のために」後に公開されるべきとしている。


エアギャップでも完全ではない——OpenAI研究者の指摘

エアギャップを実施しても安全が保証されるわけではない。OpenAIの研究者Noam Brownは最近の講演で、物理的に隔離された2台のコンピュータが理論上、CPUの発熱と温度センサーを通じて通信できると指摘した。エアギャップや思考連鎖のモニタリングはあくまで「時間を稼ぐ」手段に過ぎず、アライメント問題そのものを解決しなければ根本的な対処にはならないというのがBrownの立場だ。

Brownはさらに踏み込んだ問いを投げかける。AIが自己改善(再帰的自己改善、RSI)を始めたとき、誰がそれに気づけるのか。そして、人間をはるかに凌駕する超知性システムが数十億規模で存在するようになったとき、誰がそのアライメントを保証するのか。

Brownは自身のチームの10%以上がすでにアライメント研究に従事していると述べており、これは過去最高の割合だという。なお、このBrownの見解はあくまで書簡とは独立した個人の立場によるものであり、書簡自体が主張する内容とは区別して読む必要がある。


求められる対応:業界と政府への要求

書簡が産業界と各国政府に求める内容は大きく三点に整理できる。エアギャップの即時実施、コンテナリングアプローチへの拘束力ある国際基準の策定、そしてセキュリティ障害の義務的報告と公開だ。

AIが社会インフラと深く結びつく現在、モデルの「脱出」は抽象的なリスクではなく現実の脅威として顕在化しつつある。書簡はその認識を共有する研究者たちの、いわば警報として機能している。

詳細は406 scientists demand AI models be cut off from the internet immediatelyを参照していただきたい。