10月13日、Dataconomyが「Microsoft unveils Maia 300 AI chip」と題した記事を公開した。MicrosoftがAI推論向け自社チップ「Maia 300」を発表し、来年だけで100万枚以上の投入計画が報じられると、NvidiaとAMDの株価は即座に下落した。NvidiaにとってMicrosoftは売上の柱となるハイパースケーラーの一角であり、この動きはAI半導体市場の勢力図に影響しうる転換点として受け止められている。
NvidiaからMaiaへ——Microsoftが推論の主軸を自社チップに切り替える
MicrosoftはAI推論の主力をNvidiaやAMDのGPUから自社設計チップへ移行する方針を明確にした。2027年以降、CopilotをはじめとするAIサービスの推論処理をMaia 300で賄うとしており、展開規模はギガワット級を想定している。Reutersの報道によれば、来年だけで100万枚以上のMaia 300チップが投入される可能性がある。
コスト削減が主目的だ。Nvidiaチップの購入費用を内製チップで代替することで、AIサービスの運用コストを圧縮する狙いである。
推論専用設計——ターゲットは長文脈・会話AI・エージェント
Maia 300は学習(トレーニング)ではなく推論(インファレンス)専用の設計だ。具体的には以下の用途を対象としている。
- 長文脈推論(Long-context reasoning)
- 会話AI
- マルチステップタスクをこなすエージェント
汎用トレーニング向けGPUとは異なり、推論ワークロードに特化して電力・メモリ・スループットを最適化した設計思想が根底にある。Azure ハードウェアシステム担当プレジデントのRani Borkar氏はReutersに対し、「ワット・ドル・メモリのすべてにおいてシステム全体を最適化することで、より多くのインテリジェンスを提供する」と述べた。この設計方針こそが、後述する効率性の数値の背景にある。
Maia 300の仕様
Maia 300はサンノゼで開催されたOCP Global Summit(Open Compute Projectの年次カンファレンス)で発表された。主要スペックは以下の通りだ。
- HBM4メモリを8スタック搭載
- メモリ容量:288 GB
- メモリ帯域幅:18 TB/s
- 消費電力:950W(1チップあたり)
- コンピュートチップレットの製造プロセス:TSMCのN2P(2nmクラスの最先端プロセス)
1ラックあたり96チップを搭載し、ラック全体の消費電力は約167kW。トークンスループットは前世代のMaia 200ラック比で最大7倍としている。また、元記事によれば「主要なGPUベースシステム」と比較して1メガワットあたりのトークン数が40%多いと主張しているが、比較対象のシステムは元記事でも明示されていない。
参考として、NvidiaのGB300ラックは72GPU搭載・消費電力約142kWであり(元記事による)、Maia 300ラックは消費電力で約17%多い一方、チップ枚数は96枚と多い構成になっている。
現行のMaia 200はすでに稼働中——実績が裏付ける移行の現実味
前世代のMaia 200はすでにMicrosoftのデータセンターで本番稼働しており、Microsoft CopilotやOpenAIモデル、MicrosoftのMAIモデル、オープンソースモデルの推論処理を担っている。元記事によれば、GPU比で1ワットあたり最大1.7倍のトークン数を実現しているとしており、TeamsやCopilotのAI機能に活用されている。なお、この1.7倍という数値の比較対象となるGPUも元記事では明示されていない点は留意が必要だ。
Maia 200による実績は、Maia 300への移行計画が絵に描いた餅ではなく、すでに検証済みのアーキテクチャの延長線上にあることを示す重要な文脈である。年内にはGitHub CopilotとMicrosoft FoundryもMaia 200へ移行予定とされており、内製シリコンへの依存度は段階的に高まっている。
各社の自社チップ開発が加速する中でのNvidiaの立ち位置
Amazon(Trainium/Inferentia)、Google(TPU)、Meta、OpenAI、Anthropicも独自チップの開発を進めており、ハイパースケーラー全体で自社シリコン化の流れが強まっている。Nvidiaは四半期売上の半分以上をこうしたハイパースケーラーから得ているとYahoo Financeは報じており、今回の発表を受けてMicrosoft株が上昇した一方、NvidiaとAMDの株価は下落した。
ただし、アナリストは「大手クラウド企業がNvidiaチップの購入を完全にやめる可能性は低い」と指摘する。推論と学習ではワークロードの性質が大きく異なり、大規模モデルのトレーニングにはNvidiaのエコシステム(CUDAを含む)が依然として強固な優位性を持つ。Maia 300はあくまで推論専用であり、Nvidiaとの完全な決別ではなく役割分担の再定義と見るのが妥当だ。
Microsoftは**11月17日〜20日にサンフランシスコで開催されるIgniteカンファレンス**でさらなる詳細を公開する予定だ。
詳細はMicrosoft unveils Maia 300 AI chipを参照していただきたい。




