10月16日、CNBCが「TSMC chip capacity is 'fierce' battleground for AI customers, amid record quarter」と題した記事を公開した。過去最高益を更新し続けるTSMCの製造キャパシティをめぐり、NvidiaやApple、Broadcomといった大手テック企業が熾烈な争奪戦を繰り広げている実態を伝えている。
TSMCに1日10件の「枠をくれ」コール
AIブームが続く中、世界最先端の半導体受託製造を担うTSMCへの需要が供給を大幅に上回っている。TSMCの北米CEO、Sajiv Dalal氏(TSMCの北米事業全体を統括する責任者)は「ウェーハ枠(製造ラインに割り当てられた生産容量)に関する問い合わせが1日に少なくとも10件来る」とCNBCに語った。
Mizuho SecuritiesのアナリストJordan Klein氏はこう表現する。「競争は非常に熾烈だ。誰がより多くのレバレッジと供給を獲得できるか、というゲームだ」
TSMCは今週、6四半期連続で過去最高益を更新したと発表した。2026年第3四半期の純利益は3252億台湾ドル(約100億米ドル)で前年同期比54%増、売上高は前年同期比39%増を記録した。さらに2026年第4四半期の売上高見通しは前年同期比58%増とされており、需要は一向に鈍化しない。
争奪戦の構図
TSMCが製造するのは、AIワークロードに不可欠なNvidiaやAMD、BroadcomのGPU・CPUだ。そこに加わっているのが、自社製AIアクセラレータ(カスタムチップ) を内製化しているApple、Google、Amazon、Microsoft、Meta、OpenAIといった企業群である。
TSMCは2025年時点で534社の顧客を抱えているが、上位10社が純売上高の**78%**を占め、上位2社だけで19%と17%をそれぞれ占める。スタートアップが争うのは、残りわずかな枠ということになる。
AI半導体スタートアップD-MatrixのCEO、Sid Sheth氏は「TSMCは選択的だが、有望な新参者を支援するインセンティブもある」と述べる。「NvidiaやBroadcomが若い会社だったころ、TSMCは彼らを強くサポートした。今や最大顧客だ。同じことをもう一度やりたいと思っている」
キャパシティ獲得のカギを握る人物として、Sheth氏が名を挙げたのが、TSMCでビジネス開発・顧客戦略を担うシニアバイスプレジデント、Kevin Zhang氏だ。「今おそらく地球上で最も人気のある人物だ」とSheth氏は話す。D-Matrixは、1992年からTSMCに通い続けているベテランをわざわざ製造担当VPとして2024年に採用したほどで、長期的な関係構築こそがTSMCへのアクセスに直結していることがうかがえる。
スケールの限界とリスク
現在TSMCは年間1200万インチ相当ウェーハ超の製造能力を持つが、それでも足りない。Klein氏は「今後12〜18か月で需要増が続けば、TSMCのキャパシティ制約が業界全体の大規模インフラ投資や、AI企業の積極的な収益成長目標を脅かしうる」と警告する。米国のハイパースケーラー(超大規模クラウド事業者。AWS・Azure・Google Cloudなど)は今年だけで7000億ドル超の設備投資を計画しており、2027年にはさらに増加する見通しだ。
TSMCが取り組む拡張策として、台湾・日本・アリゾナでの新工場建設がある。アリゾナでは当初6棟の計画に対し、2026年7月に1000億ドル追加を発表し、総コミットメント額は2650億ドルに達した。テキサスへの進出も検討中とされる。ただし、最先端プロセス(EUV:極端紫外線リソグラフィを用いた微細加工技術)に対応した設備が本格稼働するには数年を要する。
第2の選択肢:SamsungとIntel
需要に対してTSMCだけでは対応しきれない状況は、SamsungやIntelにとって追い風でもある。TechInsightsのアナリスト、Dan Hutcheson氏は「顧客はTSMCに価格交渉の圧力をかけるためにも、第2のソースを求めている」と指摘する。
その有力候補がIntelだ。Intelのファウンドリー事業はこれまで遅延や問題を抱えてきたが、Hutcheson氏は「今や大手チップメーカーはIntelでのテストを始めている」と述べる。
業界団体SEMIによると、2029年までに世界で102棟の新工場が稼働予定で、うち15棟が米国、78棟がアジアだ。中国は2030年までにキャパシティを約3倍に増やすと予測されており、米国の設備投資も2029年までに倍増する見込みだ。
Klein氏は「TSMCは地球上で最も戦略的に優位なポジションにある企業の一つだ」と総括する。AIインフラの根幹を一手に担う存在として、TSMCへの集中は続きそうだ。
詳細はTSMC chip capacity is 'fierce' battleground for AI customers, amid record quarterを参照していただきたい。




