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OpenAIの「100万ドル懸賞問題の証明」に数学者が疑義 — 1万エージェントを投入したが、エージェント群の寄与を誰も把握していない

10月17日、The Decoderが「Mathematicians say OpenAI doesn't understand its own Navier-Stokes proof」と題した記事を公開した。OpenAIが発表したナビエ・ストークス方程式の証明に対し、複数の数学者グループが「OpenAI自身がその証明を理解していない」と疑義を呈している。さらに証明の生成に投入した約1万のエージェント群が実際の結果にどう貢献したのか、開発者自身も把握できていないという構造的な問題も明らかになっている。

10月17日、The Decoderが「Mathematicians say OpenAI doesn't understand its own Navier-Stokes proof」と題した記事を公開した。OpenAIが発表したナビエ・ストークス方程式の証明に対し、複数の数学者グループが「OpenAI自身がその証明を理解していない」と疑義を呈している。さらに証明の生成に投入した約1万のエージェント群が実際の結果にどう貢献したのか、開発者自身も把握できていないという構造的な問題も明らかになっている。


OpenAIのナビエ・ストークス証明、「別アプローチだ」と数学者が指摘

9月初旬、OpenAIは166ページに及ぶナビエ・ストークス問題の潜在的な解法を発表した。ナビエ・ストークス方程式は流体の運動を記述する偏微分方程式で、その解の存在と滑らかさを証明することはクレイ数学研究所(CMI)が設定するミレニアム懸賞問題の一つだ。解決すれば100万ドルの賞金が授与される。

OpenAIは、この証明がスペインの数学者ディエゴ・コルドバとルイス・マルティネス=ゾロアのアプローチに従ったものだと説明していた。しかし、Scientific Americanの報道によれば、複数の専門家グループがこれに異議を唱えている。EPFLの数学者ゴンサロ・カオ=ラボラは「細部を見ると、別のアプローチだ。類似点は表面的なものに過ぎない」と述べた。

この証明は**Lean**で記述されている。Leanは「定理証明支援系(proof assistant)」とも呼ばれる形式検証用言語で、すべての論理ステップを機械的にチェックできる一方、そのままでは人間が読解しやすい形式ではない。数式の正しさをコンピュータが検証できるという強みがある反面、証明の意図や構造を人間が直感的に追いにくいという特性を持つ。CMIは公開以来、この証明のレビューを続けている。


「無断利用」告発とOpenAIの否定、そして研究者の懸念

発表をめぐる摩擦は内容面だけにとどまらない。発表前、NYU数学者のトリスタン・バックマスターが「OpenAIが自分とAnthropicのレバント・アルペーゲの研究成果を無断で利用した」と告発した。OpenAIはこれを否定したが、バックマスターは自身の研究との類似点を具体的に指摘している。プリンストン高等研究所のカミッロ・デ・レリスはこの論争に対し、「言語モデルはブラックボックスである以上、AIがどの知識をどのように組み合わせたかを外部から確認する手段がなく、決定的な答えを出すことはほぼ不可能だ」と指摘する。研究の帰属(アトリビューション)問題は、AI生成の証明が今後増えるにつれてより深刻になる可能性がある。


1万エージェントを投入したが、その寄与は誰も把握していない

証明の内容とは別に、生成プロセスそのものにも重大な疑問が残る。OpenAIは証明の生成に約1万のモデルインスタンスを約88時間、1,300億トークンにわたって稼働させた。しかし、OpenAI研究者のノアム・ブラウン自身が認めるように、その大規模なエージェント群が実際の結果にどう貢献したのか、誰も把握していない。

この規模での動作は体系的に研究されていない。数千エージェントで比較対照実験を行うにはコストがかかりすぎるためだ。単一エージェントが同じ問題を解くのにどれだけかかるかも検証されておらず、1,000エージェントに対して1万エージェントが具体的にどれだけの優位性をもたらすかも不明なままだ。

ブラウンは、マルチエージェント構成が成功に寄与した割合を10%未満と見積もる。「これらのシステムは新しくて派手なので、過大評価されがちだ。本当に重要なのはベースモデルそのものだ」と彼は述べている。長時間タスクを継続し、並列実行できるベースモデルの能力こそが核心だという見解だ。


数学界との摩擦はさらに拡大

10月初旬、OpenAIはさらに約400件のAI生成数学証明をGitHubに一括投稿した。数学コミュニティが処理しきれないペースでの公開に、多くの数学者が反発し、「自分たちの分野を安売りしている」という怒りの声が広がった。

OpenAIの一連の行動は、AI数学能力への信頼性を問う出来事として数学界に大きな波紋を広げている。証明の正当性、研究帰属の問題、そして巨大な計算資源を投入したシステムの振る舞いを開発者自身が定量的に説明できないという構造的な課題が、同時に浮き彫りになった形だ。

詳細はMathematicians say OpenAI doesn't understand its own Navier-Stokes proofを参照していただきたい。