10月16日、MacRumorsが「New App Store Rules Target AI Deepfakes and Nudify Apps」と題した記事を公開した。Appleが今回のApp Storeガイドライン改訂で最も力を入れたのが、審査時に目的を偽り、承認後にヌード生成機能を解放するという「おとり商法」的な手口の明示的な禁止だ。AIによるディープフェイク・ヌード画像(NCII)の拡散が社会問題化するなか、Appleはルールの"抜け穴"を塞ぐ形でガイドラインを大幅に強化した。
ガイドライン改訂の背景
Appleは従来からApp Storeでの性的露骨コンテンツを禁止していたが、今回の改訂ではその対象をAIが生成した非合意の親密な画像(NCII: Nonconsensual Intimate Imagery)にまで明示的に拡大した。NCIIとは、本人の同意なく性的な画像・映像を作成・拡散する行為を指し、日本でも「リベンジポルノ」として社会問題化しているが、AI技術の普及によって実在の人物の顔を合成したフェイク画像が容易に生成できるようになり、被害の深刻化が世界的に問題視されている。
改訂のきっかけの一つとして挙げられているのが、xAIのGrokチャットボットをめぐる問題だ。ユーザーがGrokを使ってヌードや性的なディープフェイク画像を生成できると報告が相次ぎ、Appleは2026年4月にxAIへ対応しなければApp Storeから削除すると通告していた。xAI側がセーフガードを実装した結果、Appleはアップデート版を承認した経緯がある。今回のガイドライン改訂は、この問題への対処を規則として明文化したものと見ることができる。
なお、EUではデジタル市場法(DMA: Digital Markets Act)によりAppleのようなゲートキーパー企業に対してサードパーティのアプリ配布を認めることが義務付けられており、2024年以降Appleはオルタナティブマーケットプレイス(Apple公式のApp Store以外の第三者配布経路)をEU域内で解禁している。今回の改訂はこの新たな配布経路も対象に含めており、その意味でもDMAへの対応という側面がある。
改訂された主なルール
ルール1.2の更新:AIコンテンツ生成アプリへの義務
改訂されたガイドライン1.2では、AIコンテンツ生成アプリの開発者に対し、ディープフェイクの積極的な防止と削除を義務付けた。違反コンテンツを放置した場合、アプリがApp Storeから削除される可能性がある。
ガイドライン2.5.19の新設:「バイト・アンド・スイッチ」への対処
今回の改訂で最も注目すべき追加項目がガイドライン2.5.19だ。審査時に存在しなかった機能を後から追加した場合、App Storeおよびデベロッパープログラムからの排除リスクがあると明記した。
Appleはこのルールを「ヌーディファイ(nudify)」アプリ——実在する個人の性的画像を無断で生成するアプリ——と直接結び付けており、審査時に本来の目的を隠し、承認後に問題機能を解放する手口を明示的に禁止した。Appleのガイドラインにはこう記されている:
Apps containing hidden or undocumented features are also prohibited on the App Store, including apps that misrepresent their purpose during review and only reveal harmful capabilities — such as "nudification" — after approval, a tactic commonly known as bait-and-switch.
(審査時に目的を偽り、承認後に「ヌーディファイ」のような有害機能を有効化する、いわゆる「おとり商法」的な手口を含む、隠し機能・未文書化機能を含むアプリはApp Storeで禁止される)
この「バイト・アンド・スイッチ(bait-and-switch)」と呼ばれる手口は、審査をパスするために無害なアプリとして申請し、承認後のアップデートや設定変更によって問題機能を有効化するというものだ。従来のガイドラインでも隠し機能の禁止は謳われていたが、AI生成ヌードという具体的な用途を明記したのは今回が初めてであり、規制の意図を明確化した点で意義が大きい。
セクション5の更新:代替配布への適用拡大
Appleはセクション5も更新し、人身売買や児童搾取を助長するアプリへの禁止をオルタナティブマーケットプレイスにも適用することを明確化した。前述のとおり、EUのDMA対応でAppleは第三者マーケットプレイスを認め始めているが、公式App Store外の配布経路が有害アプリの抜け穴になることを防ぐ狙いがある。日本ではDMAの適用外であるため現時点でオルタナティブマーケットプレイスは解禁されていないが、今後の規制動向次第では同様の議論が国内でも起こり得る点として注目しておく価値がある。
開発者への影響
Appleのデベロッパーニュースには次の一文がある。
"We do not hesitate to remove apps, and terminate the developers behind them, when they violate these guidelines."
(ガイドラインに違反した場合、アプリの削除だけでなく、その開発者のアカウント自体を終了させることも躊躇しない)
アカウント停止はApp Storeでのビジネス継続に直接影響するため、AIコンテンツ生成ツールを提供する開発者にとっては無視できないプレッシャーとなる。特に2.5.19の新設によって、審査通過後の機能追加についても従来より厳格な自己審査が求められるようになった。「承認後に追加すれば問題ない」という抜け穴はもはや通用しない。
改訂後の完全なガイドラインはApp Store Review Guidelines(Apple公式)で確認できる。
詳細はNew App Store Rules Target AI Deepfakes and Nudify Appsを参照していただきたい。




