10月16日、Los Angeles Timesが「How Culver City is quietly emerging as a new mecca for AI filmmaking」と題した記事を公開した。ハリウッドの伝統的スタジオが集まるロサンゼルス郡のカルバーシティで、AI映像制作スタートアップの集積が急速に進んでいる。その実態を象徴するのが、10分1エピソードを約1万ドル・10日で制作・配信するスタートアップTrueShortだ。「次のNetflixはAIから生まれる」という確信のもと、資金と人材がカルバーシティへ向かっている。
1エピソード1万ドル、10日で完成——TrueShortの衝撃
最も具体的な事例がTrueShortだ。先月カルバーシティに移転し、Amazon MGM Studiosの近くに約5,000平方フィートのオフィスを構えた。調達額は1,700万ドル、従業員は約45名で、そのうち75%は映像編集者、サウンドデザイナー、作曲家といったクリエイティブ職だ。
同社のストリーミングアプリでは、AIが全工程を担うショートフォームのトゥルークライム(実録犯罪)番組を配信している。10分1エピソードあたりの制作コストは約1万ドル、企画から配信まで約10日という水準だ。
「次のNetflixや次のDisneyはAIから生まれる」とTrueShortの共同創業者Nate Tepperは話す。「既存の大手スタジオは反発を恐れて動けない。だからこそスタートアップでなければならない」
「次のNetflixはAIから生まれる」——カルバーシティに何が起きているか
Sony Pictures EntertainmentやAmazon MGM Studiosが本拠を置くカルバーシティに、AI映像制作スタートアップが続々と移転・開設している。
ベンチャーキャピタルAndreessen Horowitzが主催する「LA Tech Week」の一環として、10月、カルバーシティの広場「Culver Steps」でAIスタジオ向け就職フェアが開催された。生成AI動画のデモを披露する企業が並び、仕事を失ったクリエイターたちに採用を呼びかけた。
AI映像制作に特化したスタートアップとして、Promise、TrueShort、Native Foreign、PhantomXなどがすでに拠点を構えている。さらに、時価総額40億ドルのパロアルト拠点スタートアップLuma AIは昨年、同市に7,000平方フィート(約650㎡)の施設「Dream Lab」を開設。スタッフ13名を抱える。
「カルバーシティはAIと映像制作の未来だ」——Luma AIのCOO、Caroline Ingebornはそう言い切る。
既存スタジオとの"共存"戦略
Google出資のPromiseは、人間の俳優とAI技術者が協働する「ハイブリッド制作」を掲げる。背景やVFX、合成人間(synthetic humans)の生成にAIを活用しつつ、俳優の演技はLA各地のサウンドステージで撮影する手法だ。2024年末にはAI映像制作を教えるオンラインスクールCurious Refugeを買収し、6月にヴェニスからカルバーシティ近郊へ移転した。
カルバーシティ拠点のクリエイティブスタジオNative ForeignはAIを使ったCM制作を手がけ、VirginやToysRUsのブランド広告を制作している。OpenAIのソフトウェアを使ってAIアニメーション短編「Critterz」を制作した実績を持つが、その後のプロジェクト計画はOpenAIがビデオ生成AIモデルを撤回したとされることで頓挫したとされている。
「私たちは大手のような機会を持っていない。だからこそ、これらのツールで分不相応な成果を出せる」——共同創業者Nik Kleverovはそう話す。
「CGと同じ道を歩む」——ベテランの見方
AIへの懸念は根強い。俳優組合SAG-AFTRAは今年締結した契約で、完全合成キャラクターへの特別な保護条項を盛り込んだ。AIがクリエイターの仕事を奪うという批判は、ハリウッドの組合を中心に広がっている。
ただし、VFX業界で80本以上の映画に関わったベテランのAlex Cancadoは、現在Amazon MGM StudiosのAIスタジオ部門に在籍しており、別の見方を示す。「CGがディレクターやプロデューサーに受け入れられるまでも、同じような摩擦があった」と彼は言う。
AI活用の機運を生んだ起点として知られるのが、2023年にカルバーシティで始まったカンファレンス「AI on the Lot」だ。現在は数千人規模のイベントに成長し、総額20億ドルの資金調達を持つAIメディア企業がカルバーシティに集結していると試算している。創設者のMike Gioiaは市議会の会議にも出席し、「カルバークラスター」(AI関連企業・人材の地域集積)の形成を推進中だ。「カルバーシティをAIメディアの首都にしたい」と彼は明言する。
詳細はHow Culver City is quietly emerging as a new mecca for AI filmmakingを参照していただきたい。




